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第2話「紅き熾剣と藍色の式」

「綺麗に咲かせてよ、貴方の真紅の薔薇を♪」



……歌が聴こえる。

私はどれだけ眠っていたのだろうか。

体の痛みはまだ引かない。

治癒のスピードまで落ちているのか……

いや、人間並みになったと言った方が良いか。


私はゆっくりと目を開け、軽く体を起こした。

すると目の前に、背を向けて足を開き、リズムに乗りながら歌っている紅い少女が居た。その少女の背には、翼と言い切って良いのか分からないが、七色に輝く結晶のような物が付いた翼があった。


妹紅「お前……誰だ?」


私の声に反応し、紅い少女は振り向いた。

「あ、起きたのね!」


私は体をしっかり起こし、胡座(あぐら)をかいた。


妹紅「……お前がここに運んで来てくれたのか?」

「うん、そうよ。」

妹紅「それはどうも。あ、私は藤原妹紅だ。お前は?」

「フランドール・スカーレット、吸血鬼よ。フランでいいわ。」

フランは笑顔で名乗った。


スカーレット……吸血鬼……

なるほど、あの館のお嬢さんの妹かな?


フランドール「そうそう、妹紅。貴方って能力無くしちゃった?」

妹紅「あ?……ああ。不老不死だったんだが、今はただの死ぬ人間だよ。」


急に聞いて来たから少し驚いた。

フランも能力を無くしているのか……

例外と言えば諏訪子ぐらいだが、その諏訪子も時間差で能力が無くなった。

一体どういう原理なのか……

まあ、それを言い出したらキリが無いが。


フランドール「不老不死の人間?へぇー、じゃあ貴方はどのくらい生きてるの?」

妹紅「大体千年ぐらいだ。細かい歳は聞くなよ、覚えてないからな。」

フランドール「千年……人間なのに私よりも生きているんだ。」

妹紅「そうなのか?」

フランドール「私なんてまだ500年ぐらいよ。」

妹紅「それでも私の半分は生きているのか。」

フランドール「貴方みたいに死なない訳じゃないけどね。あ、でも今は死ぬんだっけ?それなら……」


……待て。

フランの目から光が消えた。

何をするつもりだ……!?


私は身構えた。

すると、フランは突然笑い出し、


フランドール「フフッ、冗談冗談。能力があれば貴方は今頃木っ端微塵だろうけど……。」

妹紅「なっ!?」

フランドール「まあ、しないけどね。でもしようと思えば出来るの。そういう能力だからねー。」

妹紅「……。」


私は内心ホッとしていた。

容易く木っ端微塵に出来る能力……

もし能力を持っていたなら、相当に危険な存在だったろう。

でもって、フランは吸血鬼。身体能力もかなり高いはずだ。

敵だったら、と思うと寒気がした。


そうして私が考え込んでいると、

フランドール「妹紅?どうしたの?」

と、立ち上がったフランが言った。


妹紅「あ、ああ。何でもない。」

フランドール「ふぅん。ねぇ、そろそろ移動しない?」

妹紅「そうだな。ずっとここに居ても仕方ないしな。」


私は立ち上がり、フランと一緒に目の前に続いていた道へ歩いていった。



……しかし、どこも氷だらけだな。

未だに寒さで体が震えている。

フランは寒くないのか?

腕どころか脚も出てるのに、寒さなど感じぬと言わんばかりに平気な顔で歩いている。


妹紅「寒くないのか?」

フランドール「寒くない……わけじゃないけど、まあ大丈夫よ。……へっくしゅん!」

フランは盛大にくしゃみをする。

妹紅「大丈夫じゃ無いな。……へっくし!」

私も思わずくしゃみをしてしまった。

フランドール「アハハッ!貴方もじゃないの!」

妹紅「私は元より大丈夫なんて言ってないしな!人間だし炎使えないしで普通に寒いんだ!」

私は体を震わせながら言った。

フランドール「炎?貴方炎も使えたの?」

妹紅「正確には今も使えるが、使ったら死ぬってとこだな。」

フランドール「ふぅん。あくまで失ったのは不老不死だけって事ね。私も破壊能力だけが無くなったみたいだし。」


破壊能力……

それは確かに木っ端微塵に出来もするな。


しかし、何故奴は全ての特殊能力じゃなくて、1つの能力だけを消し去ったんだろう。

私が失ったのは不老不死。

フランが失ったのは破壊能力。

何か共通点が……?


……もしかして。

妹紅「なあフラン、お前のその破壊能力って申告したものか?」

フランドール「へ?あ、えぇそうよ。」


幻想郷では、能力は申告制だ。

私は不老不死の能力を申告した。

となると……


妹紅「なるほど……つまり、奴は私達が申告した能力だけを綺麗に失わせていると。器用だな。」


しかし、わざわざそんな事をする必要があるのか?

奪えるのなら全て奪ってしまえばいい。

能力がそこまで行き届かないのか、せめてもの慈悲なのか、それとも……



フランドール「……全然何も無いわね。」

かれこれ30分は歩いただろうか、道はひたすらに続き、広場に出る事も無ければ分かれもしない。さっき遠くで何か音がした気がするが、気のせいかもしれない。

妹紅「ああ……さっきから何も景色が変わらなくて退屈だ。」

フランドール「そうねえ。……あのさ、こうなったらもう壊しちゃう?」

妹紅「え?」

私は一瞬身構えた。

フランドール「あ、ああいや、貴方をじゃなくて、壁をね。」

妹紅「お、おう。そりゃ良かった。」

私は安堵した。

突然気が変わったのかと思って冷や汗をかいてしまった。


フランドール「まあ適当にこの辺でいいかな?」

妹紅「まあどこでも良いよ。なんなら手当たり次第に壊していくのも良いな。」

フランドール「とりあえずここを壊すわよ。離れててね。」

妹紅「分かった。」

私はフランから大体5mぐらい離れた。


しかし、壊すったってどうやっ……


フランドール「出番よ。」

私が心の中で疑問を言い終わる前に、フランは何やら剣とも杖とも言い難い得物を手に出現させた。


フランドール「レーヴァテインッ!」

ドゴォォン!

妹紅「うわぁっ!?」


フランは得物に紅いエネルギーを迸らせると、壁を叩き割るように斬り、大きな衝撃と共に壁に大きな穴が空いた。

私は衝撃波に煽られて軽く飛ばされてしまった。

5mぐらいじゃ近過ぎたか。


フランドール「大丈夫ー!?」

妹紅「あ、ああ、大丈夫だ。しっかし凄いなぁ。随分と大きな穴だ。」

フランドール「ちょっとやり過ぎちゃった。あそうそう、道あったわよ!」

妹紅「お、本当にあったのか。都合が良いな。行こう。」

フランドール「うん!」


私は起き上がり、大きな穴へと向かった。

そして、穴から繋がっている道に入ろうとした瞬間だった。


「お前達か!さっきの衝撃は!」


突如後ろから大声で呼びかけられた。

驚いて後ろを振り向くと、そこには見覚えのある狐がいた。


フランドール「何よ貴方。確かに今のは私だけど……もしかして敵?」

フランはいきなり敵意を剥き出しにしている。


「……ん?」

フランからの視線をそっちのけでその狐は私を見つめた。


「お前、どこかで……。」

フランドール「え、無視!?」

妹紅「あれだよ、完全憑依の時に会ったんだ。お前、(ゆかり)のとこにいた狐だろ?」

「……!思い出したよ。不死人じゃないか。」

妹紅「藤原妹紅だ。今は死ぬけどな。」

「私は八雲(やくも)(らん)。……なるほど、つまりお前も能力を失ったと?」

妹紅「その言い方だとお前も能力を失ったみたいだな。」

藍「その通りだ。本来式神を操れるのだが、ここに来てから式神を憑かせる事すら出来なくなってしまったんだよ。」

妹紅「やはりここに来た全員の申告されている能力は失われているのか……。」

藍「失われているのは申告能力だけなのか。確かに、式神行使は申告した能力だ。そしてその他には異変は特に感じられないな。」


と、私と藍が話し込んでいると、

フランドール「ちょっと!除け者にしないでよー!」

フランが私の腕を揺すりながらそう訴えた。


妹紅「おっと悪い。つい夢中になってたよ。」

フランドール「むー……」

フランは頰を膨らませる。


藍「済まないな。……見たところ貴方は吸血鬼のようだが。」

フランドール「そうよ。フランドール・スカーレットって言うの。フランで良いわよ。」

藍「あの館の主人の家族か。まあ、幻想郷で吸血鬼と言えばあの館だからな。さっきも名乗ったが、私は八雲藍だ。よろしく頼むよ。」

藍は会釈した。


妹紅「ああ、よろしくな。」

フランドール「とりあえず、敵じゃないみたいね。良かったわ。」


フランが安堵した、その時だった。


藍「危ない!」

藍がそう叫ぶと、咄嗟に私達の背後に向かって術を放った。


フランドール「ひゃっ!?」

妹紅「何だ!?」

私とフランはほぼ同時に後ろを向いた。



妹紅「な……お前……。」


そこに映った人影は、私を酷く驚愕させた。



続く

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