day.46
2人を追いかけて入った先は、普段の冬悟からは考えられない、ガヤガヤとした安くて旨そうな、至って普通の居酒屋だった。
冬悟って、こういうところにも入るんだ。
初めて知った。
だけど、俺も気軽に入れる店だから、ラッキーだ。
2人が入った後に俺も入店し、席は近いけど、冬悟達からは見えないところに座る。
通り過ぎる際に、ちらっとだけ相手を見た。はっきりとは見えなかったが、相手の男は、グレーのスーツを着て、外国人とのハーフのような顔立ちをした、爽やかイケメン系だった。
顔面偏差値高過ぎだろ、クソが。
内心で悪態をつきながら、もしかして、冬悟のタイプって、本当はこういう人なのか?とモヤモヤする。
俺、冬悟のこと、何も知らないのかも―。
実は、冬悟の好みなんて、皆目見当がつかない。
正直言ってしまえば、どうして俺を好きなのかも、わからない。
だから時々、本当に俺を好きなのか、すごく不安になってしまうんだ。
………こんな馬鹿みたいなことを、してしまうくらいには。
注文を済ませて、必死に聴き耳を立てていると、2人の会話が途切れ途切れに聴こえてきた。
「………結婚したって?………」
「いや……違う………」
ここからだと、どうしても断片的にだけしかわからない。
だけど、やっぱり、俺と結婚していることは、隠しているみたいだ。
料理が運ばれてきたが、食べることよりも、全神経を耳に集中させる。
暫くは、他愛もない話をしていた感じで、内容はあまりよくわからなかった。
時間だけが経っていき、そのまま何事もなく終わりそうな雰囲気となり、ほっとしていたのも束の間、とうとう決定的な単語を聞き取ってしまった。
「………俺と…付き合って………」
えっ!?
え〜〜〜〜〜〜!?
まさかの、こ、こ、こ、告白!!??
で、冬悟の返事は……
「……別に構わんが………」
……………………。
ギュッと唇を噛んで、俯く。
胸が、ズキズキと痛みだしていく。
涙が零れてしまわないように、必死で堪えた。
だから、冬悟の様子がおかしかったのか。
あの切ない瞳は、俺と別れるつもりだったんだ。
冬悟の気持ちは、もう俺にはなかったんだ―。
「ハハッ…。」
全然気付かなかった。
そんな馬鹿な自分に笑けてくる。
「……これから…俺…ホテルで……」
「………わかった。……あとで…」
続けて、そんな言葉も聞こえてきた。
これ以上はもう耐えられなくて、顔が見られないようにしながら、店を飛び出した。
「はあっ、はあっ……。」
ショック過ぎて、動揺を抑えきれず、息が上手くできない。
これから、冬悟はあの人を抱くのか?
想像するだけで、胸が苦しくなり、グッと押さえる。
俺だけの、冬悟だったのに―。
俺と冬悟の生活の場が違うのは、どうしようもないことだし、正直、俺達は互いにバレないように不倫するなんて……本当に容易いことだったんだ。
だけど、バレたらアウトだから。
悲しみが、沸々と怒りに変わっていく。
大好きだったのに―。
「………絶対許さねぇから。」
帰ってきたら、問い詰めてやる。
そう心に決めて、まだまだ騒がしい夜の街を、静かに1人歩いて帰った。




