1/6
プロローグ
震える足で立ち上がる。
……敵う筈がないのに。
勝てる筈がないのに。
俺の周囲には、俺を『兄』と慕ったヤツと、俺を愛してくれた人が横たわっている。
彼等の為に、俺は立ち上がったのだろうか……? それとも自分の恨みを晴らす為……?
振り返った男は、ぎらつく目で俺を睨んでいる。
手には日の光に照らされた、銀の刃物。
ついてる血は俺のだろうか、アイツのだろうか、それともあの人のだろうか……。
訳の分からない事を叫びながら男は俺に斬りかかってくる。
迎え撃つように、俺も震える足に鞭打って男に飛びかかる。
……それから、何も分からなくなった。