本当と嘘
俺はどう答えればよいのだ、天木部長と編集長に。
本当の事を云っても、信じてもらえるか、かと云って嘘を云うのも………。どうしたものか。
俺はどうして良いのか、どうするべきなのか、検討も付かない。
悶々とした日々が数日続いた。
今日はカヤのコンサート。
行く気がしない、と云うか釈然としない。普段は何をしているのかと云う事に関しては、仕事上は終わった。でも、本当にこれで良いのか? 良かったのか。結末が予想だにしなかったことだけに、困惑している。
見てしまった以上この後どうするか。チケットは買って持っている。でも、まさか男だなんて、それもオジサン。
結局俺は見ずに帰った。
帰る途中一人の女性が自分の方を見ていた。
良く見ると女優ほ林原さんだった。
近くまで行くと。
「貴方、カナの事をかぎ回っている見たいだけど、まあ、その様子だと、秘密を知ってしまったみたいね。なので私と一緒に来てもらおうかしら」
「?……」
何を云っているのかな、この人は。
「私の云っている事が分からないみたいね。当然ね。逆の立場だったら私もわからないわ。でも、見てしまったからには、一緒に来てもらいましょう」
来てもらいましょうと云われて、ハイ行きますよとは、ならない。
カヤの事を知っているのなら、この人も魔法使い、まさか。えっ! 何? その大きな杖は。
「そんなにも、不安そうな顔をしても、無駄よ見てしまったからには避けてはとうれないのよ」
林原さんは大きな杖を、俺に突きつけた。そして………。
俺は意識を失った。
目を覚ますと、カヤのコンサート会場に居た。
あっ! そうか、カヤの事を調べないと………。
仕事をしないと。




