絶体絶命
「何処までいくの?」
林原さんは俺の云うことは無しして、森の奥へと奥へと、入っていった。
「さてと、ここら辺で良いかしら。やっと、二人きりになれたわね。私と貴女の妖精もいないし」
「こんな所まで連れてきて、私をどうするきなの?」
「何を云っているのかしら、決まっているでしょ。貴女には消えてもらうのよ」
『今度二人で逢いましょう。妖精を連れてこないでね。独りで来るように』と、云われた時点で分かってはいたが、恐れていた事が現実になった。
「貴方は攻撃魔法を使えない。それで間違いはないわね!」
林原さんは勝ち誇ったような笑みをみせた。
「そ、それは………」
俺は言葉に詰まった。
「間違いはなさそうね。」
林原さんは身長と同じ位の大きな杖を出して、それを私に突きつけた。
「これで、貴方もおしまいね」
なんで、攻撃魔法ができる人が、いるのよ。
私は出来ないのに。
それを知っていてまた何で攻撃を仕掛けてくるの? 分からないわ。
だいたい私は魔法を使ってアイドルに成って、一年の契約だから、それでで終わるのに。なのに何で攻撃を仕掛けてくるの?
「どうして、攻撃をしてくるの? わ、私は………理由は何なのよ」
「それは、貴方がオジサンだから」
「そんなの、理由になってない。オジサンだって、良いでしょ」
「あらそうかしら、オジサンは魔法少女になってはいけないのよ。決まりがあるの」
「そんなの、聴いた事がないわ!」
でも、どうしたら良い。このままでは本当にやられてしまう。
そうだ! もしかしたら、攻撃魔法を使えるかもしれない。
ある考えが浮かんだ。
゛タクト゛
魔法の杖をだした。
「何をするきなの?」
林原さんは不思議な顔でみていた。
゛メタモリューション゛
「変身? どういうこと。変身しても変わらないみたいだけど。何がしたいのかしら」
頭に浮かんだ言葉を云ってみた。
「フレイブ」
杖の先端から炎の球が相手めがけて飛んでいった。
「あら、攻撃できるじゃない。貴方も気付いたようね、どうすれば良いのか。気がつけば、意外と簡単な事なのよ。ただそれに気付かないだけ。多くの魔法使いに成った人が、それに気がつかないまま、終わってしまうの。もったいないわね」
本当に気が付けば単純で簡単な事だ。こうなりたいと、強く想い変身すれば良いだけのこと。もっともっと強く想えば、強くなれるのかな? でも、期限が迫っている期限が切れれば元のおじさんになる、そんなのは嫌だ。このまま魔法少女であり続けたい。だから余計に、ここで終わりにはしたくはない。ちゃんと終わりにしたい。
「これで貴方もおしまいね」
林原さんが自分に杖を突きつけた。杖の先に力が溜まっていくのがわかる。
林原さんが呪文を云うと私目がけて飛んできた。
逃げることは出来なかった。これでおしまいだと思った。
意識が遠くなっていくなか、『この程度の魔法で…』 と、聴こえたような気がした。




