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放課後サバイバルゲーム  作者: 柊れい
連戦連敗の日々
5/49

#2-2


部室に入ると、すでに美月はボードゲームの準備を進めていた。僕が入ってきたのを確認すると、満面の笑顔で手を振ってくる。


「瀬戸くん、今日もがんばろうね」


「うん…」


頷きながらも、心の中では既に不安が広がっていた。前回の交渉ゲームも散々だったし、今回もまたよくわからないまま終わるんじゃないかという予感が拭えない。僕はそもそも、ボードゲーム自体にそこまでの興味がない。なのに、なぜこんなに連敗を重ねながらも美月に付き合っているのだろうか。


「今日は、カードを引いて駒を動かすだけのシンプルなゲームだよ!」


美月が説明してくる。どうやら今日のゲームは、もっと簡単らしい。カードを引いて、その指示に従って駒を動かすだけ。頭を使う必要はあまりないと言っていたが、果たして本当にそうだろうか。


「簡単って、どれくらい簡単なの?」


「うーん、ルール自体は簡単だけど、戦略は奥が深いんだよね!」


結局、また戦略なのか。僕は内心でため息をついた。戦略という言葉を聞くたびに、勝ち目が遠のいていく気がしてならない。



ゲームが始まり、僕は早速カードを引く。そこには「一歩進む」と書かれていた。指示通りに駒を動かし、次のターンを待つ。最初は順調そうに見えたが、徐々に他のプレイヤーたちが駆使する戦略が僕には理解できなくなっていった。


彼らはカードをうまく引き、次々と駒を進めていく。僕はただ無作為にカードを引いて、適当に駒を動かすだけ。それが唯一の手段だった。頭を使って考える余裕もなく、ただ流されるままに手を動かしていた。


「瀬戸くん、もうちょっと考えてやった方がいいかもよ」


美月が優しく声をかけてくるが、僕にはそれを実行する気力がなかった。考えろと言われても、何をどう考えればいいのか分からない。カードの効果や駒の配置を見ても、それがどう勝利に繋がるのか全くイメージが湧かないのだ。


「いや、無理だよ」


自分の駒が他のプレイヤーの駒に挟まれ、身動きが取れなくなる。どうやら早々に詰んでしまったようだ。他のプレイヤーたちは笑顔でゲームを進めているが、僕だけが早々に敗北が決まってしまった。


「やっぱりね…」


ぼそりとつぶやく。自分が負けることは最初から分かっていたのに、それでもどこか悔しさが残る。美月の言う通り、少しは考えればよかったのかもしれないが、そうする気力がどうしても湧いてこない。



ゲームが終わり、僕はまた最下位だった。他のプレイヤーたちは楽しそうに振り返りをしているが、僕はひたすら静かに次の展開を待っていた。そんな僕を見て、美月がにっこりと笑いかける。


「次があるよ!」


その明るさに、少しだけ救われた気がしたが、同時にプレッシャーも感じた。次、次って…本当に僕に次のチャンスなんてあるのか?


「うん、そうだね」


僕は苦笑いを浮かべながら返事をするが、内心では全く別の感情が渦巻いていた。負け続けるのは、面白くない。これまで何度もゲームに負けてきたが、今日は初めてそう感じた。


ただ、だからといって急にやる気が出るわけでもない。まだ僕の中で真剣に考える力は湧いてこないし、次のゲームでも同じように負けるんだろうな、という予感が頭を離れなかった。



その日の帰り道、僕はぼんやりと歩きながら、今日のゲームのことを振り返っていた。あの時、もう少し考えていれば違う結果になったのだろうか?いや、きっとどのみち負けていただろう。そんな自己弁護をしながらも、少しだけ悔しさが残る。


「瀬戸くん、次はもっと勝てるよ!一緒に練習しようね!」


美月がまた元気いっぱいに声をかけてくる。彼女のその明るさが僕を励ましてくれる反面、やっぱりどこかでプレッシャーにもなっていた。


「うん、まあ…次は頑張るよ」


そう言いながらも、次こそは勝ちたいという気持ちがほんの少しだけ芽生えていた。それが僕にとって、最初の一歩だったのかもしれない。

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