いざ、第二マンション建設!
「さてと、行くか」
「かしこまりました。しかし天音様の姿が見当たりませんが」
「寝坊か? まあ少しくらいなら待つか……」
「誰が寝坊よ、地図に書き込んでたの!」
朝、マンションの門の前にいた俺とアンドラスに、エントランスのドアを開けて天音が叫んだ。
「地図に? 何を?」
「自警団と会った場所よ。それと、拠点にしてるっていう小学校……この辺にあるってことは彩草東小ね、その位置をこの地図で照らし合わせてた」
例のエントランスの共用の大きな地図に、天音はペンで書き込んでいた。
なるほど、たしかにそれは必要だ。
「そんなん先にやっておかなきゃいけないのは当然でしょ。どこに美容室作るか決められないじゃない。どうするつもりだったの? 二人とも」
「この前自警団に会ったあたりに作ればいいかなと」
「自分はお二人に従うのみです」
天音ははぁ、と大げさにため息をつく。
「ノープランすぎるわよあんたら。そわそわしてんじゃない?」
天音の指摘は否めない。
ずっと取っておいた星魔石をついに使えるということで、浮き足立っていた。いや、今も浮き足立っている。
何ヶ月越しかで使って、しかも新しいマンションを建設しようっていうんだからしかたない。が、そんな重要な時だから落ち着かなきゃいけないというのももっともだ。
天音の言う通り冷静になって地図を見る。
この町に住む俺も東小は知っている。
俺が通っていたわけではないが、おおよその場所くらいはわかる。
ここからずっと東にいった……そう、この辺だ。
すでに天音が書いてくれているが、マンションから橋を渡ってさらにずっと東に行ったところが、先日自警団と会った場所、そしてそこからさらに南東に行ったところが、東小だ。
「美容室に来てもらうなら、東小に近い方がいいな、当然」
「ええ。でも天音達も利用したいし、遠すぎるのは嫌よ」
「それもそうだ」
せっかくなら俺たちも使いたい。
訪問で切ってもらうよりもっと本格的にできるだろうし。
それに『便利な生活を取り戻した感』もその方がある。
「となると……このあたりか?」
俺は前回自警団と会ったCDショップの場所からやや北西に行った場所を指差した。
「そこ? ちょっと東小から遠くないかしら。北より南の方がいいんじゃ」
俺が指差したより南に赤い点が小さくつけてある。
天音も似たようなことを考えていたようだ。
「たしかに東小の人にとってはその方が近いけれど、南に行くほど自警団と敵対してるあいつらが面倒だ」
「ああ、それは天音も迷ったのよ」
「美容室なんて毎日行くものではないから、ちょっと遠いくらいは我慢してもらう」
「そうね。考えてみれば、昔は天音も隣県の美容室まで行ってたわ。こんなことになって忘れてたけど、ちょっと遠いくらい気にするほどでもないか」
建設予定地を決めたら、俺たちはいよいよ出発した。
まずは東へ東へと向かっていく。橋を越えてさらに東に行くと、この前見たCDショップが見えてきた。
それが視界に入ったあたりで北へと方向転換。
さらにしばらく進んで行くと、
「失礼します。自分、気付いたことがあるのですが」
アンドラスが丁寧に口を開いた。
これまで眼光鋭く周囲の様子を調べていたが、どうしたのか。
「あそこにコンビニエンスストアと呼ばれるものがあります」
アンドラスが指差した方を凝視すると……。
「まあまあ遠くない!? しかも看板も半分壊れてるし、よく見つけたわねアンドラス君」「お褒めにあずかり光栄です。いかがしますか? 貴重な物資を補給するチャンスかと思いますが」
たしかに、目的はマンション建設だが、せっかく見つけたコンビニをスルーする必要もない。俺たちはいったんコンビニによることにした。
だが、
「うわ、しっかりいるわね魔獣が!」
「よりによってコンビニの前に。しかも複数」
コンビニに近付くと、魔獣の姿が明らかになった。
頭が前後にある奇妙な蛇の姿をした魔獣が五匹もとぐろを巻いている。
「気持ち悪いわねー、ただでさえ蛇なんて鳥肌立つのに二倍鳥肌よこんなの」
「そして二倍噛みつかれそうだな。リプレイ頼む」
俺は魔法の鞄から杖を取り出し攻撃を――。
「ここは自分におまかせください、邪魔をするものは排除いたします!」
だがそれより早かったのはアンドラスだった。
瞬速で前に出ると、パイロマンサーの能力で火炎を放つ。
有無を言わさぬ先制高火力で2匹の蛇魔獣が焼き尽くされた。
さらにこちらに気付き襲いかかろうとするより先にアンドラスが二度目の炎を放ちまた二匹が蛇の丸焼きに。
残った一匹はシャーシャー言いながら逃げていった。
あ、頭が左右別々の方に逃げようとして喧嘩してる。
「あはっ、面白いわね。前後それぞれの頭に逆方向から餌付けしたいわ」
「えげつないな。だがまああの一匹はもう放っておいていいな」
「そうね。それにしてもアンドラス、すごいやる気ね。あまりにも電光石火すぎて天音がリプレイする暇もなかったわよ」
アンドラスは最高の角度でお辞儀をして答える。
「お褒めにあずかり光栄です。それではコンビニに参りましょう」
アンドラスは一歩一歩を大きくコンビニに向かっていく。
俺たちもあとをおい、コンビニに入ると中の製品は結構無事だった。
袋に入ったポテトチップスやチョコレートは、密封状態にあるので今でも中はちゃんと食べられる状態だ。
それらをアンドラスが――鼻がくっつくほど近くで凝視している。
ああ、なるほど、そういうことか。
マンション建設にいくと言ったとき、アンドラスが是非ご一緒したいと言ってきた。
なんでまたと思いつつも東の方は魔獣もいるから火力の強いアンドラスが来てくれて悪いことはないからありがたかったのだが、これが目的だったんだ。
こっちの方は店が多い。
つまり、マンション通販では手に入らないメーカー産のお菓子がまだ残ってる店があるかもしれないと思ってついてきたんだ。
「さすがアンドラス、ぶれないな」
「こういう人だったのね。意外……」
驚く天音や俺の存在を忘れたように、アンドラスは買い物についてきた子供のようにお菓子に目を輝かせていた。




