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5 貴族家巡り

◇◆◇

「今日はこの家だ。いつも通り頼む」

「ええ」


私はロイスととある家を訪れていた。

大きな門で塀で囲まれた家。

豪華な衣装に仮面を被った私。

私は、侯爵令嬢アリスとしてこの家に訪れていた。


「これはこれは、仮面の姫君様。ささ、どうぞ」


出てきた貴族は私たちをエスコートする。

今日きたこの家は、薬草を降ろしている店の関係者であり、薬草の生産者である私達に好意を抱いているようだった。

私はセバスから叩き込まれた貴族令嬢としての振る舞いを思い出す。

ロイスが相手の貴族の男へと一歩前に出る。


「今日は挨拶に参りました。田舎から出てきたばかりのアリス嬢を、是非紹介したく」

「仮面の姫君の噂は既に広まっています。わざわざお越しくださり光栄です」


ロイスと相手の男が話をすすめていく。

王城の噂や世間話など、無難な話。

私は時より相槌や会釈をうつ。

そうしてその日は家を後にした。

どうやら、本当に顔見せだけだったようだ。

実際は仮面を被っているので顔は見せていないが。



それから同じようにくつかの家を訪問した。

どの家も豪華であり、私は初め圧倒された。

セバスから教えられた礼儀作法を実演するだけで精一杯だった。

話はロイスが進めてくれたので、それでも問題はなかった。



帰り道の馬車の中。


「どうだ。貴族になれたか?」

「そうね。少しね」


連日貴族家を訪れているためか、貴族にあっても変な緊張はしないようになった。

しかし、かなり体力は消耗していた。

普段使っていない筋肉と精神力を使った気がする。

そのせいか、意識しなくても令嬢らしい振る舞いというのをできるようになってきた。


「セバスの教えが上手くいったようだな」


確かに、セバスのスパルタで礼儀を体で覚えていなければ危ない場面もいくつかあった。


「そうね。スパルタすぎかと思ったけど、今思えばいい思い出よ」

「セバスの授業が終わったと思っているのか?。セバスの教育はまだ続くぞ」

「え?」

「今日も何度もおかしなことをしていただろ。それがなくなるまでは続く」


私は落ち込んだ。



◆◇◆



私は机の上で手紙の束を見ていた。

一つ一つ読む。

豪華な刺しゅう入りの手紙。


「アリスお嬢様、中々うまくいったようですね」

「いきすぎね・・・」


机の上にあるのは全て貴族からの手紙。

夜会、舞踏会、お茶会の誘いがごっそりきた。

読むだけで苦労する。

なるべく多くの貴族と顔を繋ぎ、知人を増やすために行ったロイスとの貴族家巡り。

まさかこれ程まで上手くいくとは・・・

嬉しいが悲しい。

これ、返信するだけですっごく大変なんじゃないだろうか。


「セバス、これ、全部返信しなきゃだめ」


私は「しなくてもいいよね」という思いを込めた目でセバスを見る。


「当たり前です。全部返信します。アリスお嬢様自らで」

「その・・・代筆とかできないかな。セバス、字、綺麗だし」

「駄目です。お嬢様自身が舞踏会かお茶会で何かを書くときがあるでしょう。その際に字の違いがありますと、お嬢様の評価が下がります」

「でも、セバスが私の字を真似て書けばなんとかなるんじゃない」

「駄目です。貴族令嬢としての心の持ち方を何度もお教えしたはずです」


にこにこしながら厳しい声のセバス。


「言ってみただけ」

「そうですか、それはよかったです」


「はぁ~」とため息をつきながら私は手紙の返事を書く。

◇◆◇

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