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「で! 記憶喪失がどうってなんなの若葉?」
「えっとね……次元震動とかいうのに私達巻き込まれたらしくて、それで記憶が飛んだらしいの。私は事故前の記憶が無くって、ルカは殆どの事を憶えていないらしくて」
「本当かよ。母さんから聞いたことあるけど、記憶が無くなるほどの次元震動に巻き込まれてよく無事だったな」
「えっ、そうなの? もう若葉いつもいつも心配かけて」
「ごめんごめん。それでね今日から学校だし、記憶の手掛かりになるかなって思って一緒に連れてきたの」
「まぁ、それなら、シーちゃんに助けてもらえるかも」
「あっ、そう言えばそうだね。とりあえず授業が終わるまでブラブラしていてもらおうって思っていたんだけど」
「まぁ、立ち話もあれだし放課後また説明」
「そうだな。俺先に行くわ」
そう言ってカイは三人の手に、かまい棒という多方面に人気のお菓子を持たせて駆け去っていった。
若葉はネギトロ味、ロゼッタは焼きさんま味、ルカはアボカド味だった。
「なんなの、この変な味。食べられるの?」
わかばが手に持つそれをみて言った。
「あんな軽そうに言っているけど若葉のこと、すごく心配していたの。よかったね」
ロゼッタが封をちぎり、かまい棒焼きさんま味をバリバリ食べだす。
食べるのか。ルカが心の中でつっ込む。
「なんだかひと癖ありそうな人間ばかりだな」
不意にルカがそう言った。それは反論出来ないかも。若葉は心の中でそう思いながらも彼女から目をそらした。
校門を抜け高等部の校舎を目指す。
「じゃあ私は適当に時間を潰しながら学園内に居るよ。なにかあったら電子端末で連絡してくれ」
制服のポケットから電子端末を取り出しコツンと指で突いて、ルカは一人どこかに去って行った。
「なんだか、不思議な子ね。どこかあの人に似ているかも。不思議な縁ね」
そうルカはあの人に似ているロゼッタのよく知る彼女に。ロゼッタは横に立つ若葉を見る。ルカの後ろ姿を満足そうに見送っている。
「ロゼッタ?」
気にした若葉が問い掛ける。
「ううん、なんでもないよ。行こうか」
若葉はきっと気付いていない。これは自分の中にしまっておこう。そう思いロゼッタは教室に歩みを進める。横には、いつも通りの若葉が並ぶ。