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day.18

あれから、俺の実家にちゃんと挨拶に行って、この関係を認めてもらい、俺達は契約夫夫から晴れて夫夫になった。

そして、冬悟は約束通り、諏訪ホールディングスを辞めた。

そんな変化に伴い、俺達の関係も少しずつだが変わってきているように感じる。


「おい。いい加減起きろ。純也。」


朝。冬悟のベッドで目覚めた俺は、ぐーっと伸びをして、大きな欠伸をする。そして、呆れた目で見下ろしてくる、目の前の夫に挨拶をした。


「ん………。ふあ〜っ。…はよ、冬悟。」


「とっとと顔洗ってこい。朝飯ができている。」


「はぁ〜い。」


冬悟が諏訪ホールディングスの社長を辞めてからは、一緒に過ごす時間が少しだけ増えた。


今までは、冬悟の方が出るのがうんと早かったため、既にいなくなってから1人で起きていたが、今は、殆ど同じぐらいに出るようになった。なので、毎朝叩き起こされている。


それに、朝ご飯も、今までは寝坊して時間が無いときは食べなかったりしていたが、今は冬悟が毎朝作ってくれて、ちゃんと食べて行くようになった。

そもそも、冬悟が料理できることにすげぇ驚いたのだけど。見た目もちゃんとしていて、それに美味い。

アイツにできないことって無いのだろうか、と疑ってしまうくらいだ。


「いただきま〜す。」


出来立ての温かい朝食を一緒に食べる。


「おい。」


そう言うと、冬悟は俺にコーヒーに入れるための牛乳を差し出した。自身は入れないが、俺がいつも入れるのをわかってくれている。


「ありがと。そうだ、今日は俺帰り早ぇから、晩飯作るけど、冬悟帰ってくるよな?」


「…あぁ。」


「わかった。じゃあ、2人分用意しとくな!」


牛乳を入れつつニッと笑うと、あぁ、と少しだけ目を細められる。

まったりした時間の後は、バタバタと用意して、慌ただしく出掛ける。


「いってきます!」


玄関のドアを閉め、そのまま駅に向かい電車に飛び乗ると、俺の頭は猛省を始めた。

………このままでは、俺達はただの熟年夫夫になってしまう。

確かに夫夫だから、いいのかもしれねぇけど。

…いや、全然よくねえぇぇぇっ!!!

俺は冬悟とちゃんと恋人として過ごしてみてぇんだよぉっ!!


どうしてこんなことになってしまっているのか。

その原因はただ1つ。俺達の恋愛偏差値が、互いに0同士であることに違いない。

冬悟には恋愛経験が無く、バイトに青春を捧げてしまっていた俺も、実はまともに付き合ったことが無い。

つまり、恋人とは?付き合うって何?な状態なのだ。


加えて、契約とはいえ、中途半端に夫夫生活を送ってしまっていたため、相手の好き嫌いや行動パターンはそれなりに把握してしまっている。

なので最近は、相変わらずケンカをするにはするが、以前に比べるとその回数は減った…気がする。


それに、冬悟は、今のままでもいいって思ってしてしまっているんじゃないかと思う。

だけど、俺は、もっと冬悟のことを知りたいし、もっとアイツにも知って欲しい。


このままでは、冬悟に好きって言わせるどころか、互いにドキドキする気持ちすら無くなるんじゃないかと心配になってくる。


悶々とした気持ちを抱えたまま、大学へと向かっていった。




「あ〜もう、どうしたらいいんだよ…。」


はあぁっと盛大に溜息を吐いた俺の前で、ランチの唐揚げ定食を頬張っていた浩二が、顔を上げた。


「どしたよ?また諏訪さんとケンカでもしたのか?」


「いや、別にケンカはしてねぇけど。そうじゃなくって、俺ら全っっっ然、恋人らしいことできてねぇ!!」


そう叫んだ俺に、浩二はシラけた目を向けた。


「聞いて損したわ〜。」


「いや、聞けよ!ってか、聞いてくれ!」


えぇ〜と面倒臭そうにしている浩二に、賄賂として俺が食っている豚肉の生姜焼きを1枚渡した。すると、コロッと浩二の態度が変わった。


「んで?具体的には何がしたいのさ?」


マジで現金なヤツ。


「いや、具体的に何がっていうのが、そもそもわかんねぇんだよな…。」


「何でだよ?」


「恋人ってさ、何をするのが普通なんだ?」


あ〜と何かを察した様子を見せた浩二は、少し黙った後、おもむろに口を開いた。


「別に特にこれをしなきゃとかはねぇし、無理にそれっぽくする必要も無いんじゃね?お前らはお前らのペースでいけばいいと思うけどなぁ。」


「そんなこと言ったってよ〜。このままだと熟年夫夫になっちまう…。」


う〜っと唸る俺に、浩二はアハハと笑った。


「いいじゃん、熟年夫夫。その歳でなかなかなれねぇぜ。」


「クソッ。他人事だと思ってバカにしやがって。」


ツボに入ったのか、いまだに笑っている浩二をジトッと睨みつける。ヒィヒィ言いながら腹を抱えていた浩二は、暫くして落ち着いた頃に、何やらゴソゴソと自身の鞄を漁り始めた。


「そんなお前らに、コレやるよ。」


1枚の紙を、そっと目の前に置かれた。


「何?」


手に取ってその紙をよく見る。すると、驚きのあまり、思わず腰を抜かしそうになった。


「なっ!?こ、これ、ネズミーランドのペアチケットじゃねぇか!!??」


「そ。俺の親父が会社から何枚か貰ってきたんだよ。そのうちの1枚を、イチャイチャしたい純也くんに恵んでやるよ。」


ネズミーランドなんて、今まで行ったことが無い。普通に行けるだけでもテンション上がるのに、冬悟と一緒に行けるなら、そんなもの、もっと爆上がりだ。


「なぁ、マジでこんないい物貰っちまっていいのか?」


だけど、何だか悪いような気がして、気が引けてしまう。すると、浩二はニヤッと笑った。


「お前、そんなの気にする奴だったっけ?」


以前の俺なら、貰える物は全て貰っていた。フルフルと首を横に振った俺を見て、だよなと笑う。


「浩二、マジで神すぎる!!サンキューな!」


「貸しだからな。」


ギュッと大事にチケットを握りしめて、はやる気持ちをなんとか抑えつける。


早く帰りたいと思いながら、残りの長い1日を過ごした。

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