#6-2
大会から数ヶ月が経ち、季節はすっかり秋へと移り変わっていた。普段の生活も、ボードゲーム部の活動も、いつもの日常が再開している。あの日の興奮と悔しさを胸に刻んだまま、僕たちはまた新たな一歩を踏み出していた。
3年生は進路のために引退し、部活のメンバーは少し減ったが、それでも活動は続いていた。特に大きな変化といえば、新たな部長に美月が選ばれたことだ。彼女はその日、笑顔で「みんな、これからもよろしくね!」と部員たちに呼びかけていた。
「美月が部長かぁ、なんか頼もしいな」
僕は心の中でそう思いながら、彼女の姿を見ていた。大会のときには涙を流していた彼女も、今はいつもの明るい笑顔を見せている。彼女がリーダーとして部を引っ張っていく姿を、僕もそばで支えたいと感じていた。
そんな中、僕自身も変わり始めていた。以前はどちらかというと受け身で、部活の作戦会議では黙って聞いていることが多かったが、最近は積極的に意見を出すようになった。部員たちもそれに驚いているようだ。
「瀬戸先輩、なんか変わりましたね」
後輩の一人が僕にそう声をかけてきた。彼の言葉に、僕は少し照れくさそうに笑いながら答えた。
「そうかな?でも、あの大会を経験してから、自分ももっと頑張りたいって思ったんだよ。負けたけど、すごく楽しかったし、今度はもっと強くなりたいって」
後輩は感心したように頷き、「すごいですね、先輩」と言ってくれた。僕はその言葉に、少しだけ自分の成長を実感した。
その日の練習中も、僕はいつも以上に後輩たちにアドバイスをしていた。彼らがゲームでつまづいているところを見て、自分なりの作戦や経験をもとに助言することが増えたのだ。
「こういう場面では、もう少し相手の動きを予測してから動いた方がいいかも」
「なるほど、ありがとうございます!」
後輩たちは僕の言葉を真剣に受け止め、実際に試してみる。すると、彼らのプレーが少しずつ改善されていくのが目に見えてわかる。それが僕にとっては大きな喜びだった。僕が誰かの役に立てている、その実感が僕をさらに前向きにさせた。
美月もそんな僕を、嬉しそうに見守っていた。
「瀬戸くん、最近すごいじゃん。みんなにアドバイスしてくれてるし、頼もしくなったよね」
彼女は練習後、僕にそう声をかけてきた。普段は元気で明るい彼女だが、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。
「いや、そんな大したことしてないけどさ…ただ、少しでもみんなの役に立てればいいなって思って」
僕は照れながら答えたが、彼女の目にはしっかりとした信頼が込められているのがわかった。美月は僕の成長をちゃんと見てくれていた。それが嬉しかった。
「うん、そういう姿勢が大事だと思う。これからも一緒に頑張ろうね、瀬戸くん」
彼女の言葉には力強さがあった。以前はただの同級生で、なんとなく一緒に活動していた僕たちだったけれど、今は少し違う。お互いを信頼し、支え合いながら一緒に進んでいく仲間としての絆が生まれたのだ。
そんな彼女の言葉に、僕も胸が高鳴るのを感じた。
「次の大会では、もっと良い成績を残したいな。あのときの悔しさを、今度こそ晴らさなくちゃ」
僕は自分の中に湧き上がる思いを口にした。負けた悔しさがあるからこそ、今度はもっと強くなりたい。そのために、このボードゲーム部での活動を大切にしていきたいのだ。
「うん!私ももっと頑張るし、瀬戸くんも一緒に頑張ろうね」
美月が嬉しそうに笑った。その笑顔に、僕は再び彼女と共に戦っていく決意を固めた。
この部活動が僕にとって大切な場所になり、成長の場であることを実感していた。負けを知ったからこそ、次への挑戦が楽しみで仕方がなかった。
部室の窓から差し込む夕日が、僕たちの顔を照らしていた。これからも、仲間たちと共に成長し続ける。その未来を信じて、僕は美月と共に前を向いて進んでいくことを誓った。
次の大会でのリベンジ。それが今の僕たちの新たな目標だ。そして、その目標に向かって、美月や他の仲間たちと共に歩んでいく。
「瀬戸くん、次も絶対に勝とうね」
美月の言葉が、これからの僕たちの未来を照らしているように感じた。僕は静かに頷き、その言葉を胸に刻んだ。
「うん、絶対に」




