day.59
次の日から、新学期が始まった。
久々の大学で、久々に浩二と会った。
「よっす、純也。今年は全然会わなかったけど、元気にしてたっぽいな。」
左手を軽く上げて挨拶する浩二に、俺も挨拶し返す。
「はよ。あの時はサンキューな。マジで助かった。」
今年の夏休みはずっと、バイトか冬悟と一緒に過ごしていたから、浩二とは2回しか会っていなかった。
しかも、その内1回は、俺が風邪を引いた時に、呼び出して来てもらったやつだ。
「はぁ〜あ。とうとう純也が全然遊んでくれなくなったな~。どうせ、ず〜っと諏訪さんに夢中だったんだろ〜なぁ〜。俺寂し〜な〜。」
机にダラッと上半身を倒しながら、ニヤニヤしてくる浩二を、軽く睨みつける。
だけど、図星のため、強く言い返せない。
「全然寂しくなんてねぇくせに、よく言うぜ。浩二だって、小百合さんと遊んでたんだろ?」
それでも、なんとか言い返そうとして、反撃すると、浩二の顔が突然、しょんぼりしてしまった。
絶対に惚気られると思っていた俺は、予想外の反応に困惑する。
「えっ……と?まさか、あれからあんまり進展なかったのか?」
しょんぼりから、どんよりに変わってしまった浩二の雰囲気に、流石の俺もオロオロしてしまう。
「えっ??嘘だろ!?だって、この前は仲良く花火大会行ったって、言ってたじゃねーか!?」
「………それがさ、その後は全然よかったんだけど、ここ1週間くらい、急に忙しくなったからって言われて、全然会ってももらえないし、連絡も返ってこなくなったんだよね………。これってさ、どう考えても、もう脈ナシってことだよな………?」
「そんなことねぇよ!!」
思わず大声で否定するも、周囲からの痛い視線に、一旦口を閉ざした。
小声でコソコソと話しを再開する。
「んなわけねぇだろ!?しかも、たかだか1週間だろ!?小百合さんも社会人だから、いろいろあって忙しいだけだって!冬悟だって、忙しそうな時あるしさ!」
「たかだかって、言うけどなぁ。お前だって、諏訪さんと1週間も離れられないだろ?」
「ゔっ……。」
「それに、お前らはさ、一緒に住んでるから、お互いの状況がわかるけど、俺はわからねぇからさ……。LINNEだって、最近は既読スルーはおろか、未読が多いし………。その、上手く言えねぇけど、何かいつもと感じが違うのが、不安なわけよ。」
な、なんてこった!!
こんなにベコベコにヘコんでいる浩二なんて、今まで見たことがねぇ!
なんとか元気付けてやりたいけど、今は下手したら、傷口に塩を塗るだけになるかもしれないし。
どうしよう……。
ただ、ここ1週間くらいってのが、ちょっと引っかかる。
それって、冬悟の様子が変わった時と、丁度同じ頃だしな。
でも、ただの偶然かもしれない。
だけど、もし、偶然じゃなかったら?
「そっか……。わかった。俺、浩二の分までがんばるからな!」
「いや、何をだよ。」
はぁ?と疑問を浮かべている浩二を余所に、俺は内心で、冬悟の口を割らせるべく、気合いを入れた。
今日の講義を全て受け終え、帰り道を歩きながら、冬悟にどうやって抱えている問題を聞き出すかを考えていた。
だけど、今回も今回とて、当人からは聞き出せる自信はない。
それに、もしその内容が、俺が力になってあげられないことだったら?
その場合、どうやったら、冬悟を支えてあげられるんだろう―?
うーんと思考を巡らせていると、ふと真正面でイチャついているカップルが、目に入ってきた。
そのカップルの彼女が、彼氏の頭をなでなでしている。
頭を撫でられている彼氏は、嬉しそうにして、彼女に甘えていた。
こ、これだ!!
妙案を思いついた俺は、ダッシュで家に帰っていった。




