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12 紅の姫と黒薔薇の姫

全話一気に投稿します。

私はすぐに動いた。

ロイスも侵入者の撃退に動いている。

ヨルギム伯爵と隣国ドーラ王国の王子の告白は私たちの手配だ。

廃人や狂人を収容している場所で彼らを見つけた。

私の治癒魔法で彼らを治療し、真実を聞き出した。

藍花こと紅の姫は、男を落とし、絞るだけ絞った後廃人にして捨てるという事を繰り返していた。彼女はそうして多くの貴族から金を撒き上げていた。聞くところ、彼女には特別な魅惑があるようだ。魔法の一種。相手を魅了して引き込む。ロイスも一度、彼女に迫られたときにそれを感じたと。自分に施していた防御魔法のおかげで難をのがれたと。私がまだ雑貨屋のマリーの時に、街で二人をみかけたとき、その最中だったらしい。

私達は、この結婚式で藍花を断罪して彼女にはご退場していただくつもりだった。しかし、彼女は戦いを選んだ。

私達も戦力を教会近くに潜ませていた。

続々と私達の魔法使いも戦闘に加わる。


戦闘は私達、第三王子派有利で進む。

それもそのはず、国王陛下派+第三王子派だ。

数の上で圧倒している。

藍花は苦戦している状況を理解したのか、味方諸共、周囲の魔法使いを焼き払い逃亡する。

私は彼女を追いかける。



藍花は霧の中を疾走する。

真紅の魔法で周囲の建物を燃やして被害を拡大させていく。

建物が溶け、その中から悲鳴が聞こえる。

私は彼女に杖を向け、光の矢を放つ。

それが彼女の先の建物を崩し、道を塞ぐ。

藍花と相対する私。

彼女は私を見る。


「あら、誰かと思ったら仮面の姫様。あなたが黒薔薇の姫だったのね」

「あなたこそ、紅の姫が紅蓮の魔術師なんて」


彼女は私を見る。

いや、私というより私の後ろを。

そうしてニヤリと笑う。


「でも、一人で大丈夫?」

「私があなたを倒すは」

「そう」


彼女は杖を私に向け、真紅の炎を放つ。

それを間一髪でよける私。

同時に光の矢をだして応戦し、建物の壁に隠れる。


「あら、隠れんぼがお好きなの?でも私には意味がないわよ」


彼女から放たれる真紅の炎が私の目の前の建物を溶かす。

私はそこから逃げながら、祈りを魔力に変える。

そして、イメージをしながら呪文を呟き、杖を彼女に向ける。

私の杖の先から出た白いキツネが藍花めがけて疾走する。

彼女は真紅の炎をキツネにむかって放つ。

が、キツネはそれを回避し、彼女に襲いかかる。

キツネの噛みつかれ、わずかに顔色が悪くなる藍花。

だがすぐに杖から真紅の炎をだし、キツネを追い払う。

彼女は顔を歪めて私を睨む。


「あなた、許さないわよ」


彼女は杖を空に向ける。

特大の炎を出す。

それを何個を作り出す。

彼女の頭上には家一軒程の大きさはある炎の塊がいくつも浮かんでいる。

炎の圧力と熱量が私に伝わってくる。


「死になさい」


その瞬間、空に浮かぶ炎の塊が何個も私に殺到する。

私は杖を炎に向ける、

白いキツネが私を前で壁になる。

だがそれは炎が当たるたびに崩れていく。

杖を握りしめる手が震える。

そしてキツネが破壊され、炎の塊が私を襲い、私は吹き飛んだ。



気付くと私は地面に倒れていた。

体の至る所から煙が出ている。

足音が聞こえる。

そちらを見ると、藍花が私に近づいてくる。

私の体は動かない。

藍花は私の傍に屈みこむと、私の顔から仮面を外す。

私の顔をまじまじと見る彼女、


「冬華、やっぱりあなただったの。どことなくそんな感じがしていたわ」

「藍花・・・」


呼ばれた懐かしい名前。

昔の記憶が蘇ってくる。


「これでお仕舞ね。今度はちゃんと私が殺してあげるわ。やっぱり、大事なことは人に任せては駄目ね」


藍花が杖を私に向ける。

私はその杖をただ見ていた。


「でもその前に、さっきのキツネは痛かったわ。片腕が使えなくなるほどね」


良く見ると藍花の左腕はだらりと垂れていた。


「だからあなたにも同じ苦しみを味わってほしいの。私達親友でしょ。親友は何でも共有しないとね」


彼女は私の左腕に杖を向け呪文を呟く。

すると、左腕が解けていく。

ドロドロと溶けていく。

しかし、不思議と痛みはない。

おかしい。

私は腕を見ると、そこには溶けて何もない。

だが、溶けた面から歯車とチューブのようなものが見える。

骨や肉ではなく。

何故そんな物が私の体に中に入っているのか。

そう考えていると。


「あははは」


藍花の笑い声が辺りに響く。

彼女は笑いながら私の腕から溶け出てきた歯車を手に取る。

手に持ち歯車を回す。


「あなた人ですらないのね。まさか人形だなんて。本当に残念な娘」


憐れむように私を見る藍花。

私は驚き、腕を見る。

人形?

私が人形?

私は人のはず。人形なんかじゃない。

藍花は何を言っているの?

なんでそんなこと言うの?

私のことが嫌いだから?

彼女はそんな私を見て。


「その様子、あなた知らなかった見たいね。さすが穢れたブラック家。死霊を操るネクロマンサーの家系はやることがえげつないわね。でも、冬華らしいわよ」


私が人形。

じゃあ?私の本当の体はどこに?

私は記憶を思い出していく。

私は毎日屋敷の白い部屋に入っていた。

あの部屋に入ると気分が落ちついた。

逆に時間がたつと、だんだんと気分が悪くなり、感覚が薄くなっていた。

あそこにいると、心が安らいだ。

本物が近くにあるような気がして。

私の心が吸い寄せられていた。


本物?


本物の私の体はどこにあるの?


まさか、私はあの雑貨屋の夜に死んだの?

あの炎の中で。

全てが燃えて消えていくあの赤い光の中で。

崩れ落ちていく亀の像や、私の似顔絵の様に。


その瞬間、私は恐怖に襲われた。

深い絶望が私の心を支配した。


私が死んだ。


私は死んでいる。


私が死んだ。


私はもういない。


私は死んだ。


そして、思い出した。


私があの雑貨屋で燃えていく中、何を願ったのかを。


私は呪った。


あの二人を呪った。


そして世界を呪った。


世界を呪った。


これまでで一番強く願った。


他のどんな事よりも強く願った。


世界の呪いを。


その瞬間、私の中の何かが外に溢れ出た。


霧のような何かが外に溢れ出た。


それが、炎と黒煙、夜空の中に消えて行った。


呪いが世界に放たれるように。






それを思い出した瞬間、私の心は霧と呼応した。


そして闇に落ちた。


次話も投稿していますのでどうぞ。

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