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死神の鎮魂歌  作者: 雨歌
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二律背反 side:アカガネ



俺達は『欠けて』いる。

きっとこれは『喪失感』と言うのだろう。


俺達が存在し続ける以上、この感覚は消えないのだろう。

『何か』が『無い』という、心に穴が開いたような感覚は……。


片割れである『弟』には、『理性』という物が欠けているのかも知れない。

今の主人に命じられ、複数の人間と共にやって来た屋敷。

俺達を見、驚きながらも抵抗してくる人間。


人間が、人間を殺し合う。

俺達はその中で『悪』と判じた『魂』を狩っていく。

殺し合った人間は、無残な死体と化していく。

それを、実に楽しそうに『壊して』いく『弟』……。


「…………」

「どうしたの?」


良くは分からない。

だが、何故か止めなければと思った。


「……もう、止めておけ」

「……?」

「そいつは、もう動かない」


命を『狩られ』、物言わぬ死体と成り果てた人間。

それを壊し続ける『弟』。


「どうせ、埋めてくれるような相手もいないんでしょ? なら……」

「…………」


何故かは分からない。

だが、何かが違う気がした。


俺達は『欠けて』いる。

俺も、この片割れも……。

片割れはよく笑い、泣き、怒り、慈愛の心すら持っている。

俺にはその全てが欠けている。


誰よりも優しく、誰よりもどこか壊れている……。

それが、この『弟』


「…………」


掴んでいた手から力が抜ける。

俺は『弟』の手を離す。


「ねぇ……、僕は『壊れてる』のかな……?」


少し気落ちしたように『弟』が言う。

恐らく、コイツも何か思う事があったのだろう。


「……分からない」


そう、分からない。

『弟』が『壊れて』いるのだとしたら、俺だって『壊れて』いる。

だが……。


「分からないが……、それを補い合う為に、俺達はいるんだろう?」


…………。

あまり似合わない台詞を言ってしまった。


「行くぞ」


そう言って『弟』に背を向ける。


俺達は互いに、足りない『何か』を補い合っている。

それで自分の『何か』が埋まる訳ではないが……。

共にいると心が満たされるような……、そんな気がする。


『弟』もそう思っているのかは分からない。

だが、依存しあう事でしか俺達は存在できない。

それが俺達と言う『存在』……。




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