困惑
⋯⋯⋯カヤ⋯⋯カヤ⋯⋯。
⋯⋯⋯うん⋯⋯。
「⋯⋯カヤ! ⋯⋯起きて⋯⋯」
⋯⋯だれ?⋯⋯。
⋯⋯私、⋯誰かに呼ばれてる⋯⋯。
「カヤ、⋯カヤ! ⋯⋯起きて!」
「うん。誰? この声、
ラサラ?
キャッ!」
私が目を醒ますと、腰に手をあて、怒った顔で私の目の前にラサラが居た。
「もう、驚かせないでよね」
「『もう、驚かせないでよね』 じゃないわよ! これはいったい、どういうこと!?」
そう云いながら両手を広げ、これよこれと云わんばかりに、グルっと回った。
「どういうことと、云われても⋯⋯、よく分からないの」
「よく分からないのって、ここで、いったい何があったの?」
ラサラはさっきと違って優しく云ってきた。
「林原さんに1人で来るようにと云われて、ここへ来たの。そしたら、いきなり長い身長よりも長い杖を出して、攻撃してきたの。私、死ぬかと想った」
「やっぱり林原さんは、攻撃魔法が使えたのね」
ラサラは納得した表情で、云った。
「それと、あとね私、攻撃魔法が使えるようになったの」
「なんと、それホント? 貴方には攻撃魔法は教えてないのに」
ラサラは驚いた顔をして云った。
「私このままやられてしまうのはイヤだから、攻撃魔法を使いたいと、助かりたいと、想って変身をしたの。そしたら使えるようになったの」
「そう、貴方も使えるようになってしまったのね。前にも云ったと想うけど、これでもう後戻りは出来ないわよ。たとへ、魔法の力を返したとしても」
「それって、どういうこと?」
「いづれ分かるわ」
「何時ものラサラじゃない」
「そうね」
ラサラは真剣な顔をしていた。
「これで、アイドルをして、魔法を、返して終わりという訳にはいかなくなったのよ。今後は覚悟を決めて生きていったほうが良くてよ。貴方の周りに魔法使いが現れるから」
私にはラサラの云っいる意味が全く分からなかった。魔法使いが現れるってどういう事。私は魔法の力を返して終わりだと想っていたから、本来はそれでお終いの訳だから。
私には、全く自覚はないけど、知っては行けない事を知ってしまったのかも、しれない。
今想えば、何で林原さんは私に攻撃してきたのかな? あの時、林原さんと戦っていた。いえ、一方的に攻撃を受けていた。私は攻撃魔法が使えないから。魔法で変身しか出来ないのに攻撃して来る理由はあるのかしら。その前に私は魔法使いではない。魔法を借りているだけ、なのだから。攻撃して来る理由を聴いたら『おじさんだから』と、云われた。今考えると本当におじさんだからなのかもしれない。そこしか今は考えられない。
その後、自分でも攻撃魔法か使えるようになった。魔法で変身する事しか出来ないのに攻撃魔法を使えるようになるのもおかしな話しだ。でも、戦おうと想っても圧倒的な力の差、使い慣れている人と初めて使う人の差は、歴然としていた。それゆえに全く私の魔法は利かなかった。
これでお終いねと、言う頃にはわたしの意識は朦朧としていた。そして、そのまま意識を失った。
意識が戻ったときには、自分の後ろの木々は吹き飛ばされたかのように、遠く彼方まで一直線に倒れていた。そして目の前に居たはずの林原さんが居ない。そして、何より私は生きている。
そう、生きているのだ。何で生きてるの。確かにこの状況下で林原さんの攻撃を受けていないはずがない、まともに受けたはず。
そう云えば、意識が遠くなっていくなか、女性の声が訊こえた。それは林原さんではない、今までで訊いたことのない声。もしかして、誰かが助けにきてくれたのかな。でも、それは考えにくい。ラサラの声でもなかったし。じゃあ一体誰?
あの声は、誰なのかしら。




