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4 夜の戦闘と霧

「アリス、今日は君も来てくれ」


夜、私が部屋で休んでいるとロイスに呼ばれる。

ロイスは夜、どこかに出かけていた。

私は怪しい店かも?と少し疑っていた。


「実は一人回復役がやられた。君にはその代役をやってもらいたい。戦闘はしなくていい」


どうやら物騒なお誘いらしい。

一瞬躊躇した。

でも、私は訓練した魔法の成果を試したかった。


「うん、分かった」

「それと服装は目立たない物で頼む。後、姿を隠すために違う仮面を用意した」


ロイスは私に黒薔薇が刺繍された仮面を渡す。

私はそれを受け取り、部屋に戻り服を探る。

とりあえず、黒いドレスを着ることにした。

黒ければ夜の街に馴染むだろうし。

私はその服を着、黒薔薇の仮面を被る。

ロイスも黒いローブを着こみ、キツネの仮面被っていた。

姿がばれないようにとのことらしい。

どの家がどの魔法使いを率いているかは重要情報であり、姿を隠すのは必須事項だと。

歩きながら聞いたが、ロイス毎晩、戦闘に明け暮れているらしい。

何と戦っているかは教えてもらえない。

「敵だ」の一言。

私達は夜の街に消えていく。



場所はとある路地裏。

ここで待機してほしいとロイスに言われた。

私は路地裏で木箱に座る。

雲に隠れながら、時折月明かりが路地を照らす。

最近、王都の夜には霧が出る。

私が雑貨屋で務めている頃にはこんな事はなかった。

夜が訪れると、霧は生きているように街を包みこんでいく。

この霧に包まれると、私は漠然と不安な気持ちになる。

心が騒ぎ、落ち着かない気持ちになる。

私はこの霧が苦手だ。

霧に包まれないように、月明かりが射している場所に移動する。

その場所には霧は追ってこない。

私はずっと霧を見つめていた。

霧も私を見つめている気がする。



数十分後、ロイスが一人の男を抱えて戻ってくる。

その男は肩と腹から血を流していた。

血がどくどくと流れ出ている。

仮面で顔は見えないが、男の息は荒い。


「回復を頼む」


ロイスに言われ、私は杖をかざし、意識を集中する。

「直れ~直れ~」と念じる。

すると、みるみる内に男の傷が回復していく。


「うぉ、本当に治った」

「言ったろ」

「黒薔薇のお嬢さん、ありがと」

「どういたしまして」


元気になった男と再び闇に消えていくロイス。

そんな事を3回ほど繰り返すと、私達は帰宅した。



◆◇◆



私の作った薬草は、異常な売り上げを誇っているらしい。

一部では中毒者がでているとのこと。

傷の回復目的で使うのではなく、薬草を食べて得られる幸福感目的で使う者が中毒になっているらしい。そういう者は、ひたすら薬草を食べているとのこと。

魔法の鍛錬をするうちに自分の魔法量が増えてきたのか、薬草を量産できる数が増えてきた。私は、徐々に生産量を増やしていった。

しかし、私しか特別な薬草を作る事ができないので、需要に見合った数を生産することはできない。そこで、店は値段を上げることにしたらしい。

しかし、貴族に中毒者が多いのか、売れ行きは変わらなかったとのこと。



朝と昼は貴族令嬢の訓練と魔法の訓練(薬草つくり含む)、夜は回復役として街を駆け抜けた。

代役の回復役として参加した私だったが、それから何度も呼ばれて、いつしか毎日呼ばれるようになっていた。

私は路地裏で待機し、ロイスがつれてくる人を治療する。

戦闘が激化しているのか、日に日に怪我人は増えていった。

私はただ治療する。

皆感謝し、すぐに戦線に復帰する。

いつしか私は、「黒薔薇の姫」と呼ばれていた。

王都を覆う霧はますます濃くなっていた。

私は月光に照らさせる場所で、霧とにらみ合っていた。

霧は私を誘うようにその範囲を広げていた。

まとわりつくような霧。

私はそれを追い払い、にらみつける。

明日も投稿予定です。


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