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「消失・絶対零度の章」

……今日もいつも通りだな。

いつも通りに退屈だ。

あのそこそこ楽しかった異変も終わって、私の好奇心をくすぐるものもない。

またあのぐらい楽しい異変が来ないものか……

まあ、それもいずれ解決したら今みたいにまた元の日々に戻る。

世界はそう巡っている。

私には今の生を閉じることも新たな生を得ることもできない。

そんな私からしたら、輪廻など見飽きた。

……はぁ、さっさと浄土へ行きたいものだ。


私はそんな事を考えながら、迷いの竹林をほっつき歩いていた。



「……ん?」


何だ…?

心なしか視界が少し青いような……



……うわぁっ!?



突然、私の体は宙に浮き、視界が真っ青になった。





ーー紅魔館。


「……今日の月は一段と綺麗ね。」

満月を見て私はそう呟いた。

その言葉とほぼ同時に、いつもよりうるさいノックが聞こえた。


「お嬢様!」

レミリア「咲夜ね。入りなさい。」


私はそう言って、咲夜を部屋に入れた。


レミリア「どうしたの?少し息を荒くしちゃって。」

咲夜「単刀直入に言います。……妹様がどこにもいません!」

レミリア「えぇ!?何ですって!?」


私は即座に咲夜を連れて地下室へ向かった。



レミリア「……本当に居なくなってる。」

咲夜「嘘だと思われてたのですか?」

レミリア「確認よ!一応ね!」


咲夜はゆっくりドアを開ける。

私達は地下室に入った。


咲夜「隅々まで探してみたのですが、どこにも居ませんでした。この部屋は愚か、紅魔館にすら。」

レミリア「いきなり家出なんて、フランも生意気な事するじゃない。……あそうだ、美鈴は何してたのよ!」

咲夜「今日は珍しく起きていたようですが、少なくとも門から妹様は出ていないと。」

レミリア「じゃあ裏から……?」

咲夜「それかもしくは……」


咲夜は少し間を空けてから、私の目を見つめてこう言った。


咲夜「どこかへ飛ばされた、という可能性もあります。」





ーー八雲紫の屋敷。


「え……?」


私は藍様に連れられ、紫様の屋敷に来ていた。

藍様と一緒に遊んでいた。

……遊んでいたはずなのに。


いきなり藍様の体が光ったと思ったら、どこにもいなくなっちゃった。


「藍様……?どこ行っちゃったの……?」


そんな私を安心させるように、紫様は言った。


紫「大丈夫よ、橙。私が助けに行ってあげる。」

橙「ほ、本当!?」

紫「私の大事な式神よ。助けない道理などないわ。……さて、行ってくるわね。」

橙「ど、どこにですか…?」

紫「藍がいる場所は検討がついている。まあ、私も初めて行くけどね。じゃあ、留守番よろしくね。」

橙「あ、え、は、はい!」


紫様はそう言うと、スキマを展開してその中へと消えていった。

私は言われるがままに留守番をした。





ーー迷いの竹林。


「妹紅ー?どこにいるのー?」


何で私が妹紅を探してるかって?

急に姫様が妹紅を探して来いって。

保険のためにてゐも連行してるけど……

そのてゐは私の右腕で必死にもがいている。


「ねぇー!?どこー!?」


と、急に右腕をてゐにチョップされた。


「痛っ!?」

てゐは私の右腕から解放された。


てゐ「ったく、鈴仙は兎使いが荒いわね!」

鈴仙「あんたの事だからすぐに逃げ出すでしょ!だから無理矢理担いでったの!」

てゐ「てか、何だって私を?」

鈴仙「お守り!それだけ!」

てゐ「後で飛びっきりの悪戯をしてやる…」

鈴仙「聞こえてるわよ!」


その後も2人で妹紅を探し回ったが、結局妹紅は見つからなかった。



私達は永遠亭に戻った。


輝夜「あら、お帰り。妹紅は居なかったの?」

鈴仙「あ、はい…どこにも。」

てゐ「はーなーせー」

鈴仙「あ、ゴメンゴメン。忘れてたわ。」

てゐ「ったく…」


と、廊下からお師匠様が入ってきた。


永琳「あら、もう帰ってたの。」

鈴仙「あ、はい先程。」

永琳「話は少し聞こえてたけどね。妹紅が消えたんですって?」

鈴仙「消えた……かは分かりませんけど、少なくとも迷いの竹林の中にはどこにも。」

てゐ「実はまだ行ってないところがあるかも…」

鈴仙「えぇ!?……って、嘘でしょ!」

てゐ「まあ冗談は置いといて。」

鈴仙「はぁ…」


私がてゐに軽くからかわれたところで、お師匠様は言った。


永琳「まあ、彼女なら大丈夫でしょう。地上人とはいえ、輝夜と張り合えるのだから。」

鈴仙「そう……ですね。」


普通なら根拠のない発言だが、お師匠様が発言しているということ、対象が妹紅であることによる不思議な信頼感がある。これがてゐだったらほとんど信じなかっただろう。


輝夜「まあ……待ちましょうか。彼女が帰ってくるまで。帰ってきたら……どうもてなしてあげようかしら。フフ…」

永琳「あー、これは後でまた竹林が一部消し飛ぶわね。ごめんなさいね、てゐ。」

てゐ「もう慣れたけどさ……何だかなぁ。」


私達は妹紅の帰還をゆっくりと待つ事にした。





ーー守矢神社。


「神奈子様!神奈子様ー!」


私の睡眠を妨げたのは、大声で私を呼ぶ早苗だった。


神奈子「んにゃ?どうした早苗。」

早苗「聞いてくださいよ!諏訪子様が突然光を発してピチューンって!」


切羽詰まってる時にもブレない早苗節。


神奈子「おいおいそれはもう被弾してるじゃないか。」

早苗「まあともかく…消えちゃったんですよ!私の目の前で!」

神奈子「突然……ねぇ。何か無ければ良いけど……。」

早苗「何かありましたよ!たったさっき!」

神奈子「ああそうじゃなくて。消えた後のあいつの身体に何も無ければな、って。いつかまた何も無かったかのように帰ってくるよ。」

早苗「それなら良いんですけどねぇ……」

神奈子「何故帰って来ないような雰囲気にする。」


全く……。


……ともかく、私は諏訪子を信じている。

あいつがそう簡単にやられる訳がないからね。





ーー地霊殿。


バタバタバタッ!


……騒がしいわね。

しかもこっちに向かってくる。


「さとり様っ!」


騒音の主だったお空は、私の部屋のドアを勢い良く開けた。肩にはお燐もいた。


さとり「ノックぐらいしなさい、お空。」

空「あ、すいません。でもいまそれどころじゃなくて……!」

さとり「何があったの?」

空「えーと……何だっけ?」


何かを忘れたお空の言葉に反応して、お燐は人間体となった。


燐「うん忘れると思った!ていうかこんな事まで忘れないでよ!」

空「そう言われてもなぁ…。」


ここまではいつもの調子ね。


燐「まあ良いや、さとり様、聞いてください!」

さとり「何かしら?」


すると、お空が急に、


空「あ、そうだ!こいし様!こいし様が突然消えてしまったんですよ!」

さとり「いつもの事じゃない?」

燐「思い出したのね……あ、えーと、消えたというのはですね、あたいとお空と一緒に散歩していたら突然青い光を発したと思ったらどこにもいなくなってたんですよ。」

さとり「青い光……それ大丈夫?」


私はとある物質を思い浮かべた。それはお空がよく知ってるはず。


空「あ、プルトニウムじゃ無いですよ。安心してください。」

さとり「そう、なら良……くはないわね。でも突然消えてしまったのなら、私達がどうこう出来るものでもない。」

燐「そうですか……でも心配で眠れませんよ!」

さとり「それはそうだけど……こいしなら大丈夫よ。」


これ以上の話はしなかった。

話せば話す程心配になりそうだから。

こいしならいつの間にかひょっこり帰ってきてる。

そう信じて、こいしの帰還を待った。



ーー命蓮寺。


「わーーーーっ!?」


私が外に出ようとした時、悲鳴が響き渡った。


「あらあら、大きな声出しちゃって、どうしたの?響子ちゃん。」

響子「ああ、聖さん!あの2人が……」

白蓮「あの2人?星とナズーリンは中に居るし……一輪と村紗は外出中だし……て事は、ぬえとマミゾウね。で、どうしたの?」

響子「消えたんですよ!いつも通りに掃除していたら横で突然光り出して、何かと思ったらさっきまで居たはずのぬえさんとマミゾウさんが消えちゃいました!」

白蓮「突然……?不可解ね……。まあ不可解な事なんていつもの事だけど。」


しかし、何故あの2人だけが消えたのだろう。

共通点……

獣だとしても、星やナズーリンが消えないのはおかしい。

獣に含めていいのかは分からないけど、響子ちゃんも消えている可能性だってあった。

他にあの2人の共通点……ねぇ。


響子「ど、どうしましょう……?」

白蓮「今すぐにでも助けてあげたいけど……。」


何となく分かる。

この異変は私達がどうこう出来る異変では無いと。

何故かなんて分からないけど……

強いて言うなら、手掛かりが無さすぎる。


でも、あの2人ならきっと帰ってくる。

ちょっとやそっとの異変には屈しないでしょう。

そう信じるしか無かった。





ーー博麗神社。


「お茶を淹れて来るわね。」

「おう、頼んだぜ。」


私はいつものように家に来た魔理沙にお茶を出すために調理場に行き、そこで新茶を2杯淹れ、私は居間に戻ろうとした。


途端、居間が青く光り出した。


「えっ!?」


すぐに居間のドアを開けたが、そこには魔理沙の姿は無かった。


え、魔理沙?どこ行ったの?変な魔法使ってテレポートした?

……いや、この雰囲気は違う。


異変ね。


でも……何だろう。

いきなり光って消える……

それだけだった。


私は外に出てみた。

えらく平和な空である。

視覚的な変化は一切無い。

まるで異変など無かったかのように。

けれど起きた突然の消滅。

あまりにも一瞬で、あまりにも手掛かりが無い。

これは手強いわね……

というか私が手を出す隙が無い。

かと言ってこのままここにいるのも巫女の名に傷が付く。

ともかく、色んな所に行ってみるしか無いわね。


私は神社を出た。





ーー廃洋館。


「あ、来た来た。」


私は雷鼓さんと九十九姉妹の2人とここで待ち合わせをしていた。

メルランとリリカは中で待っている。

待ち合わせ時間から10分過ぎてようやく九十九姉妹が来た。


……あれ?九十九姉妹しかいない?


八橋「ゴメン遅くなった!」

ルナサ「お待ちしてました。ところで雷鼓さんは?」

弁々「それがねぇ、一緒に飛んでたんだけど、急に光を発したと思ったら消えちゃって。」

ルナサ「ええ!?」

八橋「それで少し周りを探してたんだけどいなくて……遅れたのはそういう事。」


いきなり消えた……!?

……そして何でこんなに冷静なんだろう。


ルナサ「……これはもうセッションしてる場合じゃ無いですよ。雷鼓さんがいないんじゃ……。」

弁々「大丈夫よ。雷鼓姐さんだもん。」

ルナサ「理由になってない……」

八橋「でも彼女なら信頼できるよ。あ、そうだ!彼女を応援するために5人で演奏しようよ!」

弁々「お、いいね。雷鼓姐さんに届けよう!」

ルナサ「……やっぱり心配ですが、そうですね。届けましょう、どこかにいる雷鼓さんに。メルランとリリカを呼んできますね。」


心の中は不安でいっぱいだけど、演奏すればそれも吹き飛ぶと思った。

これも異変だろうし、きっと巫女が解決してくれる。





ーー地獄。


……ご主人様に呼び出されたのは良いものの。

どこに居るんだ……?


クラウンピース「おーい、ご主人様ーー?」


その時、いきなり背後から声を掛けられた。


「そこの妖精。」

クラウンピース「What?」


振り向くと、そこには竜と亀を足して2で割ったような妖怪がいた。


「貴方も誰かを探しているのです?」

クラウンピース「探しているけど……あんた誰?」

「失礼、吉弔八千慧です。私も探し人がいましてね。」


吉弔……聞いたことはある。

地獄の隣の畜生界……だっけ?

そこの組長……だっけ?

よく覚えて無いけど多分合ってる。


クラウンピース「へぇ……」

八千慧「私が探しているのはとある組長でね。私も組長ですが。話を着けに行こうとしたのですが、どうやら不在で。しかも霊達の話によれば、目の前で突然消えたそうな。」

クラウンピース「突然……もしかしてご主人様も……?」

八千慧「ちなみにそのご主人様とは?」

クラウンピース「ヘカーティア・ラピスラズリっていう神様だぜ。」

八千慧「なるほどあの神か……となると貴方はクラウンピース?」

クラウンピース「あ、ああ、正解だぜ。」

八千慧「人に名乗らせておいて自分は名乗らないなんて……まあ別に良いんですけどね。」

クラウンピース「それは何かゴメン。」


突然の消滅。

そしてご主人様もそれに巻き込まれている可能性がある……か。

でもまあ……


クラウンピース「でもまあ、ご主人様に敵は無いぜ。消滅と言ったって、多分転移の類いだと思うし。根拠は全く無いけど。」

八千慧「私もそう読んでいます。あいつは簡単に消滅させられるほどヤワじゃ無いですからね。」

クラウンピース「まあ、いつか何も無かったように帰って来るぜ。きっと。」

八千慧「そうですね。では、私は戻ります。貴方も気をつけて。」

クラウンピース「あ、ああ。」





ーー後戸の国。


「……ふむ。」


あの世界は何だったのか……


「消えたと思ったらすぐに帰って来ましたね。」

「急に光って消えるものだから焦りましたよ!」


里乃と舞は何事も無く帰って来た私に安堵しているようだ。


だが……


隠岐奈「2人共。私はさっきの世界に行く。」

里乃「え、それはさっきいきなり消えた先の世界……って事ですか?」

隠岐奈「そうだ。あの世界にきっと犯人がいるだろう。私だけが被害に遭ったとも言い切れないからな。むしろ、私は実質被害に遭っていない。こうして簡単に帰って来られるからな。」

舞「やっぱりお師匠様凄いですね。」

隠岐奈「フフ。さてと、留守を頼んだぞ。」

里乃&舞「分かりました!」



周りが全て氷で覆われた世界。

あの世界はとても危険だ。

勘だが。

だが、突然あの世界に連れ込むような奴だ。

何を考えているか分からない。

少し懲らしめてやる必要があるようだな。





これが、「消失異変」の始まりだった。

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