エイプリルフール ~四月一日は嘘にご用心~
私の名前はふじわらしのぶ。
何よりも真実を愛する正義の使徒。
今日は君たちに嘘・偽りの醜さ、真実・正義・愛の素晴らしさを教えて差し上げよう。
世の胡乱な人間たちは常に対価を求める。
罪には罰を。
労力には見合った報奨を。
とにかく自分を認められたいという欲求だけが独り歩きしている状態なのだ。
悲しい。
これではあまりに悲しすぎるではないか。
仮に見返りが支払われたとして、他者に認められたとして一体何なるというのか。
他人の拙い審美眼で貴方の本当の美しさなどわかろうはずもない。
貴方の努力はそんな軽々しいものか。
貴方の流した汗や涙は、素性の知れない誰かの書いた賞状で果たして癒されるものなのか?
違う。
これだけは確実に言えるだろう。
貴方の努力は貴方にしかわからない。
仮に誰かが傷ついた貴方の側にいたとしても慰め寄り添うことは出来ても、貴方の痛みを代わってあげることなど出来はしないのだ。
貴方のものは貴方のもの。
彼のもの、彼女のものはやはり別人のものでしかない。
この悲しい事実だけが支配する悲しい世界で私たちは生きている。
だけど私たちは知っている。
全ての苦しみを、痛みを、愛しさを理解してくれるたった一人の尊い存在を。
目を背けてはいけない。
真実は常に彼と共にある。
さあ、勇気を出して言って御覧なさい。
「貴方の流した涙は貴方のもの。彼の怒りはやはり彼のもの。彼女の苦しみは彼女のもの。嫌なことは全部私たちのもの。それでは世界の幸福は一体誰のもの?」
「それはふじわらしのぶ様のものです!!これからは嫌なことは全部私たち愚民が引き受けますから、どうか安心して暮らしてください!!」
「よし。解散!!」
こうして人々はしのぶの為に働き、永遠の奴隷として忠誠を誓うことを約束するのでした。
「わかったか、お前ら。キングは俺様だ!!」