すべての物語の始まり
奇跡って何だろう。運命って何だろう。
平凡な生活、その中で奇跡なんて考えたことなんてなかった。
今、こんなことを考えたのも、鈴桜との出会いを思い出したからに過ぎない。
こんな俺が彼女と出会えたのは奇跡のおかげだったのか考えてしまう。
幼馴染みが美少女、隣の席が可愛い子、美しすぎる転校生とか妄想ばかりしているようなオタク交じりの高校生が、まるで夢にまで見たこともない想像を絶するほどの美少女と出会うこと、それはラブコメの主人公が俺であることを思わせる。
そうじゃないなら、夢だと100%断言した。
その夢すらも早々に終わりを迎える。
「西条、西条希水は休みか?」
「いるなら返事しろー。」
「います。ただ今は手が離せないだけで」
「鈴桜じゃなくて、俺は西条に返事を求めているんだが。」
「西条、起きろ。」
閉められていたカーテンはいつの間にか開いており、窓から春独特の陽気な温かい風が寝起きの体にさらなる眠気を誘う。
「西条、寝不足なら夜更かしをやめて、早めに寝ることだな。」
「すみません。気を付けます。」
寝起き目をこすっていると左隣から声がした。
隣の席の鈴桜は顔を赤らめて「ごめん。あまりにもぐっすり眠っていたから。また無駄なお節介だったよね。」って小声で言う。
「いや、いつも俺が悪い。鈴桜のせいなんて思ってない。いつも感謝しているよ。」
どうやら、担任の熊森は朝のホームルームで出席をとっている途中のようだった。
早めにホームルームを切り上げて一限の授業に備えたかったらしく、出席を取り終えるも早々に教室を出ていく。
「一限は実習か。今日はどんな実習を行うんだか。」
不安交じりのため息をつく。すぐ隣で鈴桜が話しかけてくる。
「希水くん、時間大丈夫かな?」
「大丈夫だ。」
「いつも悪いけど、今日も少し遅くなるかもだけど大丈夫かな?」
「いや、いつも鈴桜には迷惑をかける。」
現在、人類の9割が能力発現させていた。能力者の誕生と同時に能力価値による政治的階級が生まれたのは言うまでもない。優れた能力になればなる程、能力者は減っていく傾向にあった。1歳にして希少価値の高い能力、優れた能力が発現すれば年齢関係なく政治的に優遇されることすらあった。その中で、最も頂点に位置しているのは「未来視覚」の能力であった。未来を視認し、未来を人類の有利な方向に導いたとも言われていた。この世界があるのは、今まで3人しか存在していない「未来視覚」能力者のおかげとも言われている。
希水は…「未来視覚」能力者である。
希水は生まれたと同時に能力が発現し、今まで優遇されて生きてきた。
ただ、視認できる未来は何時も不幸なものばかり。どう対処しようと未来を変えることができないことが多かった。最初のうちは周りの人も希水に見返りを求めて仲良くするも能力が使えないことを知るも離れていった。でも、希水はこの「未来視覚」の能力を人のために使うべく、花桜学校に入学を決意した。一般的な入試を行うも面接の時に「能力により合格は決まっていますが…」とか言われたことに少し遺憾を覚えながら、一週間程、通った今日。幼馴染みの鈴桜に声をかけられた。
友だちは自分のためにならないとわかると僕のそばを離れていった。でも、鈴桜だけは違った。それが、鈴桜との出会いだった。鈴桜は優しい彼女のことが好きだ。彼女には能力が発現しなかったけど、彼女のためなら能力を犠牲にしてもいいと思えた。
「いつもの場所でいいかな?」
「いつもの場時な、待ってるよ。」
鈴桜とは学校で習ったことの復習に勉強会を毎日していた。放課後の図書館、そこがいつもの場所だ。俺は能力は使えないけど、授業で習う学識で学内トップだ。この学校では、実習部門と学識部門で成績を評価された。学識部門は毎学期に実施されている。主に戦闘技術、魔法学を学術的に解くもので、成績優秀者になるものはほとんどが能力が劣勢と判断された者、能力を持たない者を占めていた。実習部門では、実際に戦闘力を要した対戦形式、成績に応じて報酬+成績が加点される評価方法だ。結果的に能力者が多く占める世の中能力に頼ることが多くなってしまう。そのため、優秀な能力が必須となってしまうためか優秀者は非常に優れた能力者であることは明白だ。その二種の成績評価法に合わせて総合的に評価する部門も存在する。学校内では、どうしても片方の評価方法に偏ってしまうため、存在はもはや、噂の話とされていた。俺たちは最低限の勉強をすることを目標に勉強会をしていた。俺は勉強が苦手で、鈴桜に教えてもらう体制にどうしてもなってしまう。鈴桜は学識部門で2位の成績を抑えていた。そんな彼女に教えてもらうも俺は34位/256位。こっそり、能力の鍛錬にも力を入れていた。しかし、あまり芳しい成果は出ていない。実習部門では202位/237位。全然だめだ。
最近、成果が発揮できず、彼女に迷惑をかけてしまっているんじゃないか、と申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「じゃあ、放課後な。」
「うん、またね.希水くん」
「今、鈴桜と話してたろ?どんな関係だ?」友人の京が隣から話しかけてくる
「うらやましいぞ。鈴桜ってクラス一の人気者なんだぞ。そんな子と毎日、図書館でイチャラブなんて。」
「あのな京,俺とあいつはそんな関係じゃないし、図書館でいちゃついてるわけでもないんだが」むっとした目で京をにらむ。
「。。。だよな。希水、おまえさ鈴桜のこと好きなのに何時まで経っても告白しようとしないもんな。お前らの関係は見ていてつまらん。そのうち、鈴桜と他の男が付き合い始めても知らんぞ。」
「そうかい。てか、なんで俺が鈴桜のこと好きだと思うんだよ」
「希水、お前は昔からわかりやすいんだよ」
こいつ。
京とは鈴桜の次に付き合いが長かった。小学校の時たまたま隣の家同士、親の帰りが遅かった時お互い家でお泊りしたのを今でも覚えている。
京に対して苦手ながら能力を使う。
ドアに向かい教室をあとにしようとした時、京に言っておくことにした。
「おまえ、このままいくと補修食らうぞ。来月のテストに向けてしっかり勉強しとけよ。」
「…まじかよ!」ドア越しに京の悲観交じりの声が聞こえてくる。
予冷が鳴った。
「それでは、今日の実習は能力有りのタッグバトルを行おうと思う。時間は無制限。相手の戦意喪失、降参させたペアの勝ちとする。いいか、これは今までの実習の集大成といえる。だから、それなりの成績に影響することはわかってほしい。なお、実習を受けるものは前に出ろ。いつもとは違い強制することはない。」
3割くらいが前に集まった。
「よし、ペアを作ってくれ。3分後に始めるぞ。」
各々がペアを作り始める。
さすが、本格的な実習だ。出場者はそれなりの顔ぶればかりだ。
俺とペアを組んでくれる人は相々いなかった。未熟な俺のことは学校でも有名だった。能力ランクの高いのに対し、能力が使えないと噂は広まっていた。
京も出場をあきらめたらしい。
そうだな。成績に大きく関わってくるから賢明だろう。俺も出場をあきらめればよかったのか。
そう思った先に事件は起きた。




