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 楽器を叩く妖精達がたくさんいてオーケストラをしている。そんな喧騒の中、学生の姿が増えてきた。

 バカでかい門がわかば達の前方に見えてきた。その奥に広がる広大な敷地。


ここ茉莉美まつりび学園は高校、大学一貫の、言わば金持ちの学校である。


制服は男子が全身紺色の学ラン。女子が紺色のブレザーの上着に、下半身がチェックのスカートで一年が白黒ベース、二年が白青、三年が白赤と色分けされている。


全体的に規則が超緩い。わかばはこういうボンボンの金持ちの雰囲気は、非常に好きではないのだが、気の合う友達がたくさんいるので、文句はいえない。


「はぁ、春休みが終わって、もう学校始まっているよね。まぁ、いつもどおりの生活なのだろうけど」


 結局のところ、ちんたらやっていたので春休みが終わり、新学期が始まってしまっていた。    


今、若葉は高校二年生だ。

いつも通りの日常。またそれが始まるのだと、思いながらも少しわくわくしながら、絶えず左右に動く、メトロノームのようにリズム良く歩いていた。ルカは若葉のすぐ横をタイミングを合わせ歩いていた。


二人のすぐ横を気持ちのいい春の風とともに、女の子が小走りに通り過ぎていった、耳の辺りで白いリボンで二つに分かれた、ツインテールのきれいな艶のある黒髪が風になびく。


彼女は、止まって振り返り二つに分かれた髪を手ですくい、華奢な肩から少し控えめの胸にむかって、前に掛け直す


「おはよう若葉。いい朝だね」

 その姿は朝咲く真っ黒いアサガオのようだ。爽やかな笑顔で若葉に向かって挨拶をした。


「おはよっ。ロゼッタ」

おとなしそうだが、目に力のある、黒髪のツインテールの美少女が二人の前に立っていた。


 ロゼッタ・P・夕凪ゆうなぎ

彼女はわかばと同じ茉莉美学園の高校二年生で、同じクラスの子。

ロゼッタはすごく男に人気だ。隙が全然ないし、夕凪の人間なので告白する男どもは全然いない。


「若葉、もう大丈夫なの? 連絡もないし少し心配していたのに。なに学校サボっているのよ」


彼女のキレイなエメラルド色の瞳が二つ、若葉の目に向かって、ぶつかってくるかのように、ロゼッタの心配そうな顔が若葉を捉えていた。


「ごめんなさい、そんなに心配しているとは思ってなくて」

「はー、相変わらずねぇ。とにかく無事でよかったよね。若葉に何かあったら、きっとみんな発狂しちゃうよ」

小鳥のような口をしながら、微笑む彼女。


なんだか怖いことを口にする親友。おおげさだよ。若葉がそう思っているとルカが前にのめり出し二人を交互に見比べた。


「知り合いか?」

「そう言えば誰? この可愛い子」

 ルカに見つめられたロゼッタが若葉に問い掛ける。


その時また一人、わかばの気の合う仲間が後ろから走ってきて、彼女たちの前に現れた。


「よう、おはよう。って若葉のやつ、もう普通に生活しているのかよ。おれ頭の方がやばくなって、まだ入院していると思って毎日神様にお祈りしていたのに」


 手を重ね祈りのポーズをとって、座りこんでいる男。

彼は天川戒あまかわ かい

あらゆるとんでも技術を持ち、儲けまくっている、大企業天川グループの次男だ。


おぼっちゃんっぽくなくて、底抜けに明るいバカなやつ。若葉はそんな彼が気にいっていた。


 座り込んでいる戒ををロゼッタが右足を上げ軽く蹴りとばした。


「いてっ」

「あの、あんまりふざけないでね。怒るよ?」

 ロゼッタは笑いながら靴で戒の頭をぐりぐりする。


その瞬間、周りの登校している生徒たちにも、冷や汗が走る。

彼女は以前、戒が変質者のまねをして教室に入ってきた時、教室をまるで積み木のおもちゃを壊すかのように一瞬で破壊した。


 この二人は、すぐ漫才でもするような感覚で、そこら中の物を壊すのだった。


「冗談だよ、ごめん。しかしもういいのか? とりあえず、いつもどおりみたいだな。その横の子は誰だよ」


「そうそう、あんたが来て話がそれたけど誰なの?」

 戒とロゼッタが興味深く若葉に詰め寄る。


「ああ、ルカって言うの。私の家に居候している。私のこと命がけで助けてくれたんだけど記憶喪失なんだって」


「えっ、ちょっとストップ」

 ロゼッタの掛け声と共に学園の入り口で四人は足を止める。


「あの若葉が事故に遭って能力者の女の子に助けられて寝ているっていうのは医者の先生に聞いたんだけど……」


「そうそう、連絡受けて俺とロゼッタで病院に行ったんだ。そしたら例のいつもの先生に会って大丈夫そうだから帰ったんだよ」


「えっと、だからこの子が私を助けてくれたの」

 若葉はルカに手を向けて二人に紹介するように言った。


「だから何でその子が若葉の家に住んでいて、制服を着て登校しているの?」


「まぁ、成り行きみたいな? 命の恩人だし記憶喪失で大変みたいなの」


「はぁ、若葉はまた、ややこしいことに首を突っ込み中ってことね」


「次から次へ面白いように持ってくるよな」

 呆れたように戒とロゼッタが若葉を見つめる。


「まぁ、もう慣れっこよね。私、ロゼッタ・P・夕凪です。若葉を助けてくれてありがとう」

 ロゼッタがルカの手を取り両手でギュッと握りしめる。


「ああ、私の名前はルカ」

 なんだかとても不思議な感じのする子だ。P? ハーフか何かなのだろうか? そう思いながらもルカも自己紹介をする。


「俺は、天川戒だ。よろしくなルカさん」

「あ、ああ」

 もう一人の男。なんだかバカそうだ。類は友を呼ぶってやつなのか若葉に何となく似ている。そう思いながら二人を観察するルカ。


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