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2 セバスの稽古と覚醒

投稿です。

「アリスお嬢様。お食事をお持ちしました」

「ありがとうセバス」


私は執事のセバスが運んできたパンとミルクを食す。

セバスから聞いたのだが、ロイスの家は侯爵家らしい。

そのためか、雑貨家で私が食べていた物よりパンが美味しい。

食事の後に必ずデザートが出てくる。

私はリンゴを食べる。


「セバス、ロイスは今日もいないの?」

「はい、ロイス様は外出中になります」

「そう・・・」


ロイスは頻繁に外出する。

外出の内容な知らないが、忙しくしている。


「それで、今日もするの?」

「はい、食事が済み次第」


私は執事のセバスから、貴族令嬢としての教育を受けている。

雑貨屋のミリーは死んだのだ。

そして新しく与えられたのが、侯爵令嬢アリスの立場。

ロイス達が身分を用意してくれた。色々裏工作したらしい。

貴族令嬢としてはおかしくない振る舞いをセバスから学んでいる。


「違います。手はこうです。そして、足はこうします」


セバスの稽古は中々のスパルタだった。

めちゃくちゃ厳しい。

貴族令嬢が何年もかけてゆっくりと学んでいく事を、短縮して学ぶのだ。

密度の濃い授業が続く。

貴族の作法、なんとなくできるかと思っていたけど大間違いだった。

頭で情報として知る事と、実際に体を動かすことは全く別物。

セバスの説明を聞き、「大丈夫、大丈夫」と軽口を叩いていたら、「ならテストです」の一言。

そうして今にいたる。

何回もやり直す。


「アリスお嬢様。厳しいかもしれませんが必要なことですので」

「分かってるわ。でも、ちょっと厳しくない?」

「これでも優しい方ですよ。私、何人かのお嬢様を教育しましたが、昔はもっと厳しかったです」


貴族令嬢って大変なんだ・・・

高笑いしてるだけではないらしい。

そんな思いを抱きながらも私は体を動かす。



◇◆◇



ロイスが私の部屋にくる。

私は紅茶を飲みながらロイスを話を聞いている。

最近、あの火事の日のことを思い出すことがある。

あの日、意識が消える瞬間に「冬華」と呼ばれた気がする。

ロイスの話が確かであれば、私の名前を読んだのはロイスという事になる。

何故、ロイスが私の名前を知っているのか?


「最近、王城にはよくない噂が多い。現代の国王が高齢なためか、次の国王、つまり王子同士による争いが絶えない。王都の闇では多くの者が死んでいる。今の所、騎士団を抱える第三王子派が優勢だ。しかし、紅の姫含む第二王子派が勢力を伸ばしつつあり、間もなく戦力は拮抗する。彼らは使えるものは何でも味方につけている。よからぬチンピラやごろつきまで金で雇っている。この前の式典の様に、市民にも食料や金をばらまいている。今の社交界で最大の謎は紅の姫の資金源だが、それを舞踏会でしつこく聞いていた貴族はつい先日失踪した。それからは誰も彼女に面と向かってその事は聞かなくなった」


私が雑貨屋にいるときは、貴族の噂話は聞かなかった。

というのも、お客さんはほとんど市民だったからかもしれない。

でも、薬草が異様に売れていた。何か関係あるのかもしれない。


「そういえば、私の店で薬草がたくさん売れていたけどそれは関係あるの?」

「それは少しある。身の危険を感じた者がお守り代わりに買っていたのだろう。アリスの店には変な噂があったからな」

「噂って?」

「アリスの店の薬草は通常の物より効果が高いという話だ。それに、薬草を持っていると幸運になるとか。まぁ、どれもただの噂だ。何か特別な事をしていたのか?」


私は店での仕事を思い出す。

お父さんが仕入れてきた薬草を店に並べて売るだけ。

他にやっていたことと言えば、祈ることぐらいだ。

この薬草で多くの人が助かればいいなぁ~と。

その事を私はロイスに話した。


「なるほど。そうじゃないかと思っていた」


何やら頷いているロイス。


「どうしたの?」

「アリスには多分魔法の適性がある。できれば、魔法を身につけてもらいたい。この先、アリスも争いに巻き込まれる。避け続けるのは難しい。俺も全力で守るが、ずっとは無理だ。だから、力をつけてほしい」

「私、あまり運動が得意じゃないけど・・・」

「それは問題ない。アリスに会得してもらいたいのは魔法だから」

「本当に私に魔法が?」

「そう。今から適性判別と魔術回路の覚醒を行う。なるべく急いた方がいい」


私が魔法使い。

あのパレードの日から実は憧れていた。

手から炎とか出せたら色々便利だな~って。

ロイスは水晶玉を取り出し、机の上に置く。


「これを両手で触って」


私は言われた通り、両手を置く。


「目を閉じて、心を落ち着かせて」


ふぅ~を深呼吸をしながら心を空にする。

が、中々心が安定しない・

色々新しい話を聞いたせいか、次々に雑念が浮かんでくる。


「アリス。コツはお腹の中心をイメージするんだ。頭の辺りで考えていると雑念が消えない」


私はロイスの言葉通りに意識する。

雑念が少し消える。

でも完全じゃない。


「ごめんなさい。中々難しくて」

「奥の手を使う。少々痛いかもしれないけど、我慢してくれ」


私の手の上にロイスの手が重なる。

目をつぶっている私だけど、ロイスが近づいてきたことが分かる。

すーっと体の中に染み込んでくる匂いがする。

ロイスの手から体温が伝わってくる。


「今から、俺の魔力を流し込む。強制的にアリスの体の魔術回路を活性化させるから、ちょっと驚くと思う」

「分かったわ」

「始める」

「ええ」


次の瞬間、ロイスの手から温かい光の塊のようなものが流れ込んでくる。

それが瞬時に体中を循環する。

体内の細胞が活性化しているのか、体の中で何かが動き回る。

その振動が増大し、痛みにかわる。

唇を噛み、ぎゅっと水晶玉を掴む。


「もうすぐ終わる」


ロイスは私に手を重ねたまま、優しい声で告げる。

最初は右腕にしかなかった痛みが、左腕、お腹、右足と別の場所でも発生していく。

心臓がバクバクと脈を打ち、まるで長距離を走っているかのような動機。

痛みから水晶から手が離れそうになる。

それをロイスが抑える。


「もう少し」


私はただロイスの手に意識を集中した。

痛みから遠ざかるためにそうした。

そして、


「もう大丈夫だ」


ロイスの手が離れる。

私はとっさに椅子に座る。

立っているのがつらかった。

息を整える。


「アリス。やはり適正がある」


ロイスは白くかがやく水晶玉を見ている。

先程までは無色だった水晶玉は、今は白く光っている。


「店の薬草の効果が底上げされていたのは、君の魔力が知らない内に薬草に漏れ出ていたからだ」

「私、どんな魔法が使えるの?」


気になった。

パレードの様に、炎の虎や水の龍をだせるのだろうか?

私は水の子犬でもだしてペットにしてみようかと思っている。

世話が楽そうだ。


「基本は治癒魔法。それと光系統魔法。身を守るには適していると思う」

「パレードみたいな動物は作れるの?」

「それは・・・修練しだいだと思う。でも、具現化系は難しいから、できてもせいぜい小鳥ぐらいだと思う」


光、白い小鳥か・・・。

ペットならまずまずかも。


「今日は、しばらく疲れがとれないはずだ。早く休むと言い」

「うん」


今日も複数話投稿予定です。

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