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成長するはマンション

─────────────

【強い魔法の品物】《NEW》


◆ マジックポーション 500MP

◆ マジックポーチ 5000MP

◆ マジックファーティライザー 1000MP

    ・

    ・

    ・

─────────────


 マジックポーチ? 魔法の肥料?

 まるでファンタジーに出てくるような名前のアイテム達が!?


 まるでどころじゃない。この品々は【強い魔法の品物】って分類にあるんだからどう考えてもファンタジーなアイテムだ。しかも強いらしい。


 とにかく商品説明を見てみよう。

 まずはマジックポーチをタップして商品説明ページを見ると。


『手のひらサイズのポーチの中に、100リットルまでの体積のものを入れられます。中に入っている限り重量はかかりません。(肩掛けストラップ3色付)』


 とのことだった。

 つまり、ファンタジー小説やアニメでよく見る、魔法の鞄まさにそれだ。


「ついにきた……きてくれた」


 通販で買ったものが入っている箱には、箱より大きいものでも重いものでも軽々と入っているから、マンションの力はそういうことも可能だとは考えていた。


 ついにそれを通販で買えるようになったんだな。

 絶対便利、これは間違いなく「買い」だ。


 どこに植えても育つ種など、現実にあったものとは違うものは前から通販されていたけど、それはマンション通販基準ではそんなに強くない魔法だったんだろうな。そこから進化してもっと強力な魔法の道具が販売されるようになったと。


 あらたに解放された通販商品、マジックポーチ以外もどれも役に立ちそうでガチャより有用そうだ、気付けてよかった。

 さて他にどんな魔法のアイテムがあるか見てみよ――。


 ゴゴゴゴゴゴ……。


 地震!?

 この空間でも起きるのか!?


「……いや、これは違う。マンションだけが震動してるようだ。ということは……」


 マンションの外に出ていくと、他の住民達も飛び出してきていて、マンションを見上げている。


「やっぱり、マンションが大きくなってたのか」


 魔石をリサイクルボックスに多く投入するとマンションが成長する、過去にも二度成長を目にしたが、その現象が今また起きたのだ。

 通販に新しい品物が出たのとあわせて、二つの側面でマンションが進化したした。


 マンションは横にも縦にも俺たちが見る前で大きくなっていき、今では303号室まである結構大きな建物になっていた。合計9人、いや9世帯まで入居可能だ、大きくなったもんだな。


「こんなこともあるんですね」とは日出の言。「大きくなるところ見るの面白いね」とは雪代の言。


 そして楓は、


「マンションが大きくなっただけじゃなく、他の変化もあったんです。先ほどマンション通販の端末を操作していたら気付いたんですが――」

「強い魔法の品が増えていた」

「九重さんも見つけたんですね」

「ああ、面白そうなのがあった」


 俺と楓は気付いてなかった二人に説明し、皆で商品を見てみることにした。

 マンションの拡大が止まったのを見届けてから四人で俺の部屋に行き、さっきの【強い魔法の品物】のページになったままの端末を確認する。


「ええええ!? すごい! こんなの増えたの!?」

「ただでさえ通販で便利でしたのに、魔法の道具まで使えるようになるなんて、こんないいことあっていいんでしょうか!?」


 初見の二人が驚きの声をあげた。


「色々ありますが、私はこのファーティライザー、肥料が気になります」


 そして楓が指差したのはマジックファーティライザーだった。

 理由は聞かずともわかる。マンション美化計画の助けになりそうな品だものな。


『あらゆる植物に対応し、成長を大幅に促進させることができる肥料。成長速度、成長量ともに増大する。成長が遅ければ遅いほど成長加速度が重なっていき肥料の効果は増す。また、虫害や高温低温などにも強くなる付与効果もつく』


 これはマジック。

 成長促進もすごいけど、ちゃっかり農薬のような効果に気温耐性までついてるのは高性能すぎる。【強い魔法の品物】という名前に偽りなしだ。


「これ、すごい性能ですよね。必須だと思います」

「本当につよつよだねこの肥料! これはそっこー『買い』でしょ!」


 早くマンションに緑が増えるなら言うことないし、俺たちは魔法の肥料を共同購入し、試してみることにした。

 説明書きによると、育てたい植物の周囲の土の上にまくタイプらしい。見た目は真珠のように艶やかな粒が袋に入っていて、一袋が4㎡分程度ということだった。


「まずは何か一つで試して他と比較検証してみようか」


 そこでトマトを植えた種の周りだけに肥料をかけていった。

 さて、どうなるか経過観察してみよう。




 二日後にもう明確な変化があった。

 肥料をまいた周囲が、耕された畑のようになっていた。この肥料は植わってるものにとって適した土壌環境にしてくれるようだ。


 ……いや、種の説明にどこに植えても育つって書いてあっただろう。

 それを信じて芝生にそのまま植えたのに、実は現実と同じく耕したりとかそういうことをちゃんとやった方がよかったってことだろうこれは。

 どこでも育つ(育ちやすいかはまた別の話)っていう意味だったか。


「説明不足なんだよな、マホウって。マンションが大きくなる条件も明示されず急に広がったしさあ」


 まあ、それを言ったら心臓や胃腸の仕組みも説明ないまま動いてるわけだから、自分の一部として見れば説明ない方が自然なのかもしれないけれども。


 とまあマホウへの苦情は置いておいて、トマトのところは土からして変わっていた。さらにトマトの双葉もにょきっと出ていて、次の葉も作られはじめている。


 さらに翌日になると、かなり背が伸びていて本葉が広がっていた。

 一方で他の野菜達はまだそこまで育っていない。

 つまり肥料でがっつり成長加速していることが検証できた。


 これは必須だ、特に樹を育てる上では肥料がないと何年かかるかわからない。


 この肥料の結果を踏まえて、マンションの住民会議――ただ家庭菜園の前に並んで立って話しただけ――を行い、新しい種を買うより、いったん既存の種全てに魔法の肥料が行き渡るようにしていくべきだという方針を確認した。


 会議後、部屋に戻った俺は通販端末を起動した。

 そこには多数の商品ラインナップがあり、俺のMP:3320と表示がある。

 MP不足ってことはないが……しかし、MPの使い道が増えすぎだ。


 植物に、家電に、マジックポーチも欲しいし、ガチャも当たりを引きたい。

 いくらあってもMPが足りない、これが嬉しい悲鳴というものか。


 こうなった要因の一つは、日出が入居してくれたことだ。人数が増えたおかげでマンションに捧げる魔石の量が増え、早期に新たな通販の機能が解放され優れた品を手に入れられるようになった。


 ということはだ、さらに入居者が増えれば、さらに多くの魔石をマンションに捧げて、より大きく、より便利に、より快適なマンションにできるということだ。


 住民を増やすこと、これが大事になってくるな。

 これからは積極的に探していこう。そのためには探索範囲も広げていきたい。しばらくは探索強化月間にしていくか。魔石と住民、両方を探すために。


「……しかしこの暑さじゃ、遠くまで探索するのきっついだろうなあ」 


 今日は湿度も気温も高くて不快指数が高い。もう夏本番が目前だからしょうがないけど、マンションの中にいても暑い。


 実のところこのマンションのある空間、空に関しては外と同じなのだ。

 同じ時間に太陽が昇り沈み、星も同じ位置に輝き、外が晴れならここも晴れ、外が大雨ならここも大雨。


 それはまた、外が暑ければここも暑いし、外が寒ければここも寒くなる、気温も連動していることを意味している。

 だから今日みたいな日は、暑苦しくて、ただいるだけで体力が奪われる。


「外に出てる間に暑いのは水を飲んで耐えるしかないとしても、暑いとこから帰ってきてもまだ暑いのが継続するのはさすがに嫌だな。マンションにいても回復できない。翌日の活動にも支障が出かねない。というか普通に暑すぎて無理だ……」


 もはや正確な日付は怪しくなってるけれど、異変が起きた日から俺が一ヶ月ほど寝ていたことを計算にいれると、もう7月が近付いていると思われる。

 そして最近の夏はエアコンなしで乗り切れる限界を超えている。


「エアコン通販だ! 暑い中遠くまで探索して魔石採取して帰ってきた部屋の中まで猛暑じゃ、住民全滅必至!」


 マジックポーチも肥料もガチャも欲しいが、真夏の暑さ対策は全てに優先する。


 住民を増やすためにもマンションをより便利にするためにも、エアコンを入手するのは重要事項。

 まだ手つかずの魔石がたくさんある未知の土地の開拓も視野に入れて、一刻も早くエアコンのある生活を手にするのだ!

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― 新着の感想 ―
無差別に居住者を増やせば良いと云う話ではない。 目的と相性を優先して選ばないと、後々取り返しのつかない結果になる。 独り身ばかりでファミリーが居ない、話に厚みを持たせる為にも年齢の幅を拡げては?
熱・炎・氷の能力者がマンションの入り口だけに冷やしたりあっためたりすれば マンション全体も温度変わるかも?
「空が同じ」だと、外と空間が繋がっている(飛行系のモンスターが侵入可能)のように読めます。「天気が同じ」のほうが良さそうな気もします。(なにかの伏線だったらすみません)
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