#6-3
放課後、夕日が校庭をオレンジ色に染める中、僕たちは二人で帰り道を歩いていた。いつもの風景、いつもの帰り道。でも、なんだか今日は違う気がしていた。隣を歩く美月の顔が、柔らかな夕日の光で照らされている。彼女の無邪気な笑顔を見ながら、僕は自然と微笑んだ。
「次はもっとすごい作戦考えなきゃね!」
美月が笑いながら言う。まるで次の大会がすぐそこにあるかのような、楽しそうな顔だ。
「そうだな。でも、まずはまた大会に出るところからだよ」
僕も笑って答えた。そう、あの試合が終わってから、部活は日常に戻っているけれど、僕の中ではあの戦いがまだ終わっていない気がしていた。
「それにしても、瀬戸くん、最近すごく積極的だよね。昔は全然喋らなかったのに」
美月が僕の横で、楽しそうに僕の顔を覗き込む。
「そうか? まあ…ちょっとは変わったかもな」
僕は照れくさくて、前を向きながら答えた。確かに、自分でも分かるくらい部活に対する姿勢が変わった。ボードゲーム部が、僕にとって特別な場所になりつつある。そして、それと同じくらい美月と一緒に過ごす時間も、いつの間にか僕の中で特別なものになっていた。
だけど、これが恋愛感情なのかどうか、まだ確信が持てない。ただ、彼女と一緒にいると安心できるし、もっと話していたいと思う自分がいるのは確かだ。
「次の大会、今度は絶対優勝しようね」
美月が自信満々に言う。
「そうだな。優勝、したいな」
その言葉に、僕は少しずつ自分の気持ちが固まっていくのを感じていた。彼女と一緒にいる時間が、ますます大切になっている。今までこんな気持ちを抱いたことはなかったけれど、悪い気はしない。
二人の歩幅がぴったりと揃っていることに気づく。美月が時折僕を見上げては微笑んでいるのも、いつもと変わらないけれど、なんだか距離が近くなっているような気がした。
「ねえ、瀬戸くん。今度の休みさ、どこか行かない? みんなでさ」
美月がふと提案する。
「みんなで? いいけど、どこ行くの?」
僕は少し驚いて聞き返す。
「んー、まだ考えてないけどね。どっか楽しいところ探そうよ!」
彼女は笑顔で答えた。その笑顔を見て、僕はまた自然と頷いてしまった。
こんなふうに、これからも一緒に過ごしていくのかもしれない。そう思うと、未来が少しだけ楽しみに感じられる。
次の日の朝、僕はいつも通りの時間に家を出た。玄関のドアを開けると、そこにはいつも通りの見慣れた光景が広がっていた。
「おはよう、瀬戸くん!」
玄関先に立っていたのは、美月だった。朝の冷たい空気の中、彼女は満面の笑みを浮かべている。僕は一瞬驚いたが、すぐに笑顔を返した。
「おはよう、いつまでやるんだよ」
僕は笑いながら美月に尋ねる。
「だって私たち最高で最強のペアになるんだからいつでも一緒にいないとね」
美月は笑顔をこちらに向けて明るく答え、自然に僕の横に並ぶ。朝の登校路を二人で歩くなんて、以前なら考えられなかったことだ。でも、今はそれがとても心地よい。
「…ありがとう」
僕は小さな声でそうつぶやいた。美月は気づいていないかもしれないが、その瞬間、僕は自分の中にある微妙な感情に少しだけ気づいた気がした。
ボードゲーム部は、僕にとってかけがえのない居場所だ。そして美月との関係も、これからどうなっていくのかはわからないけれど、少しずつ進展しているように感じる。
彼女と一緒に歩く未来が、どんなものになるのか。それを考えながら、僕は今日も学校へ向かって歩き始めた。
僕たちの未来はまだまだ続いていく。ボードゲームの駒なら意思はなく誰かが動かしてくれる。でも僕らの未来は誰かに操られるものではなく自分自身で考え、そして歩んでいかなければ意味のないものだ。そう信じて、僕は静かに前を向いて歩き続けた。




