新しいものを試してみよう
「よっ!」
「久我」
新たな商品ラインナップが並んだ翌日、探索に出ようとした俺に声をかけてきたのは久我だった。
「これから探索? 魔石もっと必要になったもんなー」
「……たしかに久我にはもっと必要そうだな。探索行くときに酒飲んでるようじゃ」
久我は片手に梅サワーを持ってマンションからでてきた。
これから廃墟探索をするというのに、余裕あるやつだ。
「へへっ、なんかいつの間にか俺の好きな味が追加されてたんだよな、ラッキーってね」
「そういえば久我は初めてか。住民が魔石をたくさん集めて、MPをたくさん集めると、マンション通販がそんな風に進化するんだ」
「まじか! そんなのもあるのかよ、ありがてー。それならもっと魔石集めなきゃ行けなくなったじゃん」
「そうだ、集めると集めるだけ俺達の暮らしは充実する。もっと集めなきゃいけないのに酒飲んでてて平気なのか?」
「あー、それは心配なし。俺酒強いからさ、サワーとかジュースと変わらないんだよね」
本当かどうか怪しいが、まあ一缶くらいなら支障が出ることもないか。
そのまま俺と久我は今日は一緒に探索をすることにした。
せっかく二人いるのだからという理屈かはわからないが、俺達は東の方へ行くことにした。魔獣がいても一人より安全に戦えるし、それに試したいこともある。
橋を渡っていき、さらに東へ進もうとすると、先の方に魔石の角が生えた馬の魔獣がいるのが見えた。
「ユニコーンってヤツじゃないのあれ?」
「俺のイメージは白なんだけどな」
その角の生えた魔獣の色は黒く、角は二本ある。ユニコーンとはちょっと違うようだ、もっと”魔”の見た目をしている。
「しかし馬って珍しいな。あまりこの町にいなそうだが」
「別に元々いた動物が魔獣になるってわけでもないっしょ」
雑居ビルにいたドラゴンの姿が思い出された。
「たしかにそうだな。どこから湧いてきたのかわからない魔獣もいる」
とはいえ、これまでに出会って来た魔獣は、町中にいそうな動物が化物になったような魔獣が多かったし、そういうタイプの方が多いのはおそらく間違いない。
たまに、ドラゴンや黒いユニコーンみたいな謎の魔獣も出てくるんだろう。
「俺はあいつ、絶対角で刺してくると思うけど、どう思う九重?」
と久我が言ったのと同時に、黒ユニコは俺達に向かって猛然と走り出した。
もちろん、頭の角を前に突き出しながら。
「俺も同意見だ、とりあえず近づかれる前にやる!」
初級魔道士の杖を魔法の鞄から取り出し、魔力の矢を放つ。
だが黒ユニコは角を振り矢を弾き飛ばしてしまった。
「うげっ!? まじかよ!?」
「なかなかやるな、だったら次は――」
「待ってくれよ、俺にもやらせてくれって! フォグメーカー!」
久我がマホウを使うと、俺達と黒ユニコの間に濃い霧が立ち込める。
こちらから黒ユニコの姿が見えなくなるが、それは相手からも見えないということだ。俺達は横に移動して突進コースから外れる。
姿は見えないが、黒ユニコの足音が止まった。
俺達を見失いどっちに向かうか決めあぐねているようだ。
音が止んだ位置から大まかに推定すると、俺達がさっきまでいた場所まで霧中を突進したが、そこにいなかったためフリーズしているってところだろう。
(静かに裏に回ろう)
(アイアイサー)
回り込むように移動し、そしてそこで久我に霧を弱めるように言う。
徐々に霧が薄れ、黒い馬の背後が見えてきた。
そこで俺はもう一つのものを試すことにする。
魔法の鞄から取り出したのは、ネットランチャー。
先日ラインナップに追加されたばかりの武器だ。
筒状の形をしていて、おしりの部分のスイッチを押すと筒の先から勢いよく網が飛び出すと同時に開き、目標を包み込み拘束する。
これの性能を一度試しておきたかったから、絶好のチャンスが到来した。
俺は筒を黒ユニコに向けた。
同時に、黒ユニコは俺達に気づき、振り返った。
突進しようと地面を蹴ってきたその瞬間、俺はネットを発射する。
ボン、という音とともに高速で射出されたボール状のネットは一瞬で開き、黒ユニコを頭上から包み込む。
黒ユニコは魔力の矢を払いのけたときのように角を振り払うが、しかし網目の空いたネットにはそれはまったく無意味だった。
角は穴に入り、角を振ったところでネットが揺れるだけにしかならない。
そして瞬きする間に体がすっぽりと包みこまれ身動き取れなくなった。
もがいているが、魔獣の力でも網からすぐには脱出できないようだ、網の材質は単なる糸ではなく、丈夫な合金のワイヤーでできているらしい。
この状態では角を使ったガードもできない。
魔法の杖で狙いを定め、今度こそ魔獣を仕留めた。
深い紫の立派な角がそのまま魔石の結晶となり、これはかなりMPが稼げるだろう。
「どうやって手に入れたんだ? こんな網」と久我が網を手で不思議そうに触っている。
「通販にあったぞ。他にもいろい武器防具があったから、帰ったら見てみることをすすめる。フォグメーカーは便利だけど、直接攻撃能力はないのだから」
「へえ、他にも色々と。面白そうだな、早く帰って見てみてーけど、魔石も集めたいところだしなー、もうちょいやっちゃうか。酒でMP使っちまったし、へへ」
ダメなタイミングでマンション通販が進化してしまったのかもしれない。
「飲むためにも稼ぐしかねえな……って、あれ? あそこにいるの自警団の連中じゃねー?」
久我が指差した方を見ると、崩れたガレキに腰掛けながら、車座になって話し込んでいる7人の自警団の姿があった。
その中にはリーダーの田茂やこの前助けた山根の姿もある。
「なんだパトロールの休憩中か?」
「いや、それにしてはずいぶん深刻な表情だ」
「たしかに、ちょっと一服して談笑中っていうふうには見えねえな」
「気になるな。このあたりで何かあったのかもしれない」
「もしそうなら俺達もやばくねー?」
「ああ、やばいな。何かあったのか聞いてみよう」
俺と久我は、自警団達の元へと向かっていった。




