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プロローグ 出会ったのは……。

新作です。






「ええい、こんなこともできないのか!?」

「すみません、すみませんっ!!」



 ――ダンジョンの中階層。

 ボクはパーティーリーダーに叱責されていた。

 というのも、弱った魔物にトドメを刺すことができずに狼狽えていると、その隙に回復されてしまったのだ。



「うぅ、すみません。可哀想になっちゃって……」

「根本的に、冒険者向いてねぇよ! もうやめちまえ!! ――追放だ!!」

「え、そんな……!!」



 必死に頭を下げるが、告げられたのは無慈悲なもの。

 その日、ボクはたった一人の冒険者――リドル・ディーアスになった。







「どうしよう、生活費が限界だよ……」



 そんなわけで、ボクは一人夜の町を歩いていた。

 人気はない。ろくに明かりもなく、閑散とした町なのだ。魔族の住まう領域から最も離れている辺境の土地故に、物流などもなく、真の意味での田舎といえる。


 それがボクの育った場所――スタリア。



「そんな町でも、働き口にありつけないなんて。ボクは本当に、なにをやっても駄目だ。孤児院は潰れるし、皿洗いもできない」



 そして、最後の希望であった冒険者稼業もダメだった。

 何度やっても、弱った魔物が可哀想に見えてきてしまってトドメがさせない。挙句の果てに、言い渡されたのはパーティーからの追放だった。


 ……いや、うん。

 当然といえば、当然なんだけど。



「うーん、でもとりあえず――」



 一度、がっくりと肩を落としてから。

 ボクはすぐに気持ちを切り替えた。そして、バッグを探って――。



「落ち込んでいても、仕方ないよね! ご飯食べよっと!!」



 中から、昼食用のパンの残りを取り出した。

 空腹のままでは、良い案も浮かんでこないだろう。元来楽観的な性格というのも、こういう時に限っては役に立った。

 そんなわけで、ボクは手頃な場所に腰掛けて大口を開けた。



「いただきま――ん?」



 その時だった。



「いま、なにか動いた気がするんだけど?」



 建物と建物の間。

 そこに、生き物のものと思しき影が動いたのが見えたのは。

 ボクはゆっくりと、興味が惹かれるままにそちらへ足を運んだ。ゆっくりと覗き込み、目を凝らす。すると、そこにいたのは――。



「え、魔族!?」



 傷だらけの、魔族だった。

 雲の切れ間から零れた月明かりが、その美しい顔を照らし出す。

 黒の長い髪に血のように真っ赤な瞳、そして普通とは思えないほど端正な目鼻顔立ち。煤けた頬と黒の衣服、羽織っている外套はところどころが焼け焦げていた。


 息も絶え絶え。

 片腕を押さえつけている姿から、ケガをしているのが分かった。



「…………貴様は、何者だ」

「え……? ボクは――」



 その魔族の青年は、掠れた声でそう訊いてきた。

 少し考える。そうして出てきた言葉は――。



「そんなことよりも、貴方のケガの方が問題です! ほら、とりあえず水飲めますか!? あと、こっちに予備の回復薬があります!!」

「な、に……?」



 ボクが必死にバッグをまさぐると、彼は驚いたように目を丸くした。


 呆気にとられたのだろうか。

 その青年魔族は、されるがままに治療を受けていた。



「ボクの名前はリドルです、貴方は?」

「…………ギルガド、だ」

「分かりました、ギルガドさん。とりあえず――」



 そして、一通りを終えて。

 ボクは彼にこう提案するのだった。



「ボクの家、行きましょう!」――と。




 これがボクと、ギルガドさんの出会いだった。



 


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― 新着の感想 ―
[気になる点] タイトルには「世界最強の魔王」と有りますが、その魔王をここまでボコボコにしたのは結局誰だったのでしょう?
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