今日も憂鬱、明日も憂鬱
このお話に登場するのは藍紅吹雪丸のキャラクターのみですが、仮想県立二次元高等学校企画の二次創作です。問題ありましたら削除致します。本編▷https://ncode.syosetu.com/n2275gh/ 企画公式Twitterアカウント▷@karitunizikou
「今度から学校行こうかと思って!」
「…………はぁ」
藍紅吹雪丸にそう明かされた彼女の従者、読書中だった氷坂ヒョウは、またいつもの『思い立ったがやらなきゃ気が済まない』系の行動、通称吹雪丸の持病かと納得して気の抜けた返事を返した。読みかけの小説の一ページをめくる。
「いきなりですね」
「人生早いからね、やりたいことやった方がいいからね!!」
あなた不死でしょ、と言いたくなったがドラゴンである自分も不死に近いのでその言葉はぐっと飲み込んだ。
「こっちの話ですか、あっちの話ですか?」
こっち、と言うのはコスモステイルの話、あっち、と言うのは吹雪丸の住む本来の世界のことである。難しい話なので割愛。ページをめくる。
「もちろんこっちの話だよ! じゃなかったら多分言いだしてない!」
すると吹雪丸が机の上のノートパソコンを持ち上げ、ヒョウの方に見せた。画面を向けられたことに気づいたヒョウが小説からパソコンの画面に視線を移す。
「ここ〜!」
ノートパソコンに表示された画面には『太平88年度 仮想県立二次元高等学校新入生募集』と一番上に大きく書かれていて、その下には詳しい要項だとかが示されている。
「かそうけんりつ……珍しい名前の高校ですね。そもそも入学とか、急にどうしたんですか? 自分の学力に自信ないことに気づいたとかですか?」
ノートパソコンが吹雪丸の机の上の定位置に戻されたのを見て、ヒョウも読んでいた小説に目線を戻した。
「うるせー、私勉学に関しては中の上だと思いこんでますぅ!! ……じゃなくて、この学校『創造科』ってのがあるんだけど、これが面白そーなんだよね〜」
「へぇー……送り迎えはしませんよ」
タクシー代わりに迎えを要求されるのは毎度毎度面倒なのでそう釘を刺すと、「んや多分いらないかな」と言われ妙に肩透かしを食らった気分になった。謎の悔しさに唇を嚙む。ページをめくる。
「まぁそもそも創造科しか受け付けてないっぽいんだけどね〜……そーだ、ヒョウくんも来る? 一緒に青春学園生活、エンジョイする?」
「僕大卒なんで結構です」
「ちょっとまって初めて知ったんだけど何その情報!? 何学んだのお前!?」
ページをめくる。
「あはは」
「あははってなんだオイ!!」
ページをめくる。
「……そういえばですけど、こんなのどこで見つけたんですか? 普通に学校行こうと思ってたんですか?」
依然として小説から目線を外さないまま、吹雪丸に質問をする。
蛇足にはなるが、作業しながらだとかで相手の方を見ずに話をすることはこの二人ではよくある事である。現に話し相手たる吹雪丸も、既にパソコンのキーボードを小気味の良い音を立てながら叩いている。
「電子世界潜行してたら見つけた」
「ネサフで見つかるんですかこれ……?」
「まぁクロンちゃんが繋いでくれてる他の世界の情報見られるところから見つけた広告だったし多分ヤバいね」
「ヤバいところに突っ込もうとする癖やめた方がいいと思いますよ」
まぁいつものことだし、どうせ何事もなくテキトーに楽しんでくるんだろう、と半ば諦めのようなことを思う。一度本から目を離し、座っている一人用ソファの中から、近くのミニテーブルに置いておいたアイスコーヒーに手を伸ばした。
ちなみに吹雪丸の持病に関しては、ヒョウの中で『いかに自分を含めた周りに被害を出さないようにしてわがままを解決するか』が問題になっており、『止めることは無駄』と言うのがインプットされている。
「ってか発見したとこ、ネサフっちゃネサフなんだけど、不審なのがこれよくある感じのバナー広告で出てきたとこなんだよね……動画サイトで私立の高校の広告とかならまだ見たことある気がするけど、普通こーりつであろう高校がこんな広告出すと思う……?」
「出さないと思いますよ」
淡白な返事をしながら、またページをめくる。
「逆になんかさ…………運命的なものを感じない?」
「感じませんし主それ絶対詐欺ですよ」
「詐欺じゃない!! ……と思うんだけどどうだろ」
「否定できる程度に調べてから言いだしてくれません? 入学に関して」
「でももう二週間前に出願書類送って、一週間前に受理されて、明日入学式だよ」
「うっそでしょ……」
唐突なもうやったよ宣言にさすがに頭痛が催され、本のページに栞紐を挟んで閉じると、頭を押さえてソファの背もたれに身体を投げ出した。
「あははは、ホントで〜す」
吹雪丸もパソコンから目を背けてヒョウの方に向き直ると、言葉を続けた。
「一応しっかり調べて、多分危険性はない──と思うんだよね。案の定コスモステイルの外だったから、井戸で簡単に行けるように調整したよ」
「この前朝イチで井戸になんかやってたアレ、定期点検じゃなかったんですね……」
「定期点検もやった!!
まぁ学校とか、たまにはこう言うのもいいかと思ってね! 人生長いし!!」
「はぁ…………」
そりゃああなた不死ですからね、と言いたくなったがドラゴンである自分も不死に近いのでその言葉はぐっと飲み込んだ。
「そんなわけで明日からしばらく朝井戸に飛び込んで夕方に帰ってくる生活だよ」
「主がいない時間が多い……気が楽になってきましたね」
「言うようになったなお前も!! まぁ私がいない自分時間楽しんどけや!!」
「そうします」
そう言いながらヒョウがもう一度小説を開いた。
「そんでここまでの話なんでしたかって言うと、お金使ったよ報告のためです。私のお財布からちょいと入学用品の雑費を……」
吹雪丸のその言いかけた言葉を聞いたヒョウが、勢いよく小説を閉じた。
「ま〜た無駄遣いしたんですね!? 何ッ回言ったらわかるんですかいい加減そろそろ節約を学習してくれませんか学校でそれについて学んできてください!! あなたの財布がこの天紋台の全体資金と大きく繋がってることを自覚して節約をってあれほど言ったじゃないですか!! 主は金遣い荒いから気をつけろって何度言ったら……!!」
そのヒョウの叱責も、背を向けてパソコンの方を向き、ヘッドホンをつけて音楽を聴きだした吹雪丸には半分届いていないことだろう。
藍紅吹雪丸が仮想県立二次元高等学校創造科に入学するまで、あと1日。
解放されたァ!!!
ツイッター追ってくださっている皆様はわかると思います、色々頑張った作者の方の藍紅です。長かった!!
最近二次高企画の波が上がったり下がったりしちゃってますが、今波が上がってるタイミングなので私も小説あげます。書きたかったんですよこのエピソード0!!
ちなみに宣伝加えときます、2020年8月、ツイッターの方でUOFP二次高と言う名前の企画やろうかなと思ってますのでよければ!! ツイッターに詳細あります故ね!!
それではあとがき終わりです。閲覧してくださった方ありがとうございました!!