第参話 天然タラシな四男坊
「千桜様ですね、どうぞ中へお入りください」
生真面目さを漂わせる対応に、凪もにこやかに返す。
「ご丁寧にありがとうございます」
軽く礼をすると、門番は照れたように笑う。
「いえいえ、これが我らの仕事ですから。さぁ中へ、ここは少々冷えます」
こんな門番は本当に話していて気持ちがいい。凪は機嫌よく笑った。
「それでは、貴方も体調にはお気をつけください」
「ありがとうございます!」
キッチリと90度に腰を折る門番を見て、さすがに苦笑する。
----------本当に生真面目な人なんだろうなぁ。
門番に言われたとおり真っ直ぐに進むと、女中の1人であろう着物を着た女が凪を見て一礼した。
凪も足を止めて礼を返す。そして驚いた顔をしている女中に近づいた。
「どうかされましたか?」
「い、いえ申し訳ございません。千桜凪様でよろしいでしょうか?」
「はい、千桜家四男の凪と申します。今回は招待いただきありがとうございます」
凪の言葉に女中は必死に頭を横に振る。
「いいえっ!そんな滅相もない、こんなしがない使用人などに頭を下げないで下さい」
本当に慌てているのか、顔の前で手を振る。凪はその反応に思わず笑みが零れた。
「使用人でも人は人。自分をもてなしてくれた人に感謝するのは最低限の礼儀です」
ですが・・・とまだ納得のいかなそうな顔をしている女中に優しく微笑みかける。
「貴女はこの仕事に誇りを持っているのでしょう?ならばしがない使用人などと自分を卑下なさらないでください。貴女は自分の仕事をやり遂げている立派な人だ」
凪の言葉に目を見開いた女中は、その後頬を染めた。照れたように顔を隠しながら凪たちの先頭を歩く。
----------天然タラシ・・・凪様は天然すぎる。
桐葉は、困ったように額に手を当てた。きっと今の会話であの女中も凪に惚れただろう。凪はそういう人だった。あまりにも真っ直ぐに思いを伝える。そのため、女に惚れられやすい。
まぁ、ここは見合いの場。逆にその方がいいのかもしれないが。
これから先に起こりそうなことを想像して、桐葉はまた溜息をついた。
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