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8 王城

少々長くなっております。

炎上した舞踏会。

燃えた屋敷の貴族は第三王子派でした。

幾人かの人が亡くなったようです。

街はこの噂で持ちきりでした。

至る所でその噂話を聞くことができます。

今までは市民の間では関心が薄かった第二王子と第三王子の派閥争いですが、それが一気に拡大しました。

焼け跡の屋敷には、数日たった今でも野次馬がいるぐらいです。

王都の警備隊が屋敷を囲い、事件を捜査していましたが、捜査状況は順調ではないようです。貴族の争いに、介入したくはないのでしょう。下手に介入し、後に国を掌握する派閥に恨みをかっては生きていけません。



私の生活にも変化がでてきました。

これまで通りのセバスの貴族令嬢教育、魔法訓練、薬草作りに加え、数多くの舞踏会、お茶会に出席しました。又、お茶会を開催しました。

私がつくった特別な薬草が売れているためか、資金は潤沢でした。

その豊富な資金を元に贅をこらした会を主宰し、仲間を増やしていきます。

ロイスもロイスで、貴族仲間を増やしてようでした。



又、夜戦もこなさなければなりません。

あの炎上した舞踏会の日から、戦闘はますます激しくなっている様でした。

私が治療する怪我人が増えています。



そのため、疲労が濃くなってきていました。

私は屋敷にある白い部屋にこもる時間が増えました。

あの部屋に入ると、部屋に施されている魔法の影響か、体力、精神力共に回復します。



そんなある日、私とロイスは王城に呼ばれました。



「ロイス、なぜ私たちが呼ばれたの?」

「時期が来たという事だ。何も心配はない」


私はめちゃくちゃ心配だった。

王城に行けば、第二王子こと一色君に合う危険性がある。

何故か彼は私に好意をもっているらしく、頻繁に舞踏会で話しかけてくる。

それを私はすげなく断っている。

私たちはメイドに案内され、とある部屋に入る。

中には一人の男性。

端正な顔に、筋肉隆々の体のイケメン。

そして見覚えのある白い服装。

ロイスがひざまづく。

私も同様にする。


「第三王子様、お久しぶりでございます」

「なぁに、よい、堅苦しいのはいらん」


立ち上がるロイス。

私も真似をする。

目の前にいるのこの国の第三王子だ。


「それで、上手くいっているのか?」

「はい、上手くいっています。約束でございますから。第二王子派閥を徐々に崩しております」

「そうか。さすがだ。お隣の美女は噂の仮面の姫君かね?」

「はい。仮面を外すのはお許しください。事情がある故」

「分かっている。私は君を信用している。邪推なことはせん。私たちの話はご婦人には退屈であろう。メリーが仮面の姫君にぜひ会いたいと言っていたが、構わないか?」

「もちろんです」

「では、メイドに案内させる」



そうして呼ばれたメイドに私はついていく。

メリーとは第三王子の夫人の事だ。未来の王妃様候補。

彼女は体が弱いためか、めったに姿を表さない。

今まで私が出席した舞踏会や、お茶会で合ったことは無い。

メイドに案内され、私はとある部屋に入る。

中には一人の女性。

椅子に座りながら窓の外を見ている。

その彼女が振り向く。


「あなたがアリス様ですか?あらあら、本当に仮面をしているのですね」

「はい。申し訳ありませんが」

「いいえ。大丈夫ですよ。そのままでも」

「はい」


ほがらかな雰囲気を放つ彼女。近くにいるだけで癒される。

あまり外に出ないのか、肌は透き通るように白い。


「私、あなたにとっても興味があったんです。本当は舞踏会で合いたかったんですよ」

「私にですか?」

「そうですよ」


すると彼女は、傍にある袋の中から特別な薬草を取り出す。


「この薬草、あなたがお作りになられたのかしら?」


私は沈黙した。

これの製作者は秘密にしている。

情報が漏れると私が危険なことになると、ロイスから注意されている。

現に、薬草欲しさに店を襲う事件が頻発している。

街の雰囲気があれてきているのも原因かもしれない。

近頃、いたる所で争いを見ることができる。

店に魔術師が常時はりついて警備するようになるぐらい。

第二王子派、第三王子派の争いによる不穏な空気が市民の間にも伝染しているように思える。


「安心してください。誰にも言いませんよ。でも、私には分かるんです。それが私の魔法ですから」


マリー様は慈愛のこもった目で私を見る。

その目を受けると、質問に答えないことによる罪悪感を感じる。


「べつに認めなくてもかまいません。それを確認したいわけでもありませんから」


そういって彼女は窓の外を見る。

夕暮れ時の王城。

僅かに霧が出始めている。


「最近、霧が濃くなっていることに気づいていますか?」

「はい。日に日に濃くなっているかと」

「そうですか。ならこのことは知っていますか。最近霧に飲まれて失踪する人が増えているのです」

「そうなのですか?」


私は知らなかった。

霧には不快感を抱いていたが、実害があるとは思っていなかった。

それに霧についてはあまり考えないようにしていた。

霧の事を考えると心がざわつく。

何かよくない事の気がしていた。


「それは、派閥争いの類ではなくてですか?」


第二王子と第三王子の争いで人が死んでいる。私もその戦闘に関係している。

それにまきこまれて死んだ人が、霧によって死んだと偽装されているのではと。


「始めはそう思っていたのですが、どうやら違うようです。派閥とは関係ない者が多く失踪しています。悲しいことです。きっと、派閥間の抗争で死んだと思われる者の中にも、霧に飲まれた者がいるでしょう」


人を襲う霧。

確かに包み込むような、生き物のような感覚を霧に感じていた。

でも、人を襲う程とは・・・

彼女は窓から顔を戻し、私を見る。


「あらあら、アリス様も何か気にかかることがあるようですね。私も憂慮しています。このままでは第二王子、第三王子、どちらが勝っても国は滅びます。そこでアリス様です。この薬草から感じる光の力。これならばあの霧をも晴らせると私は思います。是非、力を貸して頂けませんか」


マリー様が私の両手を掴み、頭を下げる。


「や、やめて下さい」


私はとっさに手を放そうとするが離れない。

マリー様は私の手を握って離さない。


「いいえ、私はただ見る事しかできません。これぐらいさせて頂きます」

「分かりました。だから顔を上げて下さい」


彼女は頭を上げ、満足そうな笑みを浮かべる。


「ありがとうございます」

「ですが、何をすればいいんですか?」


私は何をすればいいか分からなかった。

霧には不快感を感じている。

だからなんとかしたい。

でも、霧に対して私が何かできるのか・・・


「ただ祈ってくだされば。この世界の平和を願って下されば」

「それだけでいいのですか」

「お願いします」


マリー様は私を真剣なまなざしで見つめる。

まるで、私にこの国の運命が掛かっているかのように。


「試してみます」

「よかった。私、嬉しいです」


彼女は言葉通り嬉しそうに笑う。

掴みどころがない人だった。

彼女は手元にある薬草もてあそびながら、私を覗き込むように見る。


「私、気になっていたんです。あなたにはどのように世界が見ているのか?」

「世界ですか?」

「そうです、仮面を被っているあなたには世界がどう見えるんですか?」


どういう意味だろうか。

世界の見え方。

仮面を被って私に見える世界。

そう思った瞬間、部屋の外から声が聞こえる。


「何故、騎士団が部屋を塞いでいる?」

「今は夫人が面会中です。その警護です」

「それなら一人か二人で十分だろう。6人も・・・それにその装備」


ロイスの声には僅かに怒気が聞き取れる。

マリー様は薬草を置き、手元のベルを手に取る。


「あらあらあら、アリス様の騎士がきてしまったようですね。彼に心配をかけてはいけませんね。ロイスは子供っぽい所がありますから。それではお話はこの変で終わりにしましょう。本当はもっと話していたかったんですけどね」


マリー様は手に持っているベルを鳴らす。

すると、部屋の扉が開き、ロイスが入ってくる。

その後ろには何人もの完全武装の騎士の姿。

彼らはこちらを、いや、私を見つめている。


「アリス、大丈夫か?」


ロイスが私の手を取る。

顔が少しこわばっている。ロイスにしては珍しい。


「べつに、大丈夫よ。ただマリー様とお話ししていただけ」

「そうか、それなら良かった」


ロイスはマリー様を睨みつける。

その視線を受けたマリー様。


「お久しぶりですね、ロイス。お元気そうでなりよりです」

「マリー様も、病弱とは思えない程お元気そうです」

「まぁ、ロイスはいつも私には厳しいのですね」


マリー様はちゃかすように笑う。

それを受けてもロイスの表情は変わらない。


「私は誰に対しても変わりません」

「そうですか?アリス様には甘いように見えますよ」


マリー様は私を見る。


「甘くはありません」

「それなら私にも、アリス様同様に接してほしいです」

「それは無理です。それと、部屋を塞いでいる騎士たちを下がらせてもらえますか?」


私は部屋の入り口を確認すると、完全武装の騎士が7人。

入り口を塞いでいる。

先程より一人増えているようだ。


「あらあら、気づきませんでした。職務熱心な彼らを睨まないで下さい。私の警護が彼らの任務ですから致し方ありません」


マリー様は騎士たちを見て、


「皆様、道を開けて下さります。お帰りの様ですから」


すると騎士たちは部屋の両脇に移動し、入り口が開く。

ロイスは私の耳元で小声で話す。


「アリス。油断するなよ。常に私の後ろから離れるな」

「うん」


私はロイスの後について部屋を出る。

出る際に、


「また、お話ししましょうね。アリス様」


と、マリー様の声が聞こえた。



そうして、私たちは王城を後にした。

ロイスには霧の事は黙っておくことにした。

前にロイスに霧について聞いたが、特に彼は何も感じていないようだった。

彼は今、派閥争いで忙しく、このことで負担をかけたくなかった。

ロイスに聞いた。私はうすうす気づいていたが、私たちは第三王子の派閥に属しているらしい。夜の戦闘は、第二王子派との戦闘ということ。

今日の会合を機に、これからは所属をオープンにしていくとのこと。

明日も投稿予定です。

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