第2話 スキル発動、異世界での初バトル
眩い光に包まれて、気づけば俺たちはどこかの草原に放り出されていた。
「いてて……」
今でも信じられないが義妹と一緒に、異世界に来てしまった。
莉乃の方を見ると、冒険者っぽい服に変わっており、明るめの茶髪ツインテが風になびいて、ミニスカ+ポンチョの冒険者ルックが妙に似合っている。
俺も同じような見た目の、革の軽装に変わってる。
どうやら、こっちの世界の初期装備らしい。
「にーちゃん、黒髪にその装備だと初心者アバターみたい!!」
莉乃は、あははと笑いながら俺の方を指さした。
「いや、俺たちは実際のとこ初心者だろ……」
「にーちゃん、空がめっちゃキレイ!!」
「ってかさっきから、テンション高ぇな…… なんでそんなに元気なんだよ……」
「だって〜 楽しそうじゃん〜!!」
「つーか俺たちって帰れるのか??」
「あ、そーじゃん!! もっとプリン食べておけばよかった!!」
「現世の後悔で一番最初のがそれかよ……」
日本に帰れるかどうかもわからない状況だってのに、いつもと変わりない莉乃に呆れていた。
そんなやりとりをしていると、遠くでぷるぷると何かが跳ねているのが見えた。
「……スライムか? あれ」
青いゼリー状の物体が、こちらに向かってぴょこぴょこと跳んできている。
よくあるファンタジー作品で登場する、最弱モンスターだ。
「わー!! リアルなモンスターだー!! テンション上がるよー!!」
「お前、戦う気ゼロかよ……」
とはいえ、俺だって武器もない。
見た目的に毒を持っているかもしれないので、うかつに手ぶらで戦える相手じゃない。
「……そうだ。《創造》って、なんか作れるスキルだったよな?」
試しに思い浮かべる。ゲームで見た、RPGゲームに登場するの伝説の剣。
エクスカリバーのような、キラッキラで強そうなヤツを。
すると、俺の手元に大剣が現れた。金と青を基調にした、いかにも「チート武器です!」みたいなやつ。
「うおっ、マジで出た……!」
その瞬間、脳がズキンと痛む。
両膝がガクッと崩れ、軽いめまいがした。
「うっ……な、なんだこれ……頭が」
「にーちゃん!? 何その武器!? てか顔色やばい!!」
まるで一晩中ゲームやってた翌朝みたいな脱力感。
どうやら、魔力をめちゃくちゃ使った代償というものだろう。
(そういえば神が魔力を消費だか、なんとか言ってたな……)
ふらつく体で、スライムに剣を振り下ろす。
剣が地面ごとスライムを真っ2つにして、ド派手なエフェクトと共に爆散した。
「ピギィィィ!」
スライムはゼリー状の残骸を残して、光になって消えた。
この世界で良かったと思える点は、幸いなことに死体とか血が出る世界ではないみたいだ。
「……な、なんとかなった…… けど……」
俺はその場に倒れた。
俺と莉乃にスライムを討伐した分の、経験値が付与された。
「にーちゃん!? ちょ、顔色悪いんだけど!? 病院!? 異世界に病院ある!?」
「やれやれ、スライム一匹でこれかよ…… この先、死ぬ未来しか見えねぇ……」
剣は手から煙のように消えていた。
一度の戦闘で消えるタイプか、魔力が尽きて維持できなくなったんだろう。
(能力の発動条件は理解したが制約とかは、研究してみないとな……)
「わかった…… 創造スキル、派手に使うと死ぬ……!!」
「にーちゃんのチート、デメリット重い!!」
それでも、使い方次第ではなんとでもなる。
多分レベルが低く、魔力の上限のようなものが低いのだろう。
チート能力とはいえ、ある程度修行というか研究をしないといけないのは不便に思うが、俺は反対にやりがいがあるように感じる。
「まあ、とりあえずステータスのスキル確認しよう」
「うん!!」
RPGゲームのように手を振り下ろすと、俺のステータスが表示された。
⸻
【西條 湊】
レベル:2
職業:冒険者
スキル:創造
⸻
体力や魔力の表示がなかった。
おそらく現実世界の体力と同じく、感覚で知るものかもな。
全く、魔法があるってのに、不便な世界だ。
俺に続いて、莉乃もノリノリでステータスを確認した。
⸻
【西條莉乃】
レベル:2
職業:なし
スキル:なし
⸻
「……スキル、ねぇぞ」
「……は?」
莉乃がぽかんと口を開ける。
「職業やスキルがなにもない」
「え、えええ!? あたし、ただの一般人!? せめて“元気”とか“お騒がせ”とかのスキル欲しい!」
「そんなスキル聞いたことねえよ!!」
俺がチートで、莉乃は完全なる無能力者。理不尽すぎる格差社会がここに誕生した。
神が莉乃の登場がイレギュラーと言っていたので、付与できる力が俺のだけだったのだろう。
正直俺は、世界を救うとか1ミリも興味がないので、こいつに俺のを付与されればよかったのに。
「……そっか、にーちゃんだけか」
小さな声で呟く莉乃の方を見ると、一瞬だけ莉乃の顔に影がさす。
でもすぐに、にっといつも通り笑顔を取り戻した。
「いいもん!! スキルなくても、にーちゃんの盾か荷物持ちになるから!」
「どんな決意だよ……」
「任せてよ〜!!」
「あのな、義理とはいえ妹を奴隷みたいにするのは気が引ける」
「にーちゃん、やっさしい!!」
こうして、俺たちの異世界生活は、波乱のスタートを切った。
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