#5-6
2回戦が始まった。対戦相手は昨年の全国準優勝校、冷峰学園。大会の常連で、その名を知らぬ者はいない強豪だ。僕たちとは経験も実力もまるで違う。開始直後からその差が如実に現れていた。
「瀬戸くん、来るよ!」
美月の声が聞こえるが、冷峰学園のペアは恐ろしいほどの速さで攻撃を仕掛けてくる。対応しようと動くが、僕たちは完全に後手に回っていた。彼らの動きは一分の隙もなく、僕たちが何をするかすべて読んでいるように感じられる。
開始早々、僕たちは押されっぱなしだった。冷峰学園のリーダー格の選手は冷静沈着、無駄な動きを一切しない。戦いが始まると同時に、僕たちの弱点を探るような目で見ているのがわかった。
「瀬戸くん、まずいよ、こんなに早く押されるなんて…」
美月の声には焦りが滲んでいた。彼女がこんなに動揺するのは初めてだ。いつも楽しそうにゲームをしていた美月が、今日ばかりは様子が違う。
「冷峰学園、やっぱり強い…」
美月の声が揺れている。連携も崩れかけていた。僕たちは普段のようにうまくかみ合わない。相手の圧倒的なペースに、僕たちは完全に翻弄されている。僕も自分の動きが鈍っていることを感じていた。
それに加えて、応援席にいる部員たちも同様だ。先ほどまでは応援の声が響いていたが、今はその声も次第に弱まっている。さっきまでの勢いはどこかに消え、皆がこの不利な状況を見守るしかない。
「やばいな…このままだと…」
美月はいつもは感じたことのない焦りを見せ始めている。彼女はいつも前向きで、どんな状況でもポジティブに笑い飛ばすタイプだ。しかし今、そんな彼女が初めて怯えを隠せない。
僕も緊張はしている。正直、体の震えが止まらない。しかし、この状況をなんとか打破しなければならない。僕たちのペースを取り戻さないと、このまま押しつぶされてしまう。
美月が焦っている姿を見て、僕はなんとか冷静にならなければならないと思った。美月が動揺している今、僕がしっかりしなければいけない。普段は彼女に引っ張ってもらっている僕だが、今度は僕が彼女を助ける番だ。
「落ち着いて、まだ終わってない」
僕は少し冷静さを装いながら、美月に声をかける。彼女が僕を見つめた。
「でも、このままじゃ…」
彼女の声は震えている。
「大丈夫、まだ時間はある。それに、相手が強いのはわかってたことだろ? ここからどう巻き返すかが勝負なんだ」
僕は必死に前向きな言葉を口にしたが、正直、心の中では僕も不安に押しつぶされそうだった。
美月は僕の言葉を聞いて、何とか頷いたものの、その目はまだ焦りの色を隠せない。
「よし、少し作戦を変えてみよう」
僕はとっさに提案した。これまでの戦術が通用しないことは明らかだったので、何か違うアプローチを試す必要があった。
「どうやって?」
美月はまだ不安そうに僕を見ている。
「まずは一旦、冷峰学園のペースを崩すことが大事だ。相手は今、完全にリズムに乗ってる。だからこそ、僕たちが何か意外な動きをして、その流れを断ち切るんだ」
僕は美月に具体的な案を伝え、彼女も少しずつ冷静さを取り戻していった。
応援席からは「瀬戸! 頑張れ!」という声が飛び交っている。さっきまでの不安が漂っていた空気が、少しずつ変わり始めていた。僕たちが流れを取り戻せば、みんなもきっと元気を取り戻してくれるはずだ。
「わかった! もう一度やり直そう!」
美月は深呼吸をし、気持ちを切り替えたようだった。その笑顔が戻りつつあるのを見て、僕も少しだけほっとした。
「よし、行こう!」
僕は気合を入れ直し、再びゲームに集中する。今度こそ、僕たちのペースで戦うんだ。
相手は確かに強い。しかし、僕たちだってここまで来た。全国準優勝の相手に対しても、諦めるわけにはいかない。僕たちは絶対に、ここで勝利を手にするんだ。
冷峰学園の猛攻は続いているが、僕たちも一歩ずつ自分たちのペースを取り戻しつつあった。美月と僕の連携も少しずつかみ合い始めている。
次の一手で流れを完全に変えてみせる。それが僕たちの勝機だ。




