#5-9
試合はついに最終局面を迎えた。冷峰学園の圧倒的なプレッシャーが、今も僕たちを襲っている。全国準優勝の実力は伊達じゃない。まるで一寸の隙も見せないかのような彼らの攻撃は、僕たちを常に後退させようとする。
「瀬戸くん、ちょっと…もう少しで押し切られそうだね」
美月が僕に声をかける。焦っている様子は見えないが、その言葉の裏には確かなプレッシャーが感じられた。だけど、僕たちもここまで互角に渡り合ってきたんだ。だからこそ、もう少しだけ、ほんの少しの勇気が必要だった。
「まだだ。ここで引き下がったら今までの努力が無駄になる」
僕は決意を固め、冷静に次の一手を考える。相手が押し寄せてくるのはわかっている。それをどう迎え撃つか、それだけが問題だ。
冷峰学園の選手たちは、余裕の表情を浮かべながらも確実に僕たちを追い詰めてくる。まるでこちらの限界を試すかのように、徐々に包囲網を狭めていた。だが、その余裕が逆に隙になる可能性もある。僕はじっとその瞬間を待っていた。
そんな中、突然美月が動いた。まるでこの局面でリスクを取ることが最良の手段だと信じているかのように、彼女は一気に前に出た。冷峰学園の猛攻をかわしながら、通常なら距離を保って慎重に行動するところで、美月はその判断を完全に捨てて突撃したのだ。
「美月!?」
僕が驚く間もなく、彼女は相手チームのど真ん中に飛び込んだ。まるで目の前の敵に突っ込むかのように、ひとりで圧倒的な勢力の中へ入っていく。これまで培ってきた戦術や基本の全てを無視した、あまりにも大胆すぎる動きだった。
相手も、まさかそんな無謀な行動に出るとは思わなかったのだろう。一瞬、冷峰学園の選手たちが動きを止めた。その隙をついたのが美月の狙いだった。彼女は自分を囮にして、僕に完璧なチャンスを与えていたのだ。
「瀬戸くん、フォローよろしくね!」
美月が笑顔で言い放つ。彼女はまったく臆していない。それどころか、勝利を信じているかのようなその自信に、僕は圧倒されそうになる。
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。僕はすぐに冷静さを取り戻し、彼女の背後に立ちサポートに徹することを決めた。美月が仕掛ける以上、僕も全力で彼女を支えるしかない。
冷峰学園の選手たちも、彼女の大胆な動きに一瞬戸惑った様子を見せた。まさかこんな局面で、しかも僕たちがこのようなリスクを取るとは思っていなかったのだろう。だが、それも一瞬のことだった。すぐに彼らも体勢を整え、反撃に出ようとした。
「ここが勝負だ!」
僕は心の中で自分に言い聞かせ、冷静に周囲の状況を見極めた。美月が一歩前に出た分、僕が後方から全体を見渡す役目を担う。冷峰学園がどう動くのか、どの瞬間に隙が生まれるのか、それを見逃さないように集中した。
美月は相変わらず楽しそうに前進し続けている。彼女の大胆な行動が僕たちに有利な状況を作り出していた。冷峰学園の選手たちも、少しずつ焦りを感じ始めているようだった。彼らの動きに、わずかな乱れが見えた瞬間、僕はそのチャンスを逃さなかった。
「今だ!」
僕はすかさず美月に声をかけた。彼女はすぐに僕の意図を理解し、動きを加速させた。僕たちの連携が、ここで一気に光り輝く瞬間が訪れたのだ。
二人の動きが完全にシンクロした瞬間、冷峰学園の選手たちは明らかに困惑しているようだった。これまでのように余裕を持って攻めていた彼らが、次第に追い詰められているのがわかる。
「いい感じだね、瀬戸くん!」
美月が笑顔で声をかけてくる。僕も自然と笑顔になった。彼女との連携は、今や最高の形を迎えていた。
冷峰学園の選手たちも、僕たちに追い詰められていることを感じ取っているはずだ。彼らは焦りながらも反撃のチャンスを伺っていたが、僕たちはそれを許さない。美月の大胆な動きと、僕の冷静なフォローで、相手チームに隙を与えないまま、少しずつ勝利への道を切り開いていった。
「もう少しだ…!」
僕は自分に言い聞かせる。今こそ、僕たちが冷峰学園に一矢報いる時だ。美月との連携が完全に噛み合ったこの瞬間、僕たちは冷峰学園をあと一歩のところまで追い詰めた。
「瀬戸くん、行こう!」
美月が元気よく声をかける。僕はその声に応じて、最後の一手を考えながら前進した。相手の隙は見えている。あと少し、ほんの少しの勇気とタイミングがあれば、僕たちは勝てるはずだ。
勝利は目前だが、冷峰学園もまだ諦めていない。試合は、いよいよクライマックスを迎えようとしていた。




