武器通販
武器のラインナップは――。
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・木槍 500MP
・青銅の剣 500MP
・スリング 1000MP
・弓矢 2000MP
・初級魔道師の杖 2500MP
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ずらっと並んでいるが、俺のMPで手が届きそうなのはこのくらいだ。
まず気付いたのは、遠距離武器は高い。
スリング(石を飛ばす武器)でも槍や剣より高いし、弓矢はさらに高い。
やはり遠距離攻撃は強いってことなんだろう。
そしてもう一つ大きなこと。
それはこいつ ・初級魔道師の杖 だ。
「めちゃくちゃファンタジーな武器あるんだが」
他の武器は現実にもあるけどこれは明らかにファンタジー世界の存在だ。
非常に気になる。タッチしてさらに詳細を見ると、杖の画像とともに『先端のジェムから魔法の矢を放つことができる初級魔道師の力を誰でも使えるようになる杖』と説明書きがある。
欲しい。
一目見てこれだと思ったね。
魔法が使える選択肢があって、あえて魔法を使わない人がいるだろうか? いやいない。
とはいえ興味本位だけではない。
医者も薬もない状況では魔獣と近接で戦って怪我したくないので、遠距離武器が望ましい。弓矢やスリングは技術が必要そうだから、それならば魔法の杖の方がいいだろう。
どうやら魔法は感覚的に使えるようだからな、雪代の例を見る限り。
念動力の訓練なんて受けてるはずがないが、しっかり使えていたのだから。
しかし2500MPだと所持MPが足りない。また魔石を稼いでからか、そのためには魔獣をかいくぐらなきゃいけなさそうだが。
ピロン♪
『MP+1000』
え?
増えたぞ、突然MPが。
通販ページの所持MPはたしかに『MP2840』になっている。間違いなく増えている。
いったいどういうことだ。
魔石はちゃんと分配した。誰に分配するかをリサイクルボックスのモニターで指定できて、割合も調整できるので、101号室と201号室で50%ずつにしたから。
つまり変にタイムラグがあるってわけでもないし。
考えていると、玄関からガチャっと音がした。
「九重さーん! 振り込んだよ!」
「雪代、何かあった?」
勢いよく入って来たのは雪代だった。
「……って、何も言わないんかい」
「やって来たのは雪代なんだから、俺が言うことは特にないのは普通だと思うが」
「そうじゃなくてさあ、急に入って来たことにたいしてビックリしたとかそういうリアクション? さっきの私みたいに。てか鍵かけないんだ」
「今は世界が崩壊したっていう異常な状況だからな。いつ緊急事態になるかわからない。だから急に入って来れるように鍵はかけてないし、入って来ても何も思わない」
雪代は「なるほど……」と口に指を当てて頷いている。
「で、結局なんの用?」
「ああ、そうよそれ。家賃支払ったからね、きっちり1000MP。これでもう気兼ねなく201号室は私のものだから、よろしく」
「もう払ったんだ。まだ期日あったから先に欲しいもの交換してからでも良かったけど」
「私、そういうの後回しにするの無理な性格なんだよねー。先に片付けたいの」
はっ!
「なるほど、それでか」
「え、どうしたの突然納得して」
「これを見て欲しい」
俺はモニターの前へ雪代を呼び、MPのところを指差した。
「2800MPって、大金持ちじゃん! うらやまー」
「さっきはこんなに多くなかったんだ。ほら」
ポイント履歴を表示する。
すると3分前に+1000MPという記述があった。
「ちょうど私が家賃1000MP払った時ね。…………え、あれって九重さんにいってたの!?」
「そうらしい」
「え、待って。ずる」
「そんな目で見られても困るが。俺だって知らなかったんだ。【マンション】に自動でついてる機能だからマンションに吸収されるもんかと思ってた、通販の支払みたいに。でも家賃だから大家の俺に来るんだな。儲かったよ」
「えー。なんかなあー。理屈はわかりますけどねー」
まさかの臨時収入だ。雪代には悪いけどこれは美味しいな。偶然だけど住民増えてよかった。それに、これならちょうど買える。
俺は【武器】のカテゴリへ画面を遷移した。
「ん? あー、早速なんか買うつもりだ……初級魔道師の杖?」
「明日は反撃の時だ」