#4-10
朝の玄関の前でいつものように待ち構えていた美月は、いつものように笑顔で手を振る。
「おはよう!さあ、今日も作戦会議から始めようか!」
「おはよう…って、もう毎日その話ばっかりだね…」
僕は軽くため息をつきながらも、美月と一緒に歩き出す。大会が近づいているから仕方ないけど、彼女の熱意はまったく衰えない。むしろ、日に日に勢いが増している気がする。
「瀬戸くん、昨日のシミュレーションだけど、やっぱり最後の隠れ方が甘かったと思うんだよね。もっと木陰とか、障害物をうまく利用すれば相手をもっと長く惑わせられると思うんだけど、どう思う?」
「うーん、確かに隠れるタイミングは重要だね。でも、それよりも、やっぱり相手が焦ってくる瞬間を狙ったほうがいい気がする。混乱を誘うには、そのタイミングが鍵かも」
「なるほど…確かにそうかも!その瞬間を見逃さないように、私もしっかり見ておくね!」
通学路では、ほぼ毎日こんな調子だ。僕たちはゲームのことばかり話しているし、廊下ですれ違う友人たちも「お前ら本当はもうデキてるんだろ?」なんて毎日のようにからかってくる。それに対して、美月はいつものように軽く笑い飛ばす。
「言わせておけばいいの。大事なのは大会で勝つことだからね!」
彼女のあまりに堂々とした態度に、僕は思わず笑ってしまう。
授業が終わると、二人して昼食を取りながらまた作戦会議だ。周りの友人たちが「またゲームの話してるの?」と呆れ顔で見てくるのも、もう慣れっこだ。
「瀬戸くん、どう思う?お昼はもっと栄養を取った方がいいんじゃない?大会前に体力をつけなきゃダメでしょ」
「いや、僕のお弁当はこれが普通なんだけど…って、そんなの関係ある?」
「もちろんあるよ!私たち、デュオ戦では体力勝負にもなるんだから。戦術だけじゃなくて、健康管理も大事!」
「そこまで考えてるのか…すごいな」
美月の細かいところまでの計画ぶりには、ちょっと驚かされる。確かに、何でも準備が大事ってことだよね。
放課後の部活でも、もちろん大会に向けての特訓が続く。僕たちは日々、フィールドを想定した練習に励んでいたが、いつも通り美月のエネルギーはすごい。何度も走り回っては汗をかいて、全力で取り組んでいる。僕も負けていられないと、必死についていく。
「瀬戸くん、もう少し早く動かして!敵に見つかっちゃうよ!」
「いや、これが限界なんだけど…!」
彼女の指摘は正しいけど、僕だって人間だ。毎日、朝から晩までこんな調子で続けるのはなかなか大変だ。だけど、その一方で僕は彼女のひたむきさに引っ張られ、自然ともっと頑張りたいという気持ちになっていた。
ある日、そんな練習中にトラブルが発生した。僕たちが練習用のフィールドを作り直していた最中、道具を積み上げた場所が崩れてしまったのだ。
「うわっ、危ない!」
美月がとっさに叫んだ。
僕が荷物を抑えようとしたが、バランスが崩れて、逆に倒れてしまった。
「瀬戸くん、大丈夫!?」
「いたたた…でも、なんとか…」
「もう、しっかりしてよ!でも、怪我しなくてよかった!」
美月は僕を助け起こしながら、笑顔を浮かべた。その姿を見て、僕も思わず笑ってしまった。こんな小さなトラブルも、彼女と一緒ならどうにかなる気がする。
その日の帰り道、また僕たちは作戦の話をしていた。時折、ちょっとした笑いが生まれるけど、やっぱり二人で過ごす時間が増えたせいか、息がどんどん合ってきている気がする。
「今日の練習で感じたけど、やっぱり瀬戸くんと私、いいペアだと思うよ。お互いの動きがもっと合ってきたし、大会でもいい結果出せそう!」
「そうだね…最初はどうなることかと思ったけど、今は少し自信がついてきたよ。美月のおかげだ」
「ふふん!もっと褒めていいんだよ!」
そう言いながら、美月は胸を張った。僕たちは大会に向けて、確実に成長している。それを実感しながら、明日もまた頑張ろうと心に決めた。
「大会、絶対に勝とうね」
「もちろん!」
僕たちの声が夜道に響き渡る。




