5日後
「まあこんなものか」
俺達が自警団から、南の無法者たちとの決戦の話を聞いてから5日後。
それが南の無法者達が奇襲をしかけてくる日だった。
情報を掴んでいた自警団はその日に向けて迎撃準備を整えるとのことだった。
そしてあっという間に5日はすぎ、俺達マンション住民も自警団達が拠点にしている小学校の西の道路、自警団の迎撃ポイントへとやって来た。
集まったのは、俺と久我、綾瀬、天音、日出の5人。
自警団と南の無法者の決戦に、横槍入れてやろうっていう奴らの集まりだ。
「ちょっと少なくねえか? そもそも、今日こういうことやるって知ってんのか?」
久我が集まったメンツを見て怪訝な表情を浮かべた。
「掲示板に掲示しておいた。『来たる◯月△日、南の無法者と自警団がやりあうので、そこに参戦して無法者をやっつけようと思います。奮ってご参加ください』って」
「そんなもんやってたのかよ! 知らなかったぜ俺」
「おいおい、掲示板はちゃんと見なきゃだめだろう」
「いや、見ねーよ。こんな世界になる前に住んでたとこの掲示板だってイチイチ見てなかったぞ。てか俺だけじゃなくて他のやつらも多分知らんぜ」
そんな馬鹿な、ちゃんと掲示板は見なきゃ意味がないじゃないか。
と思って天音の方を見ると。
「天音も知らなかったわ。九重くんと直接話して聞いてたから、うざい奴らを叩きのめそうと思って来たけど、掲示板にそんなんあったなんてね」
「うちも今知ったわ」
この人たち掲示板を見てないのか?
一応大家的にマンション全体に周知することはあそこに書くのが一番だと思ってたんだが。
大きい地図みたいな目立つものは皆見るけど、文字だけの紙じゃ誰も見てくれないんだな。わざわざ学校でやった書写のように丁寧に字を書いたっていうのに。
決戦前だっていうのにテンションが下がって来るな。
「え? 皆さん見てないんですか。僕は毎朝見ているのですが!?」
日出、君だけが俺の味方だ。
まったく不本意だが、掲示板をろくに見ていなかったということがわかった。もちろん争いには関わりたくないから来てない人もいるだろうけれど、来てない人の半数はそもそも知らない可能性が濃厚だ。
「まあ、それでもいい。今回はメインで戦うのは自警団。なんなら俺達は何もしなくてもいい可能性すらあるんだから」
「えー、せっかく集まったのにそれはつまんなくない?」
「つまるつまらないで戦うわけじゃないからな、天音」
天音は不満気だが、自警団は情報を握ってカウンターをしかけるという有利な条件だ。あっさり勝ってしまう可能性も十二分にある。
だから、俺の見立てでは8割がた何もしなくても自警団は勝つ。俺達が参戦するのはあくまでも、100%にするための念の為。
「別に何もしなくても勝てそうでも、だからって俺達が黙ってなきゃいけない法律があるわけでもねえだろ? 恨みがあるんだから、勝てそうならむしろボコってやるぜ!」
「そうそう、痛い目見せてやらなきゃ気がすまないからね」
しかし久我と綾瀬も天音と同じく血気盛んだった。
真面目に掲示板を見ていた日出が一番穏健派だったか。
「まあ、参戦しちゃいけない理由があるわけでもないからやりたいなら止めはしないが。いずれにせよ、参戦する前提で準備はしておかないといけない。アレは持ってきてるか?」
久我たちは頷く。
「OK。それなら後は、戦いが白熱して周りが見えなくなったところで、乱入するだけだ。大事なのは存在を気づかれないこと、静かにのんびり待つとしよう」
「この先が奴らのねぐらね?」
「はい、小学校を拠点にしてるそうです」
「広々としたところを使ってるじゃあないの。あんなクソどもには贅沢ね。奴らをぶっ殺して、ねぐらもいただくわよ。そしたらあんたもそこに住まわせてあげる」
「マジですか!? 絶対ぶっ殺してやりますよ!」
深夜、戦いが行われる道路。
半壊した駄菓子屋やアパート、完全に壊れたガレキなどが両サイドにある大きめの道路に、予告通りに南の無法者達がやってきた。
人数はかなり多い、20人~30人ほどもいるだろうか。情報通り、全勢力で潰しにきたようだ。
そして喋っているのは、一人は無法者たちのリーダー。
「ってことなんだな、綾瀬」
「間違いなしだね。うちのソナーは嘘をつかないよ」
俺達は、戦いが行われる予定の場所からやや離れた場所に、ガレキの下に穴を掘って隠れていた。
声を聞くのは無理なので、綾瀬の能力で声を聞いてそれを伝えてもらっている。
初めて能力を目の当たりにした日出は驚きに目を見開いて。
「すごいマホウですねえ! こんな離れたところからでも状況がわかるなんて!」
「しっ、でかい声出されると聞き取りづらくなる! ……あ、自警団も出てきたよ」
周囲の半壊した建物やガレキのかげから、自警団の面々が飛び出してきた。
その数は20人~30人、南の無法者と同じくらいの数がいそうだ。
「すごいな、かなり大勢同士の争いじゃないか」
「くっそー、こんなとこで隠れてないでこの目で見たいぜ」
こっちがこっちでヒソヒソ話しているのと並行して向こうでも、自警団のメンバーの中から田茂が一歩前に出て、突然の待ち伏せに動揺している無法者たちと話し始めた。
「お前たちの目論見はこっちに漏れている。迎撃の準備は整っているんだ。素直に負けを認めれば、悪いようにはしない」
だが、無法者たちが素直に聞くはずもなく、リーダーらしき女は。
「どういうことだこれは!? 漏れてるってどういうことよ!」
「わかりま……あっ、もしかしてこの前逃げ遅れた馬鹿が……」
「喋ったっていうの!? 誰だか知らないけど、見つけてぶっ殺しておきな! ……ふん、バレたところで同じことよ、お前らみたいに正義の味方ゴッコをヌクヌクしてる奴らに私たちが負けるとでも? ちょうどいい、これから私たちの家になる小学校がボロボロになったらうぜえからな。……全員かかれ!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
田茂は首をふると、後ろの自警団達に向かって。
「交渉は決裂だ、今夜で終わらせる! 戦闘開始だ!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
自警団と南の無法者の最終戦が始まった。
そして、俺達の準備も。




