#5-2
大会の進行は順調に進んでいたが、僕と美月が参加するデュオ戦は最後に組まれていたため、しばらくは待機時間だ。緊張が続く中、僕たちは他の部員たちの応援に回ることにした。
「個人戦の3人も、チーム戦も、みんな強いから大丈夫だよね!」
美月は明るく言いながら、試合会場を歩いていた。僕も頷きながらついていったが、実際はどうだろうかと心の中では不安が渦巻いていた。大会に来てみると、やはり全ての参加校が強そうに見える。全国準優勝のペアと戦うことが決まっているとはいえ、まずは自分たちのチームが順調に勝ち進んでほしい。
会場の片隅に設けられた観戦スペースから、個人戦に出場する部員たちの姿を見つめる。最初に出場するのは、部内でも一番安定感があると言われている彼、佐藤だ。
「佐藤先輩、いけるかな…」
僕は祈るような気持ちで試合の開始を見守った。しかし、試合が始まると、その展開は予想外だった。相手チームのプレイは正確で迅速。佐藤先輩は何度も攻め込まれ、あっという間にピンチに追い込まれていた。
「えっ、こんなに強いの…?」
僕は驚きで言葉が出なかった。普段の練習では安定感抜群の佐藤先輩が、まるで別人のように追い詰められていく。そして、試合はわずか10分ほどで終了。佐藤先輩は敗退してしまった。
「う、うそだろ…」
僕は頭を抱えた。まさか、部内のエースがこんなに簡単に負けるなんて。そして個人戦の他の2人も為すすべなくといった感じであっさり終了。
「次はチーム戦か…」
次に出場するのはチーム戦だ。こちらも期待の選手たちが揃っているから大丈夫だと思っていた。けれど、試合が始まるとまたしても相手チームの圧倒的な実力が露わになった。部員たちは何度もチャンスを掴もうと奮闘したが、戦局は終始相手のペースで進んでいく。結局、チーム戦もあっさりと敗北してしまった。
「全然歯が立たない…」
部内に漂う重い空気に、僕は完全に自信を失いかけていた。
「…僕たちも、こんな風に負けちゃうのかな」
部内では強い他の部員たちの敗退は、僕にとって衝撃だった。今まで自信を持って練習してきたのに、初戦敗退なんて考えてもいなかった。相手は、こんなに強いんだ。僕と美月が勝てる見込みなんてあるのだろうか…。
そんな時だった。
「瀬戸くん、大丈夫だよ!」
ふと横を見ると、美月が僕に向かって大きな笑顔で言った。彼女の声は明るく、全く不安を感じさせない。
「みんな負けちゃったけど、私たちまだこれからじゃん!負けるかどうかなんて、試合が終わるまでわからないよ!」
僕はその言葉にハッとした。そうだ、まだ僕たちの試合は始まっていない。美月の明るさに引っ張られるように、僕の中にあった不安は少しずつ薄れていく。
「…そうだな。まだ、終わってない」
美月の笑顔に励まされ、僕は気持ちを持ち直した。ここで諦めるわけにはいかない。僕たちにはまだチャンスがあるんだ。
「うん、頑張ろう」
「うん、そうだよ!まだ戦いはこれから!」
美月は大きく頷き、前向きな言葉を続けた。彼女のその明るさに、僕もまた元気を取り戻していた。
「とにかく、一つひとつ勝ち進むしかないね」
「そうだね」
美月の言葉に僕も頷いた。次は僕たちの番。負けたくない。みんなの分まで戦おう、そう心に決めた。
「よし!いくよ、瀬戸くん!」
美月の声に呼応して、僕も気合を入れ直す。
僕たちの戦いはこれからだ。




