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4ないよ

 ひとまず保留にすると決めて、その場はお開きになった。

 雪代は「これなくても20000MP以上もらったし、それどうするか考えないとだよねー」と言いながら隣の自室へと帰っていった。


 俺もこの大MPをどう使うか俺も考えないとだな。


 そう考え始めた時だった。

 にわかにマンションが震え始めた。


「地震!? ……いや、この揺れはいつものアレ(・・)だ」


 俺は部屋の外に出て、階段を登っていく。


 階段を一番上まで登ると501号室の表札が目に入る。

 やはりそうだった。自然公園の冒険のおかげか、マンションがさらに拡張され5階建てになったんだ。

 この前までは3階だけど一気に5階まで伸びたんだな今回は。


 ……あれ?


「ちょ、ちょっとなによ今の!? この異空間でも地震って起きるの!?」


 その時、浮かびかけた疑問を吹き飛ばすように、俺を追いかけて階段を駆け上ってきた天音が慌てた様子で尋ねてきた。


「いや、マンションが成長したんだ」

「マンションが? 成長?」


 膝に手を突きはーはーと息を切らしながら、天音は目に疑問を浮かべる。


「大きくなることがあるんだよ」

「何それ……って、501号室? 外から見たら3階までしかなさそうだったのに」

「そう、それがマンションが大きくなった証。さっきまでは3階だったけど、今は大きくなった。魔石をたくさん投入するとどんどん大きくなるんだよね。最初は101号室しかなかったとこからここまで成長したんだ」

「そんな仕組みもあるのね、驚き。でもそれなら天音が住んでも部屋は全然余裕ってことね。……あ、そうよ」


 天音が新しくできたばかりの501号室を指差した。


「じゃあ天音がこの部屋に住んでもいいのね?」

「もちろん」

「よしよし。高い方が見晴らしもいいし、良い部屋選べたわ」


 たしかに見晴らしはいいよな、うちは一階だからその点では負けている。

 もっと上の部屋に引っ越そうか。新しくできた空いてる部屋があるんだから文句もないだろうし。でも荷物移すのが面倒だな。


 しかし何か忘れてるような……。


「ところで九重くん、四階ってあったかしら? このマンション」

「……それだ」


 天音に声をかけられる寸前に気付きかけた違和感はそれだ。

 ここに上がってくる時、階段の踊り場が一度じゃなく三度も繰り返されていた。

 それがおかしかったんだ。


 もう一度階段を降りて確認すると、やはり5階から降りると長い下り階段の後に3階に到着し、4階がなかった。

 本来4階があるはずの場所は、狭い踊り場があるだけだ。


 ふと思い立って横に広がった分も調べてみると、501,502,503,505号室、となっていた。

 まさか……。


「これ縁起が悪いから4はないってことか、もしや」

「ああ、そういうのあるわよね。………………いえ、部屋はともかく階がないことなんてさすがになくないかしら?」

「俺も見たことないけど、でもこの一致と4階だけピンポイントでない理由、他になくないか」

「…………そうね。マホウで作ったのよねこのマンション?」

「ああ、間違いなくそう」

「九重くんって深層心理で迷信とか結構信じるタイプ?」

「絶対関係ないと思う。ただただ変な能力ってことなんだろうな。俺は真面目なのに」


 天音は無言で目を細めた。




 そして天音は501号室に入居し、俺は101号室に戻った。


 それでは自然公園で稼いだ普通のMPを使って我が家を便利にしていこうか。


 端末で確認すると今のMPは27468もある。

 これを何に使うか考える楽しい時間の始まりだ。


 まずは不足してるものから買うことにしよう。

 靴と服、これを補充しないといけない。何せほとんど毎日外出して、廃墟を動き回っているから、前に買ったものはボロボロになっている。

 靴のクッションは瀕死だし、服もところどころ引っかけて敗れたりしているし。


 このあたりのものを予備も含めて購入するのに3000MPほど使った。

 あとは掃除用品や石鹸とかシャンプーとかティッシュとかその辺のものも色々全部補充して1000MP弱。


 ここから先は新たに欲しい物のコーナーだ。一番楽しいところだな。


「まずは……時計が欲しいな」


 正確な時間を計れれば役に立つことは多い。時間がわかる方が効率的に行動ができるし、時間帯によっての町の状態の変化なんかもはっきりと記録できる。

 今は太陽の高さと体内時計だけだから相当曖昧なんだよな。


 また、複数で行動するときに、時刻をあわせられると便利だ……もっともそのためには他の人にも買ってもらわなきゃいけないが。

 時計は有力候補。


「そして、電子レンジと電気ケトルも欲しいな」


 たしかに今でも水と食料に困ってるわけじゃない。

 しかし温かい食事を食べたい気持ちは日に日に強くなっている。

 電子レンジがあれば温められる、これは大きい。お湯を沸かす手段もあれば紅茶やコーヒーも飲めるし、俺にとっては人生変わるレベルの重要なものだ。


 これまでの活動の甲斐がありとりあえず生存に必要なものは一通り揃った。エアコンとか魔法の杖とか食料とか着るものとか。


 となるとこれからはよりよい暮らしのためにMPを使っていける。

 より愉快な気持ちでMPを使っていける。


 さて、何に使ってやろうかな。


「んーー……そうだな、椅子ないんだよなこの家」


 今は小さなちゃぶ台で全てをやってるけれど、そろそろ椅子とデスクが欲しい。

 何かやる時、狭すぎる。今のちゃぶ台では。

 それに椅子に座ってデスクで作業する方が楽だ。


 一応、ものを書くことは結構多い。

 崩壊した世界がどうなっているかなどわからないから、見たものはできるだけ記録するようにしているから。


 どこにどんな魔獣がいたか、魔石の性質や見つけた場所、無事な物資が見つかった場所、またどのような物資があったか、物資の状態。危険な地形。

 これまでにMPで購入したものが実際にどれくらい役に立ったか。効果的なマホウの活用方法。

 一度購入した商品のレビュー、また買うべきかあるいはもう買わないべきか。等々あらゆる気付いたことを。


 そういうときにやはり椅子とデスクがあると便利だろう。

 腰の健康にもいいしな……と俺は端末から椅子とデスクを調べた。


「椅子の種類多いな。ええとゲーミングチェアが……20000MP!? たっか! でも座り心地はいいんだろうな。こっちのオフィスチェアは……こっちも20000MP!? 腰は痛くならないんだろうけど、さすがにこれは……普通のチェアにしておこう。それなら1000MPも出せば買える」


 贅沢しようと思ったが、さすがに妥協。

 それとあわせてデスクも購入する。


 あと欲しいものは……考えつつ顔に何気なく手をやると、髭の感触が。 

 ああ、電動ひげ剃りが欲しいな。手動でやってるけど、電動なら楽だし……いやでもさすがにそれは贅沢か? 手動でもできることだしな。

 いくら快適さを求めるといっても、限度はある。だからこれは我慢しておこう。


「……でも一回くらいなら贅沢してもいいかもしれない。ここまで頑張ってきたのだし」


 俺はおもむろに、通販の食べ物の欄をタップした。

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― 新着の感想 ―
あんなにマジックバッグって言っていたのに スカッと忘れてるし 電動髭剃りよりポーションが優先じゃないの? 書き物をするのにメモは残さない ネコチャンのような主人公よ
建物が高くなるとエレベーターが必須になる。 高さばかり増えて横に部屋が増えないと、アスパラハウスみたいになるだろう。 将来的にマンションの形も変わると面白いかもね? 目指せ、デザイナーズマンション!
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