対面
その事があって以来。私は林原さんに対して過敏になっていた。
林原と云う言葉を訊くとつい、その声のする方へ向いてしまう。
でも、幸か不幸かあれ以来会って居ない。
そして、そのまま何時しか仕事の忙しさもあって、忘れてしまっていた。
季節はあっという間に秋になり
うわー! 今日もいっぱい。
ステージの袖から見ると、溢れんばかりのお客さんで、特設会場が今にも壊れてしまいそうだ。
「よし!! 今日も頑張るぞ!」
私は自分自身に気合いを入れた。
「みんなー! 元気ー!」
私はステージへと上がった。
あっという間にコンサートは終わってしまった。
「今日のコンサートもステキだったわ」
「ありがとうございます」
「今後のスケジュールのことなんだけど。これからもっと、コンサートにテレビのお仕事に忙しくなるけど、学校は大丈夫なの?」
「大丈夫です!」
「貴女はまだ学生でしょ? 中学生? 高校生? ちゃんと聴いていなかったけど」
「こ、高校生です!」
そう云われても困ってしまう。実際はおじさんだし。
「言葉に詰まったわね、本当は中学を出て高校行かずに、働いているんじゃないの?」
この人鋭い、実際はチョト違うけど。
「やはり図星ね。それならそれでいいのよ。別に悪い事をしている訳じゃないし。まあ家庭の事情もあるしね」
私が返事をしないでいると、そう思い込んだらしく、でも、その方がいいかもしれない。アイドルもできるし、思いきり。結果はおおらいかな。
そう云われたとうり、コンサートにテレビの収録にと忙しくなってきた。
そして、ある番組での事。
出演者の中に林原の文字を見つけたのです。
と、いう事は今日は林原さんとお仕事をしないといけないのか。ちょっと気が重い。
でも、挨拶にはいかないと、礼儀として。
芸能界の重鎮と訊いたことがある。
私は楽屋へ向かう足がとても重かった。何を云われるのかと思うと、おのずと遅くなる。
でもドアの前までに来た。
ノックをした。
中から声が返ってきた。