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day.41

いつもなら、冬悟に抱き締められるとすぐに眠れたのに、今日はなかなか寝付けなかった。

ぎゅっと冬悟の服を握り締め、その胸に顔を埋める。

そして、スンスンと大好きな匂いを肺いっぱいに取り込んでいると、頭上でフッと笑われた気がした。

俺が顔を上げるその前に、そっと頭を撫でられる。


「…どうした?まだ甘え足りなかったのか?」


「ばっ!違ぇよ!!」


カッと頰を赤く染め、否定するものの、離れたくなくて、その胸に顔を埋める。

だけど、その声色から、からかっているんだってわかる。


冬悟はいつも、好きだとか、ここにいろとか、はっきりと口にしてくれることはない。そういう言葉を伝えるのが、苦手なのかもしれないけど、それよりも寧ろ、今は口にすることを躊躇っているようにも感じた。

さっきだって、遠回しに“隣にいてもいい”って伝えてくれたけど、あの時の嫌そうな顔は、嫌というよりかは、何かを堪えている表情に近かった。


きっと、そうさせている原因は、俺なんだろう。

俺がまだ、未熟だから。


多分、冬悟は俺に逃げ道を用意してくれているんだ。

今、俺が離婚したいって言ったら、きっと、即答でわかったって言うはずだ。


俺はもうとっくに、冬悟から離れられないのに。

離れない覚悟なら、できているのに。


だけど、冬悟はまだ、いつでも俺から離れていける。

近づき過ぎないように、心の距離を保っている。


ちゃんと夫夫になっても、冬悟の存在が遠い。


いつになったら、俺は冬悟を振り向かせられるんだろう―。


好きって、こんなにも苦しいんだ。

こんなに誰かを好きになったことがなくて、この感情に少し戸惑う。


………だけど、冬悟は俺相手に、こんな感情はきっと抱かないよな。


「…純也?」


抱きついたまま何も言わない俺に、怪訝そうな声が降ってくる。


「………俺、冬悟に甘えてばっかだな。」


「…今更だな。だが、お前1人ぐらいなら、受け止められるつもりだ。」


そう言うと、冬悟はもう一度、俺をしっかりと抱き締めた。


「でも……。」


「俺には甘えていろ。」


ドキッと胸が飛び跳ねる。

そんなことを言われたら、また甘えたくなってしまう。


だけど、冬悟のためにも、俺のためにも、ちゃんと強くなってみせるから。


もう少しだけ、甘えさせて。


そう思いながら、俺からも強く、冬悟に縋り付くように、ぎゅっとしがみついた。





次の日からは、本気で真面目に働いた。

正直、あの騒動の後すぐの出勤は、地獄だった。

みんな態度はいつも通りだったけど、その冷たい視線がドスドスと俺を貫いていく。

だけど、冬悟が言ったように、これは俺のせいだから、時間はかかるかもだけど、俺が何とかしなくちゃいけない。


今日からは心を入れ替えて、今まではあまりやったことがなかったけど、ちゃんとメモを取ったり、じっと大林さん達を観察して、ちゃんと真似することにした。


空になった食器を下げるために厨房に戻ると、突然、大林さんに呼び止められた。


「瀧本、明日のシフト時なんだが、大規模パーティーで貸切りになる予定だ。少し残業してもらうことになると思うから、そのつもりでいてくれ。あと、何かあったら、面倒臭がらずに、すぐ行動、すぐ報告だ。わかったな?」


「はい!」


大規模パーティーか。

一体どんな人が来るんだろう?


この時はまだ、あの人と再会するなんて、思ってもみなかった―。

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