#5-1
いよいよ開会式が始まった。ステージ上では大会運営スタッフが次々と挨拶をして、最後に組み合わせ抽選が始まる。参加者全員が手に汗握る中、次々と各ペアの対戦相手が発表されていった。
「次はデュオ戦、第1ブロックの組み合わせです!」
司会者の声が響き渡ると、僕たちは思わず身を乗り出した。いよいよ僕たちの初戦の相手が決まる。心臓がドクンドクンと大きく脈打ち、手のひらに汗が滲んでいるのが分かる。
「瀬戸くん、来るよ」
美月が小声で囁いたその瞬間、スクリーンに僕たちのチーム名が表示された。そして次に映し出されたのは、対戦相手の名前。
「ふぅ…とりあえず初戦は普通の学校だな…」
僕はその名前を見て少し安堵した。聞いたことがある強豪校ではない。まずは初戦を突破して、流れに乗りたいところだ。
だが、次の瞬間、その安堵は一瞬で吹き飛んだ。
「そして、この第1試合に勝ち上がれば、第2回戦の相手はシード枠の冷峰学園です!」
司会者の言葉が、体育館内に響き渡る。ざわめきが広がり、周囲の空気が一瞬にして張り詰めた。
「えっ…嘘だろ…」
僕は思わず呟いた。冷峰学園といえば、去年圧倒的な強さを誇っていたあの全国準優勝のチームだ。そのチームが僕たちと同じブロックにいるなんて…。
部員たちは皆、悲壮感に包まれていた。僕たちは練習を積み重ねてきたけれど、まさかこんな早い段階で全国準優勝のペアと当たるなんて予想もしていなかった。まるで運命が僕たちに試練を与えているかのようだ。
「これはキツイな…」と誰かが呟く。
「全国準優勝だぞ…どうやって勝つんだよ…」
周囲からそんな声が次々と聞こえてきた。確かに、あのペアとの戦いを考えると、自然と気持ちが萎えてしまう。僕もついさっきまで感じていた安堵感が一気に消え失せ、胃が再びキリキリと痛み始めた。
しかし、そのときだった。
「どうせ戦うんだから、早い方がいいじゃん!」
美月が突然明るい声で言い放った。部員たちは驚いたように彼女を見つめる。美月はまるで楽しんでいるかのように笑っていた。
「だって、全国準優勝のペアなんて、どのタイミングで当たっても強いんだから。だったらさ、こっちは勢いのあるうちに、相手はまだ初戦のこのタイミングでぶつかった方がいいでしょ?」
彼女の言葉は、まるで不安を一瞬にして吹き飛ばす魔法のようだった。確かに、強敵と戦うのは避けられない。ならば、早くぶつかって、その強さを実感する方がいいのかもしれない。
僕はそんな美月の明るさに感化されて、少しずつ不安が薄れていくのを感じた。
「…そうだよな。どうせ戦うなら、早い方がいいか」
僕は美月に頷き返しながら、少しずつ自分の中にあった恐怖心が和らいでいくのを感じた。
「瀬戸くん、私たちはここまでやってきたんだし、大丈夫だよ。絶対に負けないっていう自信を持とう!」
美月がそう言って、僕の肩を軽く叩いた。彼女のその無邪気な笑顔に、僕もつられて笑みを浮かべた。
「そうだな。やるしかない、か」
覚悟を決めると、体が軽くなった気がした。緊張と不安がまだ完全に消えたわけじゃないけれど、それでも美月や仲間たちと一緒なら、きっと僕たちは戦える。
部室に戻ると、他の部員たちも少しずつ前向きな表情を取り戻し始めた。美月の言葉は彼らにも届いていたのだろう。
「よし、まずは初戦を勝ち抜こう。そこからが本番だ」
僕は自分に言い聞かせるように、そう呟いた。美月と一緒に乗り越えていくんだ。相手がたとえ全国準優勝校だろうと、僕たちは絶対に諦めない。




