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ハグレモノ・ダンジョンキット  作者: ルフ
二章 探究は崩落の迷宮編
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第14話「オピニアvsサツキ」

「……大雑把ってどういうこと?」

「ダンジョンってのは魔物も植物も壁含めた構造も、全てが複雑に絡み合って出来るもんだ。説明とは言えお前のやり方からはそこらへんの理解が見えてこねえよ」


 オピニアはカチンときて言い返す。


「一度も作ったことない癖に口はAランクみたいね」

「俺が出来るかってより、お前が駄目なのを言っただけだろ」

「確かにあなたのダンジョン知識を借りようとしてたわ。でも良く考えたらサツキが本物だとしても、その頭まで噂通りかは試してなかったわね」

「あんな勧誘の仕方しといて良く言うわ。ならどうするんだ?」

「決まってるじゃない。アレをやるしかないわ。」

「…………アレ?」


――こうしてそれは始まった。




「第一回ダンジョンキットコンテストーーー!!!」

「…………」



アトリエには二人しかしない。

しかし、オピニアにはあたかも五万の観衆がいるかのように、高々とその大会名を謳い上げた。


ダンジョンキットに必要なものは、瓶も、魔物の材料も、土や草、壁に至るまで全てが用意されている。

――後は互いが己の全てをぶつける覚悟を持って、その戦場(いくさば)に赴くだけである。



(これは面倒なほうに挑発してしまったか)

 サツキは後悔するが時既に遅かった。


「ルールはお互い制限時間1時間以内にダンジョンを作って、見た目、難易度、あと経験値から何となくで優劣を競う!」

「経験値?」

「言い忘れてたけど、出来が良いダンジョンのほうが経験値が多いのよ。ってこれ普通のダンジョンもそうじゃないの?」

「いや、普通は個体ごとに一定だ。そうか……もしかしたら」


ダンジョンキットの経験値が少ないと聞いて不思議に思っていたが、それを聞いたサツキはある仮説をたて始めた。

もちろんオピニアはそれを待つつもりはない。


「意味深なこと言ってる間に進めちゃうよ! 階層は2階まで。武器はナイフのみ。ルールは以上! では――――スタート!!」

「おい、俺はまだやるとは――――」


 戦いの火蓋が半ば強制的に切って落とされると、オピニアは素早く素材を持って、自分の作業台へと走る。

サツキもため息を出しつつも渋々作業台に着いた。



 まだお互いの作業台には材料と空の瓶が転がるだけだ。

 しかしその時。




――――オピニアは既に勝ちを確信していた。



(ふふ……ダンジョンにちょっと慣れてるからって、作るのは初めての素人同然。既に色々と試した私の敵じゃないわ)


 実際その手際は良く、地下2階の土台はあっという間に出来上がる。しかし今回はそれで終わらず壁を設置し始めた。ダンジョンキットの壁は土台同様に小型のモデル時にはただの薄い板だが、開放時にはしっかりとした壁になる。ナイフのみでは破れはしないだろう。

しかしここで彼女は少し細工を入れていた。


(サツキ……あなたの敗因は、私がこういう勝負ではどんな手でも使うことを知らなかったことよ)




…………一方。


 オピニアが笑いを堪えるその傍らで、サツキも素材を前に考えていた。


(あいつはきっと勝つためには狡い手でも何でも使うんだろうなぁ……まぁ俺は俺なりにやらせてもらおう)


 今回用意された素材は。

 ・ブルーマウスの人形と毛

 ・イートリーフの人形と葉

 ・土台や壁用の木の板

 ・燭台(火事戦法は危険なので禁止)

 ・そこらの雑草色々


 僅かこれだけだ。

 魔物は2種類とも最弱クラスなので大怪我をすることは万一にもないだろう。

 その中で勝つためにはどうするか。


(それは弱い素材の力を引き出すことだろう。小手先の策じゃあ地力の高いダンジョンは越えられねえよ)


――サツキには己の勝利する未来がハッキリと見えた。




 一時間後。

 二人の前にはそれぞれ相手の作ったダンジョンの入り口が開かれていた。


 ダンジョンに入る前に二人は能力測定紙(チェッカー)と呼ばれるマジックアイテムを使う。

 指の大きさ程しかないその紙は、体液(ヨダレや血など)を付けることにより、その人の能力が数値として浮かび上がる仕組みになっている。冒険者は勿論今の世で最も普及している魔法具と言っても良いだろう。

 今回はサツキが持っていた分を使うことになった。


「もっとも一番安いEチェッカーだがな」

「ケチ……と言いたいけど賢明ね」


 Eチェッカーは最も安価で(昼食代くらい)最長30分程度の間の取得経験値を調べることが出来る。片側の端に体液を付け、終わったら今度は逆側に付けるだけだ。

 ちなみに最も高価で、能力値からスキルまで分かるSチェッカーは4人家族の3日分の食事代くらいである。


「じゃあ先行はサツキね。怖くなったらとっとと逃げ帰ってね」

「お、心配してるのか?」


 オピニアはにやっと笑い、わざとらしく静かに首をふった。


「仮にサツキが途中で逃げ出しても、あるいは勇気を持って進んでも――負けの結果は変わらないからね」

「このガキが……」


 その煽りを聞いたサツキは何かに気付いたと言わんばかりにポンと手を叩く。


「あー、確かに負けてやるのも一つの手かも知れないな」

「別に子供扱いしなくてもいいわよ?」

「いやいや」


「さすがに不慮の事故で死なれたら恨まれそうだからな」

「ほう……」


 やるわねとばかりにオピニアも苦い顔で笑う。


 煽り対決は両者互角。

 やはり決着はダンジョンで決めるしかないようだ。



――――サツキはダンジョンに入る。

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