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放課後サバイバルゲーム  作者: 柊れい
連戦連敗の日々
8/49

#2-5


「さて、今日もサバイバルゲームやろうか!」


美月が明るく声をかけてくる。もう何度このフレーズを聞いたことだろう。毎回同じゲーム、同じ負け方。そして、気づけば僕はすでに10連敗を記録していた。


「10回も負け続けてるのか…」


内心、少し驚いた。勝ち負けに対して特にこだわりはなかったはずだ。ただ適当に駒を動かして、ゲームが終わるのを待つだけ。それで満足していた。でも、10回も続けて負けるとなると、さすがに気持ちが揺らぐ。



「瀬戸くん、今日こそは勝てるかもよ!」


美月の無邪気な笑顔に僕は苦笑いを浮かべた。彼女はいつも前向きだし、楽しそうにゲームをしている。でも、僕にとってはそうでもない。この10連敗、彼女は全く気にしていない様子だ。むしろ、それすら楽しんでいるように見える。


「いや、今日はどうかな…」


言葉に力が入らない。どうせまた負けるだろう、という予感が強くて、やる気も湧かない。それでも美月は気にすることなく、すでにゲームの準備を始めている。


「まあ、勝ち負けなんてどうでもいいよね」


そう自分に言い聞かせる。ゲームはあくまで楽しむためのものだ。勝つことが全てじゃない。けど、どうしてだろう。最近、この負け続けている感覚が妙に引っかかる。勝ち負けに無頓着だったはずの自分が、少しずつイライラしているのを感じる。



「瀬戸くん、今日の対戦相手は誰にしようか?」


美月が対戦相手を選ぶのを手伝ってくれと言ってくる。今までは彼女や田中くん、それから他の部員たちとやってきたが、全員に負けている。誰が相手だろうと結果は同じだ。


「誰でもいいよ。どうせまた負けるし」


つい本音が漏れてしまった。美月は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに明るい声で返してきた。


「でも楽しいでしょ?」


「楽しいかどうか…」


僕は答えに詰まった。楽しいのだろうか?負け続けているのに楽しめるなんて、本当にそう思っているのか?確かに美月や他の部員たちは楽しんでいるように見える。けれど、僕にとってはそうでもない。


ゲームを始めた当初は、何も考えずにただ流れに任せていただけだった。それが「楽しい」という感覚だったのかもしれない。でも、10回も負けると、さすがにその感覚も薄れてくる。


「うん、まあ…それなりに」


何とかそう返事をしたが、心の中ではモヤモヤが広がっていた。楽しいと言い切れない自分がいる。負け続けることが面白くないのは明らかだ。



ゲームが進むにつれて、僕はますます投げやりな気持ちになっていた。駒を適当に動かし、資源を無駄に消費するだけ。何度も繰り返してきた負けパターンが頭の中で再生される。


「もうちょっと考えてみたら?」


美月の声が耳に入るが、今はそれすらも面倒に感じる。


「いや、どうせ無理だよ」


そんな言葉が自然に口をついて出る。美月は気にせず笑っているが、僕にとってはその笑顔すらもプレッシャーに思えてくる。



ゲームが終わると、やっぱり僕は敗北していた。10連敗どころか、これで11連敗だ。勝ち負けなんてどうでもいいと自分に言い聞かせてきたが、この連敗記録が僕の心をじわじわと蝕んでいるのを感じる。


「次があるよ、瀬戸くん!」


美月は相変わらず明るい。彼女にとっては、勝ち負けよりもゲーム自体を楽しむことが重要なんだろう。でも、僕は違う。負け続けることがこんなにも辛いとは思ってもいなかった。


「次か…」


そう呟いてみたが、正直なところ、次なんてもうどうでもいいという気持ちが心の中にある。それでも、次の対戦が待っている。勝つためにはどうしたらいいのか、もう少し考えてみるべきかもしれない。

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