day.44(冬悟視点)
仕事をしている最中に、スマホが同時に2件、メッセージを受信した。
相手先を確認すると、純也と中山だった。
何故この2人?と疑問に思ったが、先に純也の内容を確認する。
そこには、“今日晩飯作れないから、外で食ってきて”というシンプルな要件だった。
次に、中山からの内容を確認すると、“純也が40度の熱を出して倒れました。しばらく看病しておきますので、今日は早めに帰ってきてもらえると助かります!”とあった。
………何故アイツは大事なことを言わないんだ?
それに………どうして、俺を呼ばなかったんだ。
周りに気付かれないように、ギリッと奥歯を噛み締める。
はあっと息を吐いた後、さっと鞄を手に取り、近くにいた従業員に声をかけた。
「悪いが、今日はもう帰る。」
それだけ言い残し、急いで会社を出た―。
家に帰ると、中山が顔を覗かせた。
どうやら、ずっと付き添ってくれていたらしい。
「諏訪さん、めっちゃ早く帰ってきてくれたんスね。」
「…浩二クン、まだ居ててくれたんだな。純也の様子は、どうだ?」
「薬飲ませたんで、今は落ち着いて寝てます。」
「…そうか。ずっと付き添ってくれて、ありがとう。後は、俺が看よう。」
中山と交代し、起こさないよう静かに純也の部屋に入った。
ベッドの上では、少し息は荒いものの、スゥスゥと寝息をたてている、純也がいた。
そっと、その赤い頰に触れる。
「ん……。」
すると、冷たい俺の手が気持ちいいのか、スリッと擦り寄ってきた。
いつもなら、可愛い奴で終わる筈なのだが。
今は、それがとても苦しい。
一体、コイツは誰に擦り寄っているんだろうな。
思わず、フッと自嘲した笑いが零れた。
前の指輪騒動の時も、今も、純也は自分が弱っている時は、何故か俺には頼ってこない。
寧ろ、それを隠そうとしてくる。
今回も、弱みを見せる相手は、俺ではなく、中山を選んだ。
純也にとって、俺はそんなに頼れない男なのか………?
虚しくなって、そっと俯き、ゆっくりと手を離した。
どうしたら、コイツを安心させてやれるんだろうか。
どうしたら、コイツに頼ってもらえるのだろうか。
考えても答えの出ない問いに、深い溜息が漏れる。
………心を開いてもらえないのが、こんなに辛いなんて、初めて知った。
胸が締付けられながら、苦しそうな寝顔に、ただただ立ち尽くしたまま視線を落とした。




