興味深いと思いまして
皆様、こちらの作品に興味を持っていただきありがとうございます。
今回の主人公は、倫理観が備わっていないタイプの人外キャラクターとなっております。理不尽な暴力表現もございますので、予めご了承ください。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
学園ものファンタジー作品という言葉を皆様は聞いたことがあるでしょうか?
私はその作品を一度読んだことがありましてね。とても愉快で非現実的で……。魅力的な話だと感動した覚えがあります。
何故、こんな話を冒頭からしているのか?
実は、私の現状が「異世界転移」して、「学園ものファンタジー」世界に来てしまったからです。
数秒前までは魔法なんて非科学的だと言われる世の中でした。それが、職場で瞬きをしただけで、箒で空を飛び、荷物は地面から唐突に現れ、動物が人の言葉を話す世界になるとは。
剣と魔法の世界よりは発展しているようですが、科学と魔法が同時に存在する……面白い場所なんですよ。
さて、異世界に来たは良いものの他に何をするのが定石なんでしょうか?確か、以前読んだ小説には「無双」とか「最強」とか単語が並べられていました。私もその伝統を守るべきか……。
最強になった物語の主人公は、美しい女性と結ばれてハッピーエンド。これが、人間が考えた面白いストーリー。人の心が分からない人外の私が生きていくには、小説をガイドに進む方がより安全。
一先ず、私の身分をはっきりさせて、必要ならば職探し、または目の前の学園の入学手続きといきましょう。
あ、その前に誰かと喧嘩するのも物語の鍵でしたっけ?近場の人物を殴れば手っ取り早いのですが。こちらの法律を知らずに手を出すのは得策ではありませんね。
それならば……、現地の人間に尋ねるのが正しい行動。食品店の職員らしき女性に聞いてみることにします。彼女、とても優しそうですし。
『すみません、少しお尋ねしたいのですが。私、道に迷ってしまって……』
「△□◆、〜〜◯◯△■!」
おや、元いた世界と言語が異なるようですね。ふむ、では彼女に合わせるとしましょう。意味は大体理解出来ますし、発音だけ真似れば……。
「私、道に迷っているんです。良かったら教えていただけませんか?」
「あぁ、良かった!この国の言語も話せる方だったんですね。他国に詳しい店員を呼んでこようかと思っていました!」
意思疎通、成功です。
さて、後は戸籍登録ができる場所を教えていただきましょう。そもそも概念が存在するかも不明ですが。
「それで、目的地はどちらですか?」
「はい、実はこちらに行きたくて。ある物を探しているんです」
「ある物?取り敢えず、貴方の地図を見せてもらえれば案内でき……」
彼女が私の瞳を見た瞬間、本人の脳内から異世界の一般常識を読み取る。
中々興味深い。
こちらの世界は、私が元いた世界と近しいものがありますね。戸籍登録のやり方も探れましたし、彼女を解放しましょう。
「ご親切にどうも。貴女のおかげでこの国の良さがよく分かりました」
「え?まだ、何もお伝えしてな……」
「おや、覚えていませんか?とても丁寧に教えてくださいましたよ?」
貴方の記憶がね。
さて、予定変更です。まず、服屋や本屋を目指すことにします。せっかく、異世界に来たんですから楽しまなくては。
買い物をするには、お金が必要。因みに己で作るのは無料という考えだそう。おっ、丁度よい。入口に本を並べているタイプのお店がありました。
ふむ、ファッション雑誌ですか。この中で人混みに紛れそうな服装は……。ラフな紺のシャツと黒のパンツ、ベルトは無難に茶色で。まあ、これで良いでしょう。私の着ているスーツは、異世界産とデザインが絶妙に違うんですよね。
人目を盗み、スーツを作り変えればあら不思議。何処にいても違和感のない一般人の完成です。
そういえば、こちらの世界って魔力がないと不可思議な力を行使できないんでしたっけ?困りました。私、魔力なんて持ってないです。でも、人の記憶を書き換えるのは得意ですし、なんとでもなりますよね!
あ、名前は何にしましょう。人間の世界は特別視する記号ですし、慎重に考えなくては。名無しじゃ怪しまれますよね。先程読んだ雑誌名からもらって「ルナ」なんてどうでしょう。性別は以前の世界で男性として過ごしていましたし、そちらで。
さっ、後は私の身分を作るだけです。何て油断していたのがいけなかったのでしょうか。
思いっきり、見知らぬ青年とぶつかってしまいました。
「おい、テメェ……、何処見て歩いてるんだ!お前のせいで一張羅が破けちまったじゃねぇか!!しかも、肩の骨までイカれちまった」
私には服は破けていませんし、怪我もない様に見えますが……。これって、以前読んだ小説の喧嘩イベントですかね?行事なら一応、買うべきでしょうか。
「申し訳ないです。私の不注意でこんなことになってしまって」
「どう落とし前つけてくれんだ?ア゙ァ?」
「では、こうしましょう」
青年の胸ぐらを掴み、壁に叩きつける。繰り返し念入りにぶつけ、彼の肩がまともに扱えない様に、しっかりと慰謝料が払えるように傷付ける。
「はい、これで貴方の言う通り服は破け、肩が壊れましたね。ちゃんと医師のもとに届けますから安心してください」
完全に気絶した青年を背負い、私は病院へと向かうのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。