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day.19

2人分の晩ご飯を用意しながら、冬悟の帰りを待ちわびる。


「よし、できた。」


丁度出来上がったタイミングで、カチャと玄関の扉が開く音が聞こえてきた。


「おかえり冬悟〜!」


待ってましたとパタパタと駆け寄り、ギュッと抱きつく。すると、冬悟は驚いた様子を見せたが、ポンポンと優しく背中をさすってくれた。


「どうした?今日はやけに機嫌が良いんだな。」


「ヘヘっ。ちょっとな!晩飯できてるから、先に食おーぜ!」


「…あぁ。」


とりあえず先にご飯を済ませた後、ゆったりとソファに座っている冬悟に、チケットを後手で握りしめ、そっと近づく。


「なぁなぁ、冬悟。」


「…何だ?」


じゃーん!と例のチケットを冬悟の目の前に突きつけた。


「見て!ネズミーランドのペアチケットだぜ!!今日浩二にもらったんだ〜!」


「それで機嫌が良かったのか。それはよかったな。行ってきたらいい。」


ポンッと頭を撫でられたが、釈然としない。

…俺の聞き間違いだろうか?


「え〜っと、冬悟、一緒に行ってくれるよな?」


「何故俺が行くんだ?浩二クンと一緒に行ってくればいいだろう?」


……俺の誘い方が悪かったんだよな。多分。


「そうじゃなくってさ、俺、冬悟と一緒に行きたいなぁ。」


「浩二クンと一緒に行った方が、お前も楽しいと思うんだが?」


………あれ?俺、日本語間違ってる?


「浩二と一緒に行っても楽しいかもだけどさ、俺は冬悟と一緒に楽しみたいなって。」


「そこに俺とお前が2人で行って、何か楽しいのか?」


流石にブチッとキレた。

コイツと恋人みたいに過ごすなんて、一生ムリかもしれない。

クシャリとチケットを握り潰す。


「だから!俺は!冬悟と!一緒に行きたいつってんだよ!!行きたくないなら、ハッキリそう言えよ!もういい!」


「おい、純也!?」


冬悟の制止の声を振り切り、ダッと自身の部屋に駆け込み、バタンと扉を勢いよく閉める。

そして、ドサッとベッドに倒れ込んだ。

アイツ何であんなに宇宙人なんだよ。

伝わらない悲しさと虚しさが、胸に波のように押し寄せ、グッと枕に顔を埋める。

すると、コンコンと控えめなノックが聞こえてきた。


「純也。入るぞ。」


ドアに鍵は付いていない。だが、無理やり入ってこようとはせず、様子を伺ってくる。


「入ってくんな!今日はもうアンタと話したくない。」


すると、外でハァッと溜息を吐いた感じがした。


「…わかった。」


その一言だけを残して、部屋の前から冬悟の気配が消えた。


「あのクソ野郎…。」


泣きそうになるのを堪えながら、そのまま眠りについていった。


一方、その頃冬悟は。


「アイツは一体何をそんなに怒っているんだ…?」


俺が怒った理由がわからず、頭を悩ませていたらしいが、そんなこと俺は知る由もなかった。



次の日の朝は、冬悟に一言も口を利かないまま、家を出た。

大学に着くと、どんよりしている俺を見て、察した浩二は遠慮がちにそっと声をかけてきた。


「よっス、純也〜、…えっと、あのさ、もしかして、断られた感じ?」


「浩二〜〜〜!!」


浩二に泣きついた俺は、昨日のことを洗いざらい話した。


「あ〜、なるほどな。諏訪さんって、相変わらず俺らの想像の斜め上に飛んで行っちまうよな。」


「斜め上とかじゃねぇよ。アイツはただの人でなしだ。」


ムスッとしている俺に、ハハッと笑う。


「もしかしたらだけどさ、諏訪さんもネズミーランド、ってか、遊園地とか行ったこと無いんじゃね?だから、何が楽しいのかがわかんねーのかも。」


「俺だって行ったことねぇけど、想像だけでもまぁまぁ楽しめるぞ?」


「それはお前だからだろ。」


浩二と話している内に、段々と頭が冷静になってきた。確かに、ちょっと強引過ぎたのかもしれない。

行きたくないって言ってる冬悟に、俺の気持ちを押し付け過ぎたなと反省していると、励ますように肩にぽんっと手を置かれた。


「仕方ねぇな、俺も一緒に行って、楽しみ方を教えてやるよ!」


グッと親指を立てる浩二に、やっぱり行きたい俺は、キラキラとした眼差しを向ける。


「マジで!?俺と一緒に行ってくれるってことだよな?」


この際、冬悟と一緒は諦めて、浩二と楽しもう。

そう思ったのに、浩二はフルフルと首を横に振った。


「お前と諏訪さんと、俺な。だけど、そこで、1つ問題がある。」


「えっ?何??ってか、何で冬悟がメンバーに含まれてんだ?」


浩二は俺の目の前で、スッと人差し指を立てる。


「大丈夫。諏訪さんは、絶対来てくれるから。もう1回誘ってみ?んで、本題なんだけど、あと1人、誰か探してきてくんねぇ?ダブルデートっつー体で行こうぜ!」


「だ、ダブルデートぉ!!??」


驚きのあまり、思わず手に持っていたシャーペンが、手から滑り落ちていった。


「そ。ダブルデート。俺1人でお前と諏訪さんの熱に当てられるのはなぁ〜、流石にキツいわ。だから、諏訪さんの知ってる人でいいからさ、誰か頭数揃えてくれよ。できれば、女子希望で。」


「ちょっ、えっ?はぁ??」


言われた内容を上手く飲み込めず、パニックになっている俺の肩をぽんっと軽く叩いた浩二は、ニヤッと笑って、よろしくな!とだけ言い残し、別の講義室に移動していった。

その後ろ姿を、ただただ呆然と見つめることしかできなかった。

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