表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/67

day.65

あの後、冬悟はガチで1ヶ月後に式場を予約しやがった。

まぁ、この騒動を早めに終わらせたいのは、俺も同じだから、いいんだけど。

こういう時、冬悟はマジでお金持ちの御曹司なんだって、改めて思う。

だって、普通の人じゃ、このスケジュールで結婚式なんて、挙げられねぇだろ。


でも、その代わり、俺達はこの準備で大忙しになった。


ある時は、招待状の作成を。


「なぁなぁ、浩二と川崎先輩と大林さんも呼んでいい?」


「あぁ、別に構わん。」


「小百合さんも呼んでいい?」


「…招待状は出してやるが、来るかどうかは本人次第だぞ。」


「それと、美代子さんは?」


「…………………考えておく。」


今回、俺に味方してくれたのが、美代子さんだってことを、あの後冬悟に話した。

だから、俺の前では露骨に拒むことはせず、渋い表情を浮かべただけで終わった。

この2人の溝は、きっと埋まらないかもしれないけど、少しだけでも、その溝が浅くなる日が来たらいいなとは思う。


「あ、あとさ、俺の母さんと妹は呼ばなくていいから。こんな派手なのに招待されたら、あの人達は卒倒しちまうだけだから。」


「わかった。」


俺が招待したい人は、それだけ。


「俺の方はこれくらいなんだけど、冬悟は何人くらい呼ぶ予定なんだ?」


「そうだな……ざっと500人くらいになるんじゃないか?」


「ごひゃ……?」


しれっと聞かされた数字に、一瞬頭がフリーズした。

凄い規模になるだろうと覚悟はしていたが、まさかこれ程までとは。

想像できない人の数に、ゴクッと息を呑んだ。


「が、がんばろうな、冬悟!」


「…あぁ、がんばってくれ。」


参加者のほとんどが冬悟側だから、俺の分も含めて、招待状は冬悟が用意してくれることになった。



また、ある時は、衣装選びを。


衣装はもちろんレンタルだと思っていた俺は、何故か今、仕立屋で採寸されている。


あれ?

この衣装、買うもんなんだ??


疑問に思いながらも、言われた通り、腕を伸ばしていると、シュッと静かにメジャーが巻き取られる音が聞こえた。


「採寸お疲れさまでした。それで、デザインはいかがいたしましょうか?」


店員さんがニコニコと微笑みながら、タッチパネルとぶ厚いカタログを渡してくれたが、モーニングやらタキシードやらなんて、正直よくわからない。


何が違うんだ??


だから、どれがいいかなんて聞かれても、困る。


タッチパネルを手に固まっていると、採寸を見守っていた冬悟が、すっと隣に来てくれた。


「…俺に任せてくれるか?」


その救いの言葉に縋るように、コクコクッと力強く頷くと、残りのデザイン決め等は、全て冬悟がやってくれた。



そして、またある時は、式場の見学と料理の試食。


「広っろ………。」


バカ程広い緑の絨毯と美しい花が広がっている庭に、美しく、だけど荘厳な雰囲気の漂う真っ白なチャペル。

そこは、ガーデンパーティー方式で行われる今回の披露宴に、ぴったりの場所だった。


そこでは、冬悟が進行の流れやテーブルの配置等を確認している間、俺は料理の試食をさせてもらっていた。


どれも美味ぇ〜!!


この日は、ただひたすら食べまくるだけの、幸福な時間が流れていった。


そう、よくよく考えたら、結局全部、冬悟任せになってるじゃねーか!!


だが、冬悟は、俺を完全に落ち込ませないためにか、重要な仕事を任せてくれた。


それは、俺達の結婚指輪のデザイン決めだった。


“お前が嵌めたいと思うデザインや刻印が入った指輪を、俺は嵌めたい。だから、お前がそれを考えてくれ”


そう冬悟に言われたら、やるしかないと気合を入れる。


「冬悟、左手出して。」


「…どうした?」


夜、ソファで何かの書類を確認している冬悟に駆け寄り、左手を要求した。

小首を傾げながらも、冬悟はすぐに左手を差し出してくれる。

その大好きな手を取り、ある指をまじまじと眺めた。


真っ直ぐですらっとしていて、長くて綺麗な薬指だ。


「やっぱり、シンプルな細身のヤツが似合いそうだな。」


満足そうにそう呟いた後、その手にすりっと頬擦りすると、俺の行為を優しく見守っていた冬悟が、その頬を撫でていく。


「…もういいのか?」


「うん!大丈夫!」


そう笑顔で返事をし、今度は冬悟の隣にぽすっと座る。

ソファの上に放り出していたスマホを手に取り、メモを作成していく。


「っと……できた!!」


そのメモ書きを、冬悟にLINNEで送った。


「これが、俺の考えた結婚指輪だぜ!どう?」


そのメモを見た冬悟は、嬉しそうに目を細めていく。

そして、トンッと俺の肩にもたれかかってきた。

その場所から、じんわりと暖かくなっていく。


「…シンプルで、いいんじゃないか。」


「だろだろ?」


冬悟にも気に入ってもらえたみたいで、よかった。


満足そうな冬悟にへへっと笑いかけ、俺もこつっと頭を寄せる。


「…それに、この日付を選んだのか。」


「そ!俺達2人だけが知ってる、大事な日付だからな!」


「…そうだな。」


それは、俺達2人の、全てが始まった日―。


「お前が考えてくれた、この指輪を嵌めるのが、楽しみだ。」


冬悟は俺にすりっと擦り寄った後、額にキスを落とし、立ち上がった。


「…では、これでオーダーしておく。完成を楽しみにしておけ。」


「うん!」


指輪もオーダーメイドで、だけど、ちゃんとハイブランドだ。


この結婚式で、お金持ちの底力を、目の当たりにさせられている気がする。


その力、もうちょっと借りれねぇかな。


「なぁ、冬悟。」


「どうした?」


言いにくそうに口籠っていても、振り返った冬悟は急かさずに、俺の言葉を待ってくれている。

すぅっと息を吸って、無茶なお願いをしてみた。


「あのさ、その指輪の出来上がりだけど、結婚式よりちょっとだけ早くならねぇかな?」


「…何でだ?」


訝しげに見つめられ、呼吸が少しだけ浅くなる。

意を決して、グッと拳を握り締めた。


「その指輪を使って、お披露目パーティーの前に、俺と冬悟の2人だけで………結婚式がしたい。」


この俺の提案に、冬悟は驚いたように目を見開いたが、すぐにその奥が甘くなり、ふわっと微笑んでくれた。


「…わかった。かけ合ってみよう。」


こうして、俺達2人だけの結婚式が開催されることとなった―。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ