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20/25

15 サタンの旅支度

「サタン様、次はどちらへ向かわれますか?」


ヨルカが俺に尋ねる。


「とりあえず、ゾイルの里に向かうよ。俺も武器が欲しいしな」


魔力弾と呪文で、大抵の敵ならどうにかできるようにはなってきた。


けれど、やはり近接用の武器は欲しい。


さすがに至近距離で魔法をぶっ放すわけにもいかないし、魔力が尽きかけた時でも、武器さえあればどうにかなる。


それに、武器を持って戦うほうが単純にかっこいい。


どんな武器にするかは、まだ決めていない。


ただ、変にクセの強いものより、使いやすく素直な武器がいいとは思っている。


「わかりました。すぐに用意しますので、少々お時間をください」


そう言うと、ヨルカはそそくさと自分の部屋へ引っこんでいった。


これまで単独行動、それも隠密のような仕事ばかりだったらしいから、誰かと一緒に旅をするのは今回が初めてなのだろう。


そのせいか、どこか少し張り切っているようにも見えた。


……余計なものまで持ってこなければいいんだけどな。


そんなことを考えつつ、俺も出発の準備を整えることにした。


「ところで、ゾイル。ここからその里まではどれくらいなんだ?」


「だいたい、歩いて三日ほどの場所にあります」


歩いて三日なら、距離にして九十キロほどか。


「そうか。なら、荷物はそんなにいらないな」


それほど遠くないとわかり、身軽な装備で行くことにした。


今や数日程度の移動であれば、食料や水分の補給も必要ない体になっていた。


とはいえ、うまい料理を求める気持ちはまったく別である。


「ところで、サタン様。ここ数日のうちに、どこか体つきが変わられたように見えるのですが?」


ゾイルは足先から頭まで、俺の姿をじっくり眺めた。


「筋肉がついて、ずいぶんたくましくなられたようにお見受けします。それに歩き方も、体幹に芯が通ったようにしっかりしていて……まるで武術の達人のようです」


「い、いや、まさか~。何も変わってないヨ?」


ぎくり、とした。


ゾイルのやつ、なんて観察眼だ。


さすが狩人というべきか。


思わず声が上ずってしまったが、気づかれていないことを祈るしかない。


「そうですか? ……私には、この村に来る前よりも妙にがっしりされたように見えるのですが」


「いやいや、きっと気のせいだって。そうに違いない。あ、もしかしたら戦いで鍛えられたのかもしれないな~」


俺はぎこちない笑みを浮かべながら答える。


「いや、サタン様は先ほどの戦いで、ほとんど動いておられませんでしたよね?」


そうだった。


俺はさっきの戦いで、ほとんど動いていない。


カシラの攻撃も、魔力をまとった体で受けただけだ。


「うっ……! じゃ、じゃああれだ。道の柵を作るの、手伝ってたんだよ!」


「私も手伝っておりましたが、サタン様のお姿は見かけなかったような……。何か、隠していませんか?」


ゾイルは俺の目をのぞき込むように、すっと顔を寄せてきた。


「そりゃあ、少しくらい秘密はあるさ。隠れて筋トレしてたとか」


「……そうですか。まあ、そういうことにしておきましょう」


ゾイルは、それ以上追及してこなかった。


俺にどうしても隠しておきたいことがあるのだと察したのだろう。


やはり、こやつは信頼できる。


できる大人の対応というやつだ。


「では、私も準備してきます。また門の前で」


そう言って、ゾイルは家を出ていった。


「危なかった~……」


誰もいなくなった部屋で、俺はぽつりとつぶやく。


実際、俺自身も自分の肉体の変化には気づいていた。


イルカが毎日うまい料理を作ってくれるせいで、魔力がどんどん成長している。


それに伴って、背中の三対六枚の羽も少しずつ大きくなっていた。


そろそろ服を新調しないと、羽が服を突き破りそうだ。


……イルカに作ってもらうか。


それに、今日食ったユニコーンとゴルド族のカシラの魂は大きかった。


肉体の格が、一気に跳ね上がったのだ。


筋肉がつき、体幹は安定し、どんな体勢からでも即座に反撃へ移れる、しなやかな体を手に入れていた。


「でも、そろそろこの羽も隠しきれなくなるよな~……」


なるべく折りたたんではいる。


だが、それでも三対六枚もあれば、どうしたってシルエットは変わってくる。


頭を抱える俺に、ルシファーが頭の中から声をかけてきた。


(何も隠す必要などあるまい。われの美しい羽ではないか。皆に見せつけてやればよい)


「いや、ワ族やゴルド族の話を聞いただろ? みんなお前を探してるんだよ」


(聞いたとも。皆、われを求め、加護を授かりたいのであろう? ならばそうしてやるのが強き者のさだめよ。皆、大いに敬えばよい)


「いや、なんかこう……面倒ごとに巻き込まれる気しかしないんだよな。それに、まだ俺自身そんなに強くないし」


(われがついておるから大丈夫なのだ)


いや、どれだけ自分に自信があるんだ、こいつ。


今の俺には、上位魔人や上位魔獣と正面からやり合える自信なんてない。


それくらい、上位の連中とは力の隔たりがある。


おそらく下位魔人がそれぞれ高性能な武器を持ち、数千単位で挑んでようやく互角。


たった一人を相手に、一個師団級の兵力が必要になるほどだ。


しかも、それは両者とも魔法を使わない前提での話である。


上位魔人がどんな魔法を使うかによっては、その差はさらに広がるだろう。


ルシファーだって、この前まで消滅寸前だったくせに。


「まあ、でも正体を明かすのは、もっと力をつけてからがいいさ。ここで変に目立って、強い奴に消されたらつまらないだろ?」


俺は諭すようにルシファーへ言った。


(……まあな。せっかくそなたに拾われた命だ。そなたの意思を尊重して動くとしよう)


若干の不安は残るが、とりあえず納得してもらえたらしい。


「とりあえず今は、武器を手に入れて、敵を倒して、うまいものを食って力をつける。それでいこう」


(うむ、そうだな)


「よし。じゃあ、ゾイルの里に向かうとしよう」


俺は荷物を背負い、門へと向かった。


必要ならこのまま

「小説家になろう向けに、さらに読みやすく改行多め版」

にもできます。


もちろんです。

「小説家になろう」向けに、さらに改行を多めにして読みやすくした版です。


「サタン様、次はどちらへ向かわれますか?」


ヨルカが俺に尋ねる。


「とりあえず、ゾイルの里に向かうよ。俺も武器が欲しいしな」


魔力弾と呪文で、大抵の敵ならどうにかできるようにはなってきた。


けれど、やはり近接用の武器は欲しい。


さすがに至近距離で魔法をぶっ放すわけにもいかないし、魔力が尽きかけた時でも、武器さえあればどうにかなる。


それに、武器を持って戦うほうが単純にかっこいい。


どんな武器にするかは、まだ決めていない。


ただ、変にクセの強いものより、使いやすく素直な武器がいいとは思っている。


「わかりました。すぐに用意しますので、少々お時間をください」


そう言うと、ヨルカはそそくさと自分の部屋へ引っこんでいった。


これまで単独行動、それも隠密のような仕事ばかりだったらしいから、誰かと一緒に旅をするのは今回が初めてなのだろう。


そのせいか、どこか少し張り切っているようにも見えた。


……余計なものまで持ってこなければいいんだけどな。


そんなことを考えつつ、俺も出発の準備を整えることにした。


「ところで、ゾイル。ここからその里まではどれくらいなんだ?」


「だいたい、歩いて三日ほどの場所にあります」


歩いて三日なら、距離にして九十キロほどか。


「そうか。なら、荷物はそんなにいらないな」


それほど遠くないとわかり、身軽な装備で行くことにした。


今や数日程度の移動であれば、食料や水分の補給も必要ない体になっていた。


とはいえ、うまい料理を求める気持ちはまったく別である。


「ところで、サタン様。ここ数日のうちに、どこか体つきが変わられたように見えるのですが?」


ゾイルは足先から頭まで、俺の姿をじっくり眺めた。


「筋肉がついて、ずいぶんたくましくなられたようにお見受けします。それに歩き方も、体幹に芯が通ったようにしっかりしていて……まるで武術の達人のようです」


「い、いや、まさか~。何も変わってないヨ?」


ぎくり、とした。


ゾイルのやつ、なんて観察眼だ。


さすが狩人というべきか。


思わず声が上ずってしまったが、気づかれていないことを祈るしかない。


「そうですか? ……私には、この村に来る前よりも妙にがっしりされたように見えるのですが」


「いやいや、きっと気のせいだって。そうに違いない。あ、もしかしたら戦いで鍛えられたのかもしれないな~」


俺はぎこちない笑みを浮かべながら答える。


「いや、サタン様は先ほどの戦いで、ほとんど動いておられませんでしたよね?」


そうだった。


俺はさっきの戦いで、ほとんど動いていない。


カシラの攻撃も、魔力をまとった体で受けただけだ。


「うっ……! じゃ、じゃああれだ。道の柵を作るの、手伝ってたんだよ!」


「私も手伝っておりましたが、サタン様のお姿は見かけなかったような……。何か、隠していませんか?」


ゾイルは俺の目をのぞき込むように、すっと顔を寄せてきた。


「そりゃあ、少しくらい秘密はあるさ。隠れて筋トレしてたとか」


「……そうですか。まあ、そういうことにしておきましょう」


ゾイルは、それ以上追及してこなかった。


俺にどうしても隠しておきたいことがあるのだと察したのだろう。


やはり、こやつは信頼できる。


できる大人の対応というやつだ。


「では、私も準備してきます。また門の前で」


そう言って、ゾイルは家を出ていった。


「危なかった~……」


誰もいなくなった部屋で、俺はぽつりとつぶやく。


実際、俺自身も自分の肉体の変化には気づいていた。


イルカが毎日うまい料理を作ってくれるせいで、魔力がどんどん成長している。


それに伴って、背中の三対六枚の羽も少しずつ大きくなっていた。


そろそろ服を新調しないと、羽が服を突き破りそうだ。


……イルカに作ってもらうか。


それに、今日食ったユニコーンとゴルド族のカシラの魂は大きかった。


肉体の格が、一気に跳ね上がったのだ。


筋肉がつき、体幹は安定し、どんな体勢からでも即座に反撃へ移れる、しなやかな体を手に入れていた。


「でも、そろそろこの羽も隠しきれなくなるよな~……」


なるべく折りたたんではいる。


だが、それでも三対六枚もあれば、どうしたってシルエットは変わってくる。


頭を抱える俺に、ルシファーが頭の中から声をかけてきた。


(何も隠す必要などあるまい。われの美しい羽ではないか。皆に見せつけてやればよい)


「いや、ワ族やゴルド族の話を聞いただろ? みんなお前を探してるんだよ」


(聞いたとも。皆、われを求め、加護を授かりたいのであろう? ならばそうしてやるのが強き者のさだめよ。皆、大いに敬えばよい)


「いや、なんかこう……面倒ごとに巻き込まれる気しかしないんだよな。それに、まだ俺自身そんなに強くないし」


(われがついておるから大丈夫なのだ)


いや、どれだけ自分に自信があるんだ、こいつ。


今の俺には、上位魔人や上位魔獣と正面からやり合える自信なんてない。


それくらい、上位の連中とは力の隔たりがある。


おそらく下位魔人がそれぞれ高性能な武器を持ち、数千単位で挑んでようやく互角。


たった一人を相手に、一個師団級の兵力が必要になるほどだ。


しかも、それは両者とも魔法を使わない前提での話である。


上位魔人がどんな魔法を使うかによっては、その差はさらに広がるだろう。


ルシファーだって、この前まで消滅寸前だったくせに。


「まあ、でも正体を明かすのは、もっと力をつけてからがいいさ。ここで変に目立って、強い奴に消されたらつまらないだろ?」


俺は諭すようにルシファーへ言った。


(……まあな。せっかくそなたに拾われた命だ。そなたの意思を尊重して動くとしよう)


若干の不安は残るが、とりあえず納得してもらえたらしい。


「とりあえず今は、武器を手に入れて、敵を倒して、うまいものを食って力をつける。それでいこう」


(うむ、そうだな)


「よし。じゃあ、ゾイルの里に向かうとしよう」


俺は荷物を背負い、門へと向かった。

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