表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂殺のメニーナ  作者: あけみん☆
第1章 動いていた針
4/14

第1章4話 神域

 いったいどのくらいの時間が通り抜けて行ったのだろうか?


 体育館で血を撒き散らしてからの記憶が薄い。最後に感じたのは意識がなくなったのではなく、別のどこかに移動させられたような感覚が発生した事だった。


 視界が戻ってくると体の表面からひんやりとした床の冷たさが流れ込んでくる。



 「ここはどこ?」


 痛みもなんも感じない体はさっき心臓を破裂した時間が夢であると主張しているようにも見えた。


 あたりを見回すと、白い円形の床に周りは自分の存在を主張する真っ赤に染まった薔薇が綺麗に並んでいて、まるで日の丸国旗の色を逆さまににした感じだ。


 その中央にまるで不純物でもあるこのように真ん中に立つ私は少し罪悪感を覚えるほど美しい光景だと理解する。



 「ここを、一部の人間は神域と呼んでいるね。ようこそ、僕の土地へ」


 明るい少年の声が紅白の空間を共鳴させる。


 あたりを見回しても誰の姿もない。無から湧き出てる声に向かって少し大きめな声で話しかてみた。


 「あなたの土地……。神域ってことは神みたいな奴?」

 「う~ん。まぁ、そうゆう存在で間違いはないと思うよ」

 「あぁ、てことは私死んだんだ」


 不思議と神を名乗る少年を目の前にしても驚きも敬意の欠片も心のどこにも姿を現さない。


 「あの~。僕神なんだけと……驚きとかないの?」

 「君が神らしくないっていうのとラノベとか読みあさる現代っ子にとってこうゆう出てき方ってあるあるだからだと思う」

 「はぁ、君の驚く顔を見るのは結構楽しみだったのに残念」

 「現実の方で神が降臨したらいろんな人が驚いてくれると思うよ」

 「それを使うにはエナをがっぽり持っていかれるんだよね。神って言っても世界の観測者みたいな奴だから」

 「……?」


 言っていることはよく分からなかったが神様にもエナがあるのかと思う。


 だがそれよりもまるで自分がここに来ることを知っていたかのように違和感や困惑といった感情が姿を現さない。


 むしろ、ここいると落ち着くとすら感じ始めていた。


 「まぁ、そんなことはどうでもいいや。では最初に君がした質問に戻ろうか」


 最初に質問した内容を危うく忘れるところだった。


 「最初って自分の生死?」

 「そう。君は死んでない。藍川雪菜から君を守ってあげようと思ってね」

 「どうやって?」


 姿の無い声に向かって問いかける。


 神の声が共鳴するかのように私の声も白と赤の空間の隅々に当たってはね返った。


 「簡単な事だよ。藍川雪菜をコロセ」


 今の言葉に同調するかのように神の世界が一変する。


 「えっと……それはどういう……」

 「そのうち分かるさ。それより君は随分とこの世界に来ても随分と冷静だよね」


 また同じような内容を言われているような気がしたがさっきも思った通り、この世界の存在を前から知っていて来たような感覚が起きるのは否定できなかった。


 「前にもここに来たような感覚が胸の中で動くというかなんというか」

 「なるほどね。てことはやっぱり君は人間ではないみたいだね」


 言葉が脳に伝わってもそれはでたらめと言う文字しか返ってこない。


 「何を言っているの?」

 「分からないのかい?ここに来れる人はそうそういないんだよ。それに君はいじめられている2年間、決して口以外の反撃しないで言う事きいていたよね。Mなの?」

 「ッ!違うし!!状況的に騒ぎになったら面倒なので静かにしているだけですー!」


 あまりにも突飛な意見に喋り方が無意識に変わってしまう。だが、お姉ちゃんに迷惑をかけさせたくないという環境上静かにしているのも本当の事だ。


 「はいはい。でもそれはいずれわかることだと思うよ。弥生さんは知ってたみたいだし」

 「お姉ちゃんが?」

 「うん。……おっと、時間だね。それじゃあ君の傷は僕が治しておいたから藍川さんの事分かってるよね?」


 話を戻して考え直すが、私には人を殺す度胸なんて持ち合わせていない。


 戦争が始まってから血を見ることが多くなった私たちにとって一滴でも流したくないものだ。だから、


 「私はいくらいじめられていても雪菜は殺さない。それに何であなたは雪菜を殺させたがるの?」

 「そんなの簡単な事さ。僕はさっきも言った通り現実世界に侵入するには大量のエナが必要だ。けど僕にはそんな量は今使いたくないんだよ」

 「それなら何で私にやらせようとするの?」

 「君が殺人を欲しているからかな」

 「--?」


 見えない声だけの神は訳の分からない言葉を並べているが不思議とそれらには強い意識のようなものが感じられて声が神という存在に輪郭を描いているようだった。


 首を傾けた私に神は笑った気がした。


 「それじゃあ、今度会うのは時間とサーバントたちが示してくれるだろう。それじゃあね」


 口が何か言おうとした気がした。


 しかし、その単語たちは零れ落ちる前に喉で消化されて体の感覚が眠りにつき始める。


 まるで、深海から見える一筋の光を見ているような孤独感に魂が囚われたような気がして……


 私の目の前には距離を置くクラスと雪菜の姿が存在していた。


***********************

 「なんで……?」


 最初に飛び込んできたのは雪菜の困惑した声だった。 


 雪菜の攻撃によって血をぶちまけた時点で心臓が破裂したまでは分からなくても死の臭いはこの空間にいる誰もが嗅いだと思う。


 先生もクラスの皆も化け物を見るような目で私を見たり逸らしたりだが、この状況で逃げないのは足が言うことを聞かなくなってしまったからだろうか?


 「なんで……?」


 雪菜がもう一回口にする。神域から戻ってから痛みは全く引いていたが言葉が出ない。


 「殺す……」


 それが最初に出た私の言葉だった。あれ……私なにを言ってるの?


 「かさね……あんた……」


 私はそんなことを思っていると雪菜がナイフを向けてくるが、その時、死を交えた戦いであることを人間の本能として感じ取る。


 「死ね!!!!かさねぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」


 氷の刃がさっきの倍の量と勢いで襲ってくる。


 背景のように現れる刃の数々は氷という壁で埋まるほどの量だ。


 「加速ッ!」


 急に来た攻撃に少し戸惑いがあったが本能的に持っていたナイフを握りしめ最大の集中力で体感速度を上げた。


 その時胃からどす黒い何かがこみあげてくる。


 腹黒さが体感できるようになるような感じのような胃酸が沸騰している感覚を味わうが消して悪い気持ではない。


 刃たちの攻撃範囲から外れたのを確認すると一回加速を閉じる。


 その瞬間氷の刃が一気に流れだし轟音が体育館を駆け巡る。


 「加速ッ!推定6倍速。体に異常なし」


 加速を外したことでさっき引っかかった罠魔法がないか確認して、もう一回淀んだ空間に入った。


 雪菜の体が遅く動いているのが分かる。彼女に魔法攻撃はほとんど通用しないだろう。


 雪菜の付近には罠魔法が大量に仕掛けられていて私の打った魔法にすぐに反応して氷の壁が現れると思う。


 「それなら物理攻撃……雪菜を殺す……」


 胃の中に現れた黒は既に私を支配していた。


 否、私の方から黒を取り入れていた。


 雪菜は私を殺そうとしている。なら、私も殺しにかかっていいじゃないか?そもそも最初に攻撃してきたのは雪菜であって自己保身という大義名分もある。


 「……ってことは私は何も悪くない?」


 誰もいない空間に問いかける。


 返事が返ってきた訳じゃないが口から単語一つが漏れだすと同時に殺人の躊躇いを一緒に吸い取ってくれて迷いが消える。


 「雪菜を殺しちゃえ!?!?!?!?!?!?!?!!!」


 大きく叫ぶと雪菜に一気に近づき、加速中の体で彼女に触って防護服を手で破く。


 それと同時に体感速度が相手と同じになり空気が流れ込んで加速が強制解除される。加速中に他人に触ったり物に触れると加速魔法は消えてしまうのだ。


 雪菜の顔に驚愕の色がぶちまかれる。


 「かさねッ!くっそ……」

 「あんたを殺すッ!!!!あぁ、これが本当の私だったんだ……神が言った通りだ~~~~」


 言葉が滝のようにドバドバ落ちてゆく。考えなしで言った単語がなぜか必要以上の力がある気がした。


 「神……。かさね、まさか神に干渉した!?」

 「今のあんたにそれが関係あるの……?事実だけど」


 流石は雪菜というべきか奇襲に近かった攻撃を防護服は破られたものの、一撃一撃を上手く反響させて魔法なしのナイフを交えた一騎打ちになっていた。


 雪菜からはまだ驚愕の表情が抜けていない。


 「ってことは、かさねが……でもなぜ!?」


 ナイフがぶつかるごとに火花が散る。


 「誰も到達できなかった神域に……何でてめぇが!?」


 火花が踊る。

 二人のテンポに先導されて花火を作っている。


 私の目にとってこれこそが見たかった絵なのかもしれないと内心でそうつぶやいた。口からは無意識に殺したいだの死ねだの言っている。


 その合間に聞こえてくる雪菜の声に応答する。


 「ってことは皆が屑なんだよ!あんたもバラバラにしてあげる」

 「ふざけないで!!これまで払った多くの犠牲を……かさねが何でバカにできんだよ!」

 「なにそれ?なんか一人で盛り上がってるけど私には関係ないし……あぁ、それより早く心臓……そう、あなたの心臓が欲しい……」

 「絶対にあんたを殺す!!死ねッ!」

 「それはこっちのセリフ!」


 一層攻撃速度が速くなる。私にとって今この空間には雪菜と私しかいないようなものだった。


 故に横槍の存在に気が付かなかった。


 気づいた時には毛糸ほどの、しかしその中に詰まっている異常なほどに強い電気のボールは既に腹部付近にあった。


 「クソッ!」


 私が叫び服に少し触る程度で回避した瞬間、左目に激痛が走り赤い鮮血が弧を描く。


 反撃しようと瞬間体の四肢全てが仕事を放棄したかのように動かなくなり、地面に倒れこむ。


 雪菜も同じようで倒れてが視線は殺気に満ちていた。


 頭を高速回転さて考えると、私はさっきの心臓破裂でいつの間にかに防護服が破れていて、雪菜の方は私が破ったので魔法に対する耐性が0だった。


 つまりこれは、電撃魔法の付属効果{麻痺}だ。なので、体の自由が奪われてしまったと判断する。


 てか、今の普通に受けてたら死んでたんですけど……。


 雪菜も同じ結論に達したようで辺りを見て横槍を打った人物を確認している。


 私も周りを見るため視界を変えると犯人が入って一気に吐き気が込み上げてきた。


 真っ赤なブレザーを身にまとい生徒会のみ許されたネクタイを付けたお姉ちゃんが雷のような目から出る視線が私の目をとらえる。


 「これ以上の行為は授業事態を破壊しかねるわ。貴方達の悪事はここまでよ」


 これだけ血が霧散する空間で唯一平常心を保っているお姉ちゃんは麻痺効果継続中の私と雪菜を縄で拘束しはじめた。






 お姉ちゃんの手が私に触れると胃が状況を考えずに胃酸を上に持ち上げてくる。それに耐える事も出来ず撒き散らした。


 しかし、お姉ちゃんは大丈夫だからねと囁いて私の頭を優しくゆっくり撫でていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ