なんて恋したんだろ
ドリームズカムトゥルーの同名の曲の歌詞を元に書いてみました。
歌詞の言葉から浮かんでくる情景はこんな感じなのですが、いかがでしょうか。
なんて恋したんだろ(ドリームズ・カム・トゥルー)
「おうどん、できたよ」
あたしは、精一杯明るい声でそう言った。
「うん、サンキュ」
あなたは、いつもと同じように優しく、笑ってそう言ってくれた。
「いただきます」
やっぱりいつもと同じように、あなたはお箸を両手で挟んで持って、軽く頭を下げてそう言った。あたしも、いつもと同じように、こう言った。
「どうぞ」
ズルズル……ズズッ……ふーっ、ふーっ……
あなたは、何も言わずにおうどんをすすり続けた。
あたしも一緒に食べだした。途中で、なんかちょっと違う音が混じりだしたのに気がついた。
ちらっ、とあなたの顔を見たら、あなたの瞳から涙が……
あなたは何も言わなかったけれども、涙を流し続けていた。
ずっとずっと、何も言わないで、ただ、おうどんを食べていた。
あたしは、あなたのその思いやりが嬉しくって、何も言えなくなった。
あたしもおうどんを食べ続けたが、やっぱり涙が溢れてきた。
ずるっ、フー、フー……
あたしも、おうどんをすすりながら涙を流していた。
ちらっ、とあなたがあたしの顔を見たのに気がついた。
でも、何を言えばいいのか分からなかったし、気持ちだけがいっぱいいっぱいになって、何も言うことができなくて、ただ涙を流し続けるしかなかった。
しばらく経って、あなたはどんぶりを持ち上げ、最後の一滴まで飲み干した。
そして、いつものように、頭を下げて
「ごちそうさまでした」
と涙声で言った。
あたしもやっぱり、涙をこらえるように
「うん」
とひとこと言うのが精一杯だった。
……あの日のことは今でも……昨日のことのように、いや、ついさっきあったことのように思い出せる。
おうどんを食べておなかがいっぱいになったときのあなたの顔。
あなたの目に光る涙の粒。
おうどんを食べるまでに二人で話しあったいろんなこと……
あの日からしばらくあたしは、抜け殻のように毎日ぼーっとして暮らしていた。
いかにあたしの心の中のあなたの比率が大きかったかってことに、やっと気がついた。
あたしのそばからあなたがいなくなるってことの重大さに、気がつけなかったんだね、あのときは。
精一杯、あなたのことを好きになって、そしてあなただけが、あたしの全てだったんだ。毎日毎日。
そんなに好きだったのに、どうして別れちゃったんだろう……
どうして、たったひとことが言えなかったんだろう……
あたしがこの世で一番好きで、そして一番仲良しの友だちだったあなたを……
……でも、きっと、あなたのことはこれからもずっと忘れない。
きっときっと……。