一人少女の恋物語
あぁー……なんでだろう。
なんでこんなにみんな騒いでいられるのだろう。
始業式。
クラス割が発表され、あるものは再び同じクラスになれることを喜び、またあるものはクラスを離れても壊れることのない友情を口にしている。
正直、私はそんなのどうでもよかった。
誰が同じクラスになっていようが、誰が私から離れていこうが、正直興味ない。
なぜなら私に友達がいないからである。
別に私はさみしくなんてない。
だって、ここにいるような低能な連中と一緒にされたくないし。
むしろこっちからお断り。
私は漫画とかラノベとかゲームとかで時間をつぶしてる時が一番幸せなのだ。
さて、席に着こう。
窓際の後ろ側の席。
あまり黒板の文字が読めなくなってしまうが……まぁなんとか読める範囲ないだろう。
さて、先生が来るまで適当に持ってきたラノベでも読んで時間を――――
ん――?
なによ…、隣?
なぜか男子が話しかけてきた。
あぁ…なるほど……、馬鹿正直にも隣だということで、私に挨拶に来たらしい。
正直喋ることなどないのだから別にいいと思うが、まぁいい。
「私の名前は、汐留芹菜」
とだけ伝えて、ラノベに目をもd……
―――何? 何読んでるかって?
ラノベだよラノベ。
ほら。こんなの別にどうでもいい本よ。
何で読んでるかって…そりゃ暇だからよ。
友達――?あぁ…このクラスにはいないわね。
……別にあんたのことなんか聞いてないし、仲間だねって、別にあんたと一緒になんてなりたくないし。
あ、先生が来た。
何なのよこいつ……面倒なやつね。
何で私の後を着いてくるの?
帰る方向が一緒?そんなの知らないわよ。
じゃあなんでこっちに寄ってくんのよ。
別のクラスの友達と一緒に帰ればいいじゃん。
え?遊ぼうって……。
なんで私なんかと。
友達になった証って……別に私、あんたと友達になった覚えなんてないし。
ゲームセンターなんて入ったことないけど…………。
ちょっと待ってよ。だからなんで私が………ちょっと!!
二度とあんたなんかのペースに乗せられるか!!
ん?何?
ラノベが気になる?
特に意味なんてないわよ。
普通の小説よりも読みやすいから読んでるだけだし。
何?読みたい?嫌だよ、私の暇つぶしの方法が減っちゃうじゃん。
…………分かったわよ。それで返すまで私に関わらないって約束するなら別にいいわよ。
ほら、ちょうど第一章持ってるからこれ貸してあげるわよ。
おもしろかった?次章も貸してほしい?
今私が読んでるのがその次章だから、ちょっと待ってて。
…………そんな私の方をずっと見てたって、早く見れるわけじゃないんだから。
まだかーって言われたって、そんなに早く読めるわけじゃない。
明日まで待てって言ったら、「分かった。あしたなっ」
って笑ったけど……何がそんなにおかしかったのだろうか。
「おおっ、ありがとうな!」
あいつに昨日言っていたラノベを渡したら、笑顔で言ってきた。
別にあんたのためとか、そういうわけじゃないから。
とはいえ、もうこれで今日一日私に関わることはないわけだ。
それならまぁいい。
放課後になってもう返してきた。
次のも読みたいって言われても、まだ2冊しか買ってないから……
えっ。一緒に買いに行こう?
……一人で買いにいけばいいじゃない。
なんだったらまた貸してあげるから――
二人で読むんだからって……、別にまたがしとかしなくても……。
――――わかったわよ。行けばいいんでしょ行けば。
なんで私が男なんかと一緒に本屋に行かなければならないのだ。
本屋ぐらい別に一人で行けばいいじゃないか。
とりあえずラノベは買い、帰ることにしよう。
ついでにどこか寄ってこうって……、もう好きにして。
着いたのは公園。
ブランコに乗ろうって……小学生じゃないんだから。
ものすごい笑顔でブランコをこいでるのを見て、なんとなく懐かしい気分になってると、
「ほら。お前も笑顔の方がかわいいよ」
―――別に笑ってたわけじゃないし。
というか、そういうセリフはもっと違う女の子にしてあげてほしい。
私ごときにそんな言葉を使うな。
「そんなことねーよ。お前だってかわいいじゃん」
そんなことない。私はほかの子とは違う。
かわいいなんて言葉は、私には似合わない。
「そんなこと言うなよ」
そんなことって何よ。あんたなんかに私の何が分かるっていうんだ。
「………ちょっとこっち来い」
私の腕を無理やりつかむ。
そんなに強引につかんだら、はがれないじゃないか。
大きな声出して助けを求めてやろうか……。
「お前だって、かわいいってことを教えてやる!」
―――――くだらない証明……。どうせできっこないんだし、やればいいじゃん。
「ほら。この服着て」
彼の選んだ服を持って、なぜか更衣室に入った。
気配からして、更衣室の目の前で彼は待機している。
たぶん私が着替えるまでそこに居座るつもりなのだ。
持久戦に持ち込むのもありだが……、めんどうだから着よう。
「ほら。やっぱり似合うじゃん」
とか、別にそんなこと言われたって、こんなの私は恥ずかしくて着れないし。
別に服装になんか特にこだわりはないし。
大体彼と会うのは学校だけなんだから、別に私服にまで口出しをしなくても。
「今度遊ぼう?」そんなこと言われたって、私は暇だから別にいいけど、休日くらいは家でごろごr……
ちょっと!話を聞きなさいよ。カラオケなんて!もう!!
結局来ましたよ。そりゃ、休日だから暇だもん。
「来てくれたんだ。ありがとな」
って、来なかったらあんたどうするつもりだったのよ。
まぁいい。適当に歌ったら帰ろう。
意外と上手いのね、あんた。
それより、デュエット歌おうって…?聞く人もいないのに歌いあってどうすんの?
いいじゃん二人で歌えばって――――もうすでに入れるし……。
分かったわよ、歌えばいいんでしょ、歌えば―――――
「楽しかったなー」
って、ま、まぁね。おかげで声が枯れた。
「また行こうぜ」
って、こんな強引なやり方じゃなけりゃね。
今度はこっちが行きたくなったときにね。
「おうっ。じゃあ楽しみに待ってるぜ」
べ、別にまってもらわなくたっていいわよ。
―――なんであいつは、あんなに楽しそうなんだろう―――
次の日、私たちの仲はクラス中に広まってた。
クラスメイトの一人が、私たちのことを目撃したらしい。
なぜかキスだの少し話が元よりも大きくなっていた気がするが、別にこれはデートでもないし、付き合ってない。
彼に証明してもらおうと思ったのだが―――
「休み…?」
なんとあいつ、休みやがったのだ。
遊びには行ったくせに学校を休むなんて学生として本末転倒だが、そのあたりよりも、あいつの体調を心配する私がいた。
もともと私は一人だったのに、一人でいても何も不安じゃなかったのに……。
なんでこんなに不安になるのよ。
なんでこんなに、居心地が悪いのよ。
授業が終わると、急いで帰宅し、私服に着替えてからあいつの家へ電話した。
なぜか電話番号を昨日交換させられたので知っている。
「あ、おう……大丈夫だよ。熱が出ただけだ」
特に大事ではなさそうだから安心した。
いや。私とカラオケに行ったせいで病気になったのなら、私にも責任がなくはないかなと思っただけだが。
「心配してくれてありがとうな」
って、そんなこと言われなくたって……あんたがいないと、私も昨日買ったラノベが読めないじゃん。
「ははっ。今日一日で読んだから、家に来て」
だそうだ。おう行く……と、思わず言いそうになってしまった。
断ろうか――と思ったが――あいつの顔を今日一日見てないんだと思った。
最近ずっとあいつが絡んでくるから忘れてたけど。
―――――仕方ないわね。行ってあげるわよ。
ん。お見舞いって何を持っていけばいいかわからなかったから、とりあえずゼリーとポ○リは買ってきてあげた。
「助かるよ」
なんて笑ってくれたけど、いつものはじけるような笑顔ではなかった。
―――って、何さみしがってんの、私。
ラノベも私に渡してくれた。
あまり長居したら体に毒だろうから、そろそろおいとm―――
「もう少しいてくれよ」
―――――なんでそんなさみしそうな顔するの。
どうでもいい適当な話だけをし続けて一時間ほど過ぎると。
「ごめんな、お前をさみしい思いさせて」
なんてこと言いやがった。いや。別に私は何もさみしい思いなんか―――――
「俺……さ。お前のことを一目で好きになった」
なんてこともさらっと告白してきた。
「でも……、お前、ガードが堅いっていうか……、あまり他人に接しないっていうか……」
わかってるわよ。近寄りがたいってことでしょ。自分が一番、そんなことわかってるわよ。
「でも……。お前……すごく俺に優しいんだよな」
そりゃ……あんたしか話す相手なんていないし。
というか……私、そんなに優しくしてなんていないと思うけど。
「今日だってこんな風に……いろいろ用意してくれてるから」
そりゃ…他人の家に行くのに手ぶらなんてちょっと嫌だっただけで。
別にあんたのことを思ってるわけじゃ……。
「好き……だよ。お前のこと……」
……………ば、馬鹿なこと言ってないで、早く風邪治しなさいよ。
…………………さみしいから。
次の日。
普通に元気になったらしく、学校にも来た。
私の看病のおかげだと言って、お礼を言われた。
でも……昨日の言葉を思い出して、私は気恥ずかしくなった。
だ、だって……あれって………こ、ここ、告白……してくれたんだよね。
「昨日は熱が出てかっこ悪かったからもう一回言う。お前のことが好きだ。付き合ってほしい」
……………好き………。こんなに、生意気なことばかり言ってて、友達も少ない根暗な私のことが好き………。
私の顔はみるみる赤くなるのが分かる。だって、とても熱いから。
私は、ゆっくりと縦に首を振った。
心臓が爆発しそうだった。
「本当……?やったぁ!」
そのあと、彼も笑顔になった。
よほどうれしかったのだろう。私のことをぎゅっと、抱きしめたのだ。
ちょっと苦しかったけど……私もうれしかった。
「大好きだ」
私も………好き。
その後、私の彼氏となったあいつと同じ大学に行った。
そして私はいつの間にか、お嫁さんになっていた―――――
キャラクター
汐留 芹菜(主人公)
田中 治孝