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崩壊世界でマンション暮らし ~家賃はきっちりもらいます  作者: 二時間十秒


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アンドラスは美味しい一時を過ごしたい

「それは本当ですか!?」


 いつも冷静な悪魔の執事のこんなに大きい声を聞いたのは初めてのことだった。


 俺がマンション通販の新機能を発見した時に、思い浮かんだのはショッピングモールでのアンドラスのしょぼくれた顔だった。

 商品の一部または全部から通販ラインナップに並べることができるなら、ショッピングモールでは食べられなかったものを食べられるかもしれない。

 そのことを告げたら、アンドラスが大きな声をあげ双眸を輝かせているという状況だ。


「ああ。アンドラスの端末からも多分見られるはず。ただ、どれくらいの一部から再現可能かはわからないが」

「………………! たしかにあります! 一部または全部としか書いてないので、具体的にどれくらい必要かはわかりませんが、しかし、賭けてみる価値はあります。できなかったとしても損をするわけではありません」

「ま、そうだな。じゃあもう一度明日もショッピングモールに行ってみよう。そして新機能を試してみる」

「はい! そういたしましょう!」




 翌日、俺達は再びショッピングモールにやってきていた。


「本当に実際の商品が通販で買えるようになったらすごいよね! 色々探そうよ! はやくはやく!」


 ショッピングモールの中をダッシュしているのは雪代。一緒にモールに行ったことだし、ということで雪代にも昨日の発見を告げると一緒に来ると言ったので昨日と同じ3人でやってきている。


 モールの中でまず向かったのはスーパーマーケット。惣菜など多くの食べ物がパックの中で変色しとても食べられない状態になっているが、今日はそういうものも集めて魔法の鞄に入れていく。


 魔法の鞄に入れれば、腐っていても臭いも外に出てくることはないし、変な汁が漏れて汚れることもないので持ち帰りやすい。こういうことでも魔法の鞄は役に立って素晴らしい。


 スーパーにある惣菜――ポテトサラダ、肉じゃが、揚げ出し豆腐、鮭弁当、パック寿司にオムライスに焼きそば、そういったものをまずは手に入れた。

 マンション通販の説明には腐っていてはダメとは書いていなかった。ならこれでもいける可能性はある。持ち帰り試してみるんだ。


 また回転寿司屋に行き、回転レーンの上に乗ったまま干物のようになっている寿司を回収する。大異変が起きたときにも営業中だったろうし、レーンの上に寿司をのせたまま、それを取る暇も無く客も店員も逃げ出したんだろうな。


 マグロにイカ、サーモン穴子その他色々な寿司のなれの果てを手に入れた。さらに、クレープ屋では作りかけのクレープを手に入れ、コスメショップでは中身は魔石化してしまったのかなくなっていて、箱だけ残っているような化粧品も雪代が回収。


 そういったものを色々と集めて、俺たちはマンションに戻った。


 そして今、リサイクルボックスの前に三人並んで、本当にこれらが通販で買えるようになるか、試す時を迎えている。


「ここにいれるんだよね?」

「ああ、そう書いてあった」

「魔石を入れるとこだよね?」

「ああ、そうだな。いつもは魔石を入れてる」

「……大丈夫なのかなあ?」


 雪代がリサイクルボックスの中をのぞき込む。

 たしかにいつも魔石を入れてMPを手に入れるところにいろんな別の商品を入れる……それも……。


「たしかに少々汚れそうなのが気になりますね」


 アンドラスが手に持った変色した惣菜のパックを見ながら言った。

 そう、腐ったようなものを入れるんだから、本当に大丈夫かと疑いたくなるのも当然だ。

 特にアンドラスはマンションの掃除もしてくれてるし余計にそうだろうな。


「だが、マンション通販の画面にあったんだから信じてやるしかない。今まで嘘が書いてあったことはなかった。さあ、入れてみよう今日手に入れた色々な商品の一部を!」


 俺たちはショッピングモールから持ってきたものをリサイクルボックスに投入した。


 ピピピピ……ガシャン……ギギギ……と妙な音がして、リサイクルボックスの普段は獲得MPが表示されるモニターに、『新商品入荷「スーパー東式ストア製肉じゃが」「スーパー東式ストア製鮭弁当」「クレープピッピ製イチゴクレープ」・・・・・』などと次々に表示されていく。


「これは……! お二方、見ましたか!」

「うん! 見た! 私が入れたアロマも出てきたし! 絶対成功したよ!」

「やはりマンションは嘘つかない。確認してみよう」


 俺たちはアンドラスが住んでいる管理人室に駆け込み、管理人室の端末からマンション通販を立ち上げる。

 そしてお菓子の項目を調べると――。


「ありました!」


・クレープピッピ製イチゴクレープ


 ショッピングモールに入っていたクレープ屋のクレープが商品に追加されていた。

 

 もちろん、大異変から時間のたった今では食べられる状態のクレープなんてなく、デロデロになったクレープだったなにかとそれを包んでいた包み紙をリサイクルボックスに入れたのだが、それでも反応してくれていた。


「これは朗報だな。状態が悪くてもなんでもリサイクルボックスに入れれば、マンション通販の商品ラインナップに並ぶんだ。これなら今の世界の状況でも、相当いろんな商品を手に入れられるようになるぞ」

「ええ! 非常に自分も楽しみです!」アンドラスの跳ねるような声。「しかしまだ確認は終わっていません。テストのために実際に注文してみましょう」


 というやいなや、画面をタップしてクレープを注文。

 すぐさま宅配ボックスにクレープが配達され、アンドラスは箱を開けてできたてほやほやのクレープを手に持った。


「これがクレープ……素晴らしいですね……まず包み紙ごしに伝わるこの柔らかなさわり心地からして期待を高めてくれます」


 アンドラスがクレープを手にして上機嫌だ。テストって言ってたけど絶対一刻も早く食べたかっただけだな絶対。

 そして一口食べて……無言で二口三口と食べ、あっと言うまに半分食べて、ようやくアンドラスが言葉を発した。


「甘くてふわふわの生クリームとイチゴの酸味の調和、そして何よりこの絹のように滑らかな生地! 全てが「美味しい」で構成されたスイーツとしか言えません。ショッピングモール……いいところですね……」


 昨日のテンションとは大違いだ、こんな感極まったアンドラスのレアな姿が見れるなら、二日にわたって行ったかいはあったかな。


 そしてどうやら、本当にちゃんと商品を再現できているのも確認できた。

 味も遜色ない実際にあった商品が手に入る。


 マンション通販はさらに進化した、これまでよりもっと細かなところまで品物が手に入るようになったんだ。


 これまでは町を探索しても魔石はあれど物資は少ししか手に入らないことが多かった。だけどこれからは、この新機能で通販で商品が手に入る可能性が大幅に高まったんだ。

 これはいいぞ、さらにマンション生活を充実させられる。


 まあ……通販で買わなきゃいけないからMPはかかるが。


 MPは天下の回り物、そこに関しては世界が崩壊しようと変わらないのだった。



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クレープ買いに行かなきゃ!(使命感
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